八方ヶ原放牧場(栃木県矢板市)     2005年10月   

 那須連山と日光とを直線で結ぶ中間に位置する八方ヶ原は、標高1000〜1200mの緩斜面の高原で、レンゲツツジの群落で知られている。昔、軍馬が放牧され、有毒なレンゲツツジが残り、今は遊歩道をたどって周回できる憩いの地である。高原の一角の草地60haに約90頭の黒毛和牛が放牧されている。

 八方ヶ原放牧場は、雑木林に覆われた沢を挟んだ二つの尾根筋が放牧地になっている。松や白樺などの豊富な樹種が開放的な放牧景観のアクセントとなり、牛に日陰の休息場所を提供している。  

 10月初旬に訪れたこの日は、南からの暖かい空気が入り、28℃を超える真夏日となり、10月としては、観測史上の最高気温を記録した。牛群も木陰で休息中であったが、私を認めると、近づきながら移動を開始した。

 放牧風景。秋の牛群は、このように広がって食草する。もともとノシバ野草地であったが、数年前に入会組合から矢板市に管理が移った際に、平坦地は牧草が播かれ、白い牧柵 が設置され、牛群監視のための周回道路が造られた。

 錦秋の10月下旬に再度訪れる。多くの牛は退牧したが、沢沿いの雑木林は錦織りなす紅葉真っ盛りである。

 秋の放牧地をそぞろ歩くと、曇天模様の彼方に筑波山が見えた。

視て歩き考:  20歳代に牛の行動調査のため、よく八方ヶ原牧場を訪れた。 農家から預託された牛群なので、農家ごとのサブグループで行動するが、日中午前中に1回、全頭が平場に集結する。7産以上の毎年この牧場に放牧される老齢牛が群の中心に、若い新参牛が群の周辺部に位置する社会構造を見て、感動した記憶がある。      戻る