大山(だいせん)放牧場(鳥取県)          2003年8月訪問

 中国地方の最高峰の大山(1729m)は、方位により異なる山容を見せる。南からの眺めは、岩屏風状の荒々しい稜線をみせるが、「伯耆富士(ほうきふじ)」と呼ぶにふさわしい穏やかな山容を見せるのが西麓からの眺めである。その西麓の標高600mに広がる大山放牧場は、1968年開場、県内酪農家から乳用子牛約270頭を預かる公共牧場で草地面積105haを有する。

  大山は昔から山岳信仰の対象とされ、「大神岳(おおかみたけ」と別称される霊山でもある。 その雄大な山容を山裾から丸ごと視野に収めることができるスポットである。 正面の施設は「大山まきばのみるくの里」で、駐車場、休憩所等を備えたふれあい広場を付属し、一般に開放されている。

 道路沿いに木製の牧柵が設置され、牧柵と放牧場との間の5m程のゾーン帯にコスモスが植栽されている。ここから振り返ると、島根半島、弓ヶ浜、日本海が霞の中に遠望できる。

 8月の晴れた昼下がり、ホルスタイン種の育成牛は一群となって、庇陰樹の中で休息中である。夏は朝夕の涼しいときに食草するので、私も「みるくの里」のレストランで、食事をとってくつろぎながら、牛の食事時間を待つことにする。育成牛は牧場で人工授精を行い、妊娠後期になると酪農家に返すという。

 夕刻、気温が下がり放牧地に点在する牛が遠くに見える。近づくと暮色蒼然たる中、草を引ちぎりながら無心に食べ歩く牛群を見ることができる。

視て歩き考:ふつう公共牧場は幹線道路からはずれたところにあるのだが、この牧場は、大山へ向かう幹線ルート上にあるので、誰でも気軽に立ち寄れる牧場併設のドライブインといった方がよい。散策もでき、景観も見事なふれあい牧場である。    戻る