免疫
immunity)
 
免疫の知識
免疫とは
免疫の働き
免疫細胞の種類
 
免疫細胞の役割
好中球の役割
T細胞の役割
NK細胞の役割
B細胞の役割
マクロファージの役割
免疫細胞とがん細胞
 
リンパ球の知識
リンパ球とは
 
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免疫の知識
免疫とは
 疫の苦痛から免(まねか)れるしくみを解き明かし、これを人々の健康に役立てようとしたのが免疫学のはじまりです。英語では、”immunity”といいますが、その語源は経済学用語の”im-munitas”(免税、免疫)で、やがて、”immunity”という言葉は、いやなこと一般、とくに伝染病から免れるように意味を持つようになりました。

免疫の働き
 私たち“ひと”のからだは、およそ60兆個の細胞でできており、その細胞は“私の細胞”という目印をもっています。それはクラスⅠMHC(major histocompatibility complex)というタンパク質です。
 もし形の異なるクラスⅠMHC分をもつ細胞が体にはれば「非自己」の細胞と認識されキラーT細胞に認識され排除される。
 また、カゼ等のウィルスに感染された細胞は、クラスⅠMHC分子にウィルスの断片を結合させ「もはや自己ではない」(自己の非自己化)とキラーT細胞もみずからアピールして攻撃してほしいサインを出す。
 自分以外の細胞(非自己抗原)がからだの中に侵入するとマクロファージがこれを食べて断片化し(貧食)、その断片をクラスⅡMHC分子に結合させて、ヘルパーT細胞に提示する。これを抗原提示といいます。このヘルパーT細胞は、キラーT細胞、マクロファージ、B細胞などにさまざまな指令を出して(サイトカイン放出)、各々の細胞が非自己細胞を攻撃し排除する。
 異物を排除する免疫のしくみは、キラーT細胞やマクロファージといった細胞たちが主体となって抗原を排除する細胞性免疫と、B細胞が発射する抗体が主体となって抗原を排除する液性免疫の2つがあります。この2つのしくみが力を表すことで抗原を排除することができます。


免疫細胞の種類

免疫細胞の役割
好中球の役割
  細菌やウィルスなどの敵を皮膚や粘膜などのバリアを破って体内に侵入してくると、普段、血液に乗って全身をパトロールしている好中球が、血管の隙間を抜けて敵に立ち向かっていきます。好中球は、敵を丸ごと食べるから(貧食)体内で殺すことをします。敵を飲み込むと、活性酸素をどんどんつくり出し、それで敵を攻撃します。そして自爆して、その残骸を膿という形で私たちは見ることができます。
  好中球は、血液中に最も多く存在する白血球のひとつで1mlに200万個程度あります。寿命はとても短く8~20時間です。そのため、骨髄は新たな好中球をつくり続け、常に血中に送り出されます。       

T細胞の役割
 T細胞が持つセンサーをTCR(抗原レセプター)といい、それを使って「自分がちょっと変化したもの」だけを敵(抗原)として認識するシステムになっています。
 ウィルスは人間特有のHLA抗原はもってないのでT細胞単独では、ウィルスを判別できないので、マクロファージが食べて分解して自分がもつ証明書とHLA抗原と比較して敵か否かを判断します。 このような判断や司令を出すのがヘルパーT細胞です。
 T細胞は、司令官役のヘルパーT細胞のほかに戦闘員のキラーT細胞と調整役のレギュラトリーT細胞があります。 ヘルパーT細胞はリンパ節に駐在して、そこからパトロール中のキラーT細胞にシグナル(インターロイキン)を送り、キラーT細胞は戦闘態勢(活性化)になります。活性化されたキラーT細胞は、1日に3,4回細胞分裂して3日間で1000倍以上のクローン大部隊を作ります。
 キラーT細胞にてウィルスが消滅すると、そのヘルパーT細胞とキラーT細胞の数を調整するレギュラトリーT細胞が登場します。一部を敵が入り込み易い皮膚や粘膜においたり、パトロールさせたり、その必要最低限のみ残し、後は自滅させます。そうして免疫システムは平静さを取り戻すことになります。       

NK細胞の役割
  NK細胞は、がん細胞やウィルスに侵された細胞など欠陥のある細胞の破壊を得意としたリンパ球です。ただし、T細胞、B細胞と違って他の免疫細胞とほとんど連携せず、単独行動をしています。
 NK細胞は、細胞の表面についている「自分」証明書(HLA抗体)の有無にて自ら反応します。がん化、ウィルス感染でHLA抗体がなくなったりする(証明書がなくなる)と活性化して、その細胞の膜に穴をあけ各種の毒を注入して攻撃します。 相手が死滅すると、次の相手を求めて血液などに乗って体内をパトロールします。その数は約50億個(白血球の15%程度)です 特定の敵だけを記憶して攻撃する(獲得免疫)T細胞とB細胞。その両細胞は、同じ細胞から生まれただけあって見かけは双子ようにそっくりです。一度であった敵に対しては、その目的(抗原)にぴったりかみ合う形のセンサー(抗原レセプター)を持つ細胞を常時体内に待機させ、再侵入に備えます。ただし、1個の細胞が記憶できるのは1抗原のみ。       

B細胞の役割
 B細胞は、抗体(センサー)を大量につくって血液、リンパ液で体内にばらまき、自分自身動かなくても素早く敵をキャッチできます。B細胞は生まれつきどんな相手に対応すべきか遺伝子にコード化され、成熟されたB細胞は抗原レセプターをもっています。
 抗原レセプターが敵(抗原)に出会うと、活性化して増殖を開始すると同時に、抗体を産生する工場、抗体産生細胞に変身して抗体を大量生産します。そして、その抗体を抗原にミサイルのように発射して攻撃します。 抗原と会って2日以内にB細胞はリンパ節などに移動し、増殖を止めてそこに定住します。大多数は抗原を産生し続け、1,2週間のうち寿命となります。少数のB細胞は記憶をもったまま生き残ります。同じ敵があらわれた場合は、前準備せずすぐに抗体を産生することができます。同じ病気に感染しても2度目は軽くすみます。このしくみを予防接種で利用しています。
 B細胞はT細胞と違って直接敵と戦うことはせず、抗体を使います、抗体は、ウィルスなどの抗原に結合し、正常な細胞に侵入できないように妨害するはたらきと、好中球やマクロファージが細菌などを簡単に捕獲できる支援するはたらきがあります。
 抗原レセプターや、それをミサイル化し抗体は「Y」字型をしています。Yの根元は情報の受け渡しなどのため、マクロファージなどの味方の細胞に結合します。それをFCといいます。Yの二股にわかれた先端は、敵の抗原にくっつきます。その部分をFabといいます。人は、3,4万のある遺伝子の組合せから1兆種類以上のパターンの抗体、Fabをつくり出すことができます。       

マクロファージの役割
 好中球だけでは敵が撃墜できないと、次に登場してくるのがマクロファージです。マクロファージは普段は、細菌や真菌、生体毒素、環境汚染物質の排除、がん細胞のせん滅、ウィルスの不活性化など、からだで不要となったものを処理しています。そのため「掃除屋(スカベンジャー)」と呼ばれています。
 マクロファージは好中球より食欲が旺盛です。そして、体内で敵を分解してリンパ球のT細胞にシグナルを送ります。一方、自分自身をバージョンアップ(活性化)させて敵と戦いをします。自分でT細胞に送った情報をもとに、T細胞から出す指示(サイトカイン)や、結核菌、黄色ブドウ球菌、マイコプラズマといった細菌の成分で、活性化がされます。一度、活性化されると通常の大きさの4,5倍大きくなり、形も円形から長い突起が伸びて敵を捕まえやすくなり、TNF-α(腫瘍懐死因子)という化学物質を産生しがん細胞を倒すまで攻撃的になります。ただし、戦闘体勢になるまで24時間かかります。

免疫細胞とがん細胞
 健康な人でも毎日300個の正常細胞ががん細胞に変異しています。そのがん細胞にキラーT細胞が接着し、その細胞膜を破壊する物質を出して、がん細胞のDNAを切断したり、がん細胞自身を自殺(アポトーシス)するように誘導させます。同時にヘルパーT細胞は、B細胞に対してがん細胞の抗体を作ることさせます。こうして、がんを発病させないようにしています。また、がん細胞は、正常の細胞寿命は決まっていて一定の回数(60~80回)の分裂を終えて死ぬといわれています。
 しかし、がんを発病する人がいるのは、がん細胞が自己細胞と似ているうえ免疫部隊の探索の手をのがれる技、非自己となる成分を隠す、免疫担当細胞の活力をそぐ、など次々に繰り返しているためです。
 がん細胞には「隠れ蓑の術」「木の葉隠れの術」「反乱」といった忍者の術をもっています。その術によって、正常な細胞が適切な時に適切な場所だけで分裂する調節構造から遺脱して、自律的に分裂増殖します。これは、細胞のDNAに異変が生じると細胞が死なずに限りなく増殖されためとも言われています。普通の人でもガン細胞は3000から5000は出来ているといわれています。
 初期のがん細胞の排除において重要なのが、NK細胞(ナチュラルキラー細胞)です。その名の通り、ナチュラルにキラーする能力を備えている。マクロファージ、好中球と同じように、異物を直接攻撃する。がんの初期などで重要な役割を果たすが、ストレスがかかると非常に敏感に能力が下がるとも言われています。
 また、がん細胞は抗原ペプチドというたんぱく質を出しており、それをマクロファージや樹状細胞が捕捉し、Th0(ヘルパーT前駆細胞)に伝えられ、ヘルパーT細胞(Th1)へと変化して、特定のがんに対して攻撃します。 キラーT細胞も直接相手を攻撃します。ヘルパーT細胞、サプレッサーT細胞は、サイトカインというたんぱく質を放出し(マクロファージも放出する)、B細胞の働きを調整し、B細胞は、抗体という飛び道具を分泌して相手を攻撃する。
しかし、がん細胞は、キラーT細胞ががん細胞のクラスⅠMHC分子にのっている異常なタンパク質を認識しますが、がん細胞はクラスⅠMHC分子そのものを隠して、キラーT細胞の攻撃をかわし、やがて、がん細胞はキラーT細胞を抑制する分子を放出して、免疫からの攻撃をかわします。
 理由はわかりませんが、B細胞も産生した抗体ががん細胞にの抗体にくっついて、キラーT細胞の結合の邪魔したり、免疫システムに反乱をおこす。

*サイトカイン
サイトカインは、インターフェロン(IFN)やインターロイキン(IL)があり、直接がん細胞を攻撃、もしくは他の免疫細胞の機能を調節してがん細胞を攻撃する。

リンパ球の知識
リンパ球とは
 おさらいになりますが、ここでリンパ球についてまとめてみます。リンパ球は、T細胞、B細胞、NK細胞に分類され、B細胞がさらに成熟すると再び骨髄に戻り、最終成熟段階である形質細胞になる。NK細胞は、「異物(非自己)」であればなんでも攻撃するが、一方で標的を特異的に定め、攻撃していくのがB、T細胞である。
 T細胞は胸腺で人体の免疫機能(極めて優秀な細胞)を学習し司令官として指令を出すヘルパーT細胞とキラーT細胞(体の自衛隊)で防御している。マクロファージが貧食した情報をもとにヘルパーT細胞は、キラーT細胞に異物、標的細胞に攻撃をかける。 B細胞は、リンパ節内で成熟し、最終的には骨髄に戻り形質細胞と呼ばれる免疫グロブリン(抗体)を生産する。ヘルパーT細胞からの情報をもとに抗体(ウイルス等の突起物を鍵穴で塞ぐ)を血漿中に出して、細菌、ウイルスを無毒化してマクロファージの貧食を助ける役割である。
 T細胞とB細胞の連携をもう少し詳しく見ると、ヘルパーT細胞はTh1とTh2に別れる。   Th1はインターフェロンガンマやインターロイキン2等を分泌してウイルスやがん細胞を攻撃する。一方Th2はIL-4、IL-5などを分泌してB細胞の攻撃をサポートする。ちなみに偏食やストレス、加齢などでTh1が低下し、Th2優位の状態になりやすくなるが、その状態ではがんが発生しやすくなる事がわかっている(その為免疫療法ではTh1を活性化させたりしている)。 これらは病原体の情報を数多く保有し、一度かかった麻疹などは二度とかからぬような仕組みになっている。
 リンパ節は、リンパ管が首の付け根、脇の下、脾臓(横隔膜の後ろ側)、鼠頸部(太股の付け根)にあり、リンパ管を通じリンパ球にリンパ液を送っている。血管はリンパ節で動脈から静脈に流れが代わり、免疫のいろいろな情報に対応している。