10月14日 『神の国を前にした伝道』 ルカによる福音書19章11‐27節
近藤勝彦先生(東京神学大学教授)
マタイによる福音書25章の「タラントンのたとえ」では、主イエスは神の国について、
旅をする間、僕
たちに財産を託する主人のたとえ話により、主の再臨の時まで私達が主から与っているそれぞれ異なった賜物を十分に生かして用いるよう教えられた。
今日の「ムナのたとえ」は、1ムナ、即ちタラントンの60分の1という小額の金が
等しく渡されて「わたしが帰ってくるまで、これで商売をしなさい」と命じられた
僕たちのたとえである。私たちは主からそれぞれ異なった賜物を与えられていると同時に、
また等しく同じ賜物も頂いている。等しく1ムナとは何を意味するか、それは私たちに与えられている聖霊とその賜物であり、また、私たちに渡されている神のみ言葉である。私たちは主イエスを信じることにより等しく主のものとされ神との平和を与えられている。
主人が帰ってくると僕たちは「あなたの1ムナで10ムナ儲けました」「5ムナ儲けました」と報告し主人から「お前はごく小さなことに忠実だった」と祝福を受けた。聖書を忠実に訳すと「あなたの1ムナが」であり、1ムナが主語である。つまり僕ではなく、主人から頂いた1ムナが儲けた、力を発揮したのである。1ムナを布に包んでしまっておいた僕は、その1ムナをも取り上げられた。賜物の力が発揮するのを妨害したからである。
1ムナを神の言葉と理解すれば商売とは伝道のこと、御霊とその賜物と理解すれば証のことである。私たちが、そして教会が神の国のまったき到来に備えてなすべきことは、神のみ言葉が力を発揮すること、神の御霊の働きが力を発揮することを信頼することである。み言葉を、御霊を袋にしまいこむのではなく、それを外にさらし出すこと、それが伝道である。