2001年11月10日、マラケシュ
気候ネットワーク
マラケシュ(モロッコ)でのCOP7は、11月10日朝、「京都メカニズム」「遵守」「吸収源」「途上国問題」の重要な決定文書を包括的に採択して閉幕した。これをもって京都会議以来の京都議定書を発効させる準備を完了できたことは歓迎すべきことである。
特にCOP7合意は、ブッシュ政権の京都議定書からの離脱問題や同時多発テロ事件、さらに日本・ロシアなどの頑迷な抵抗などを乗り越えて実現したものである。多国間での困難な協議による合意形成の成功によって、私たちは地球規模の気候変動問題に対する現時点での最も効果的な対応策の骨格を得た。これはその他多くの国際社会が直面する深刻かつ困難な問題に対しても、解決に道を開くことになるであろう。
しかしながら、合意に至る道は一筋縄ではいかず、日本政府は不条理な抵抗をぎりぎりまで続け、10日未明まで徹夜交渉を長引かせた。これは、ボンのCOP6再開会合での徹夜交渉で日本が最後まで抵抗し合意を危ぶませたのと全く同じ構図であった。
とりわけ日本は最後まで強硬に、京都メカニズムの参加資格と遵守制度を結ぶ条項の削除を求めた。これは川口大臣自らがボン合意を改変させ、京都議定書に法的拘束力を持たせないことをここで確定させようとするものであった。結局夜を徹した交渉の末、日本は最終的に文言を前文に繰り上げ弱めさせることによって、合意を受け入れた。交渉の最終版でも柔軟性を示さず会議を混乱させた日本の姿勢は、合意成立をもって帳消しできるものではない。また、日本・ロシア・カナダ・オーストラリアが、それぞれの身勝手な要求を連携して維持し合ったことがより大きな抵抗勢力となり、合意文書の後退をもたらしたことは遺憾である。
とはいえ、京都議定書は、排出削減数値目標や報告義務についての拘束力のある強い遵守制度のもとで、信頼性を確保する最低限の仕組みを盛り込んだ京都メカニズムの運用ルールを得ることができた。また、市場メカニズムが環境面で公正に機能し、持続可能な発展をもたらす市民の監視する情報公開の仕組みも不十分ながら盛り込まれた。
日本政府はこのCOP7合意を受け、直ちに批准の意思を表明すべきである。そして、京都議定書の目標達成を担保するための国内制度の準備を早急に始め、実施を急ぐべきである。
COP7合意は、世界の経済の仕組みそのものが持続可能なものへと転換していくことを示しており、EUをはじめ世界は、市場メカニズムも活用しつつ、不可避である温室効果ガスの排出削減に挑戦する姿勢である。今回の日本政府の後向きの姿勢は、経済界の強い抵抗によるものであったことは誰の目にも明白であったが、経済界が旧態然と新たな試みを拒み続け、世界の趨勢を直視しなければ、日本の経済に悪影響をもたらすだけである。日本の経済界は、京都議定書を新たなビジネスチャンスとして捉え、炭素税制度や企業の排出削減義務の協定化、さらには国内排出量取引制度を組み合わせた実効性のある削減策作りに進んで協力すべきである。