ペーテル・パウル・ルーベンス (1577-1640) 牛のいる風景

 王侯貴族や名士の肖像画が多いルーベンスだが、1620年頃と晩年に風景画を手がけている。▼1620年頃の作といわれるこの絵は、物語の背景的要素の強い自然描写、すなわち構想画のイメージが強いといわれているがどうだろうか。男と手搾り中の女の素足と、男の赤い服の不自然さから、その片鱗が伺えるが、モチーフは明確な夕暮れの搾乳の共同作業風景である。▼女が保定する集乳壺に、男が注ぎ口のある乳缶から牛乳を空けていて、周囲の牛が搾乳待ちをしている。中景の白い立位牛の排尿姿勢が描かれているのは構想画というよりも自然観察画のようで興味深い。

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