赤禿(はげ)山(隠岐島前・知夫里島)            2004年5月訪問
 隠岐諸島は島根半島の沖合にあり、島前と島後とに分かれる。知夫里島は島前の最南端にある漁業と畜産の島である。島の西の赤禿(はげ)山(標高325m)一帯は、肉用牛の子牛を生産するための放牧地が広がっている。フェリーの発着する来居(くりい)港から往復20kmを徒歩で踏破した。
 平場の集落を経て、赤禿山に向かう幹線道路沿いに肉用牛が冬季に生活するトタン牛舎が連なる。それが途切れるといよいよ放牧場の入り口(左の写真)にたどり着く。写真はドライブオーバーゲートといいスノコ状の鉄板を渡した構造で牛は恐がり通行しないので、牧柵の機能をもつが、車や人(足下に気を付けて)はそのまま通行できる。
 入り口を通過すると視界が広がり、赤禿山頂の展望台が遠望できる。山容にビロード状に纏(まと)いつく短草型(シバ型)草地が広がる中、黒毛和種の母子牛が迎えてくれた。子牛はこの島で6〜10か月まで過ごした後、市場に出される。放牧のため、体がやや小さいが、足腰が強く内蔵がしっかりしているので、肥育時の増体がよいなど評価が高い。
 山頂近くの稜線沿いに高さ1mほどの石垣がうねるように続く。「名垣(みょうがき)」と称し、昔、名主が牧畑注1)の境界のためにつくったそうである。土地の人は「万里の長城」と呼ぶが、全長は1km程度。今も牧柵代わりに利用されている。
 山頂の展望台からは内湾を囲むように島前の群島のパノラマが望める。写真は赤灘を挟み、西ノ島を遠望する。 

 

 

 この島の牛の頭絡(とうらく)は、Y字型で独特である。農家が自分の牛を識別するとき、一般に胴体に印を付けるのだが、写真のように頭絡に色綱やタグを付けて識別している。
視て歩き考:6月の梅雨を避けたつもりが、平年より早く梅雨入りし、雨天の中での視て歩きとなった。赤禿(はげ)山は粗面玄武岩でできており、赤い露出断層と昔、放牧と畑を輪転したため木がないことから命名されたと聞く。他に島内に「薄毛」という地名もあり、我が頭と照らして共感を呼ぶ島である。一般の人も入牧でき山頂ではキャンプ(山頂の水洗トイレは清潔で水洗?します)もできる。アプローチが長いので、レンタカーを使うのも一考。名勝「赤壁(せきへき)」に立ち寄るのも忘れずに。   詳細は知夫里島HPで        戻る
注1)牧畑(まきはた)・・・麦や豆の農耕と牛や馬の放牧を4年で一巡するように交互に行う(輪転する)土地を牧畑という。島内4カ所の地域(牧)で相互に異なる作付けや放牧を行い、住民は自給自活体制を確立していた。現在は行われていない。                                     参考データ:知夫里島の肉用繁殖牛は、H16年現在540頭で、37戸の農家で飼われている。