このページは、Kiyoが探り調べた牛の生活や行動などの情報コラムです。

1.牛の横臥休息 11.牛 道  
2.牛の社会構造           12.舐 塩   
3.公共牧場の牛群社会                
4.牛の放牧時の食草
5.牛の反すう
6.牛の排せつ

7.牛の鳴き声

8.牛とアブ
9.牛の母性 
10.牛の飲水    

1.牛の横臥休息

 牛は横たわるとき、左側を下にする場合(左横臥位)と右側を下にする場合(右横臥位)とがある。観察すると、左を下にする場合の方が5%程度多い。詳細は不明だが牛の胃の位置が左側にあることと関係があるようである。胃の内容物のために左側が重くなるために、左側を下にする方が楽らしい。横臥姿勢をみても、左横臥位の方が姿勢が安定しているように私には見える。左横臥位の牛が起立して、次に横たわるときは、右横臥位になる場合が多く、起立するごとに交互に横臥位を変える(寝返りする)ことが観察される。これは床ずれを防止するための行っていると考えられる。特に牛の下肢のくるぶしの部分は脂肪が少なく、とがっているために、血流傷害が起こりやすいのである。一日の横臥時間は、8〜14時間で、牛の一日の生活の中で最大の時間帯を占める。一回の横臥時間は30〜120分程度である。    目次に戻る     

2.牛の社会構造

 牛は群をつくる習性があるが、その社会はおよそ縦型の順位が生じる。その中には、A牛はB牛より強く、B牛はC牛より強く、C牛はA牛より強いというじゃんけんの関係を形成する場合もある。順位を決める条件は、体の大きさ、年齢、角の有無、性格、先住性(その生活場所の古参か新参か)などがあり、牛群形成時に頭突きなどの闘争により決定される。決定されると、上位牛の軽い頭振りや下位牛の回避の行動程度で表だった闘争は影を潜め、牛の生活が穏やかに安定する。上位牛は食事をするときや好適な場所(たとえば風通しのいい場所)を優先して利用する傾向にある。目次に戻る 

3.公共牧場の牛群社会

 公共牧場とは、畜産農家の育成牛や繁殖雌牛1〜数頭を公共草地に預託放牧する牧場をいう。このような牧場の牛群を初めて観察したとき、大変驚いた記憶がある。牛は顔見知りであるかどうかを判断しており、同じ農家の牛が仲間のように一緒に行動するのである。その際、ほかの農家の牛と出会っても闘争をするわけでもなく、一つのグループとして行動する。当時、これまで牛群は順位性に基づく縦型社会と認識していたが、仲間関係という横型社会もあり、縦型横型関係が交差して立体的な社会構造を形成されている点では、人間の社会構造と類似しているなと思ったものである。目次に戻る 

4.牛の放牧時の食草

 牛の採食方法は、飼い方(牛舎内か放牧か)の違いで異なる。放牧であれば、1日6〜11時間食草する。日の出とともに食草を始め、途中、反すうや横臥などの休息をはさみながら、日没前の夕方に大きな食草期がみられるのが一般的である。夜間は通常休息しているが、夏の暑い時期は、夏バテして木陰で休息する時間が長くなり、夜間の涼しい時期に食草するようになる。4月頃、舎飼いから放牧を始めるとき、体重が減少する傾向にある。新しい環境に慣れるのは、人と同様馴らしが必要である。放牧は牧歌的な景観を与えてくれるが、暑熱、風雨などにさらされたり、また草地の草の量も春〜初夏のように豊富な時と、秋の不足時と、牛にとってかなり生活するには大変な時もあると思うが、見回りにいって、元気に挨拶しに集合してくると、結構たくましく生活力のある家畜だと思う。目次に戻る 

5.牛の反すう

  牛はガムをかんでいるように、反すうするのを観察された人も多いだろう。1日に5〜9時間程度、1回に1〜100分反すうし、これは飼料の種類によって異なり、穀類よりも長ものの草で長くなる。牛は採食するときにあまりかまないで採食−牛には上の前歯がない−し、第一胃(牛には四つの胃がある)に貯留し、採食の後、休息しながら、はみかえす(反すう)のである。牛は人と違い、食道が随意筋でできており、筋肉のように動かせるのである。目次に戻る 

6.牛の排せつ

  一日の排せつ量や回数は、えさの種類や食べる量と関係するが、ふんで10〜15回、尿で3〜8回程度で、ふんの回数の方が一般に多い。排せつは大部分立って行い、汚れないように尾をあげて、背をアーチ状に曲げて行う。横臥から起立するときに排せつする場合が多いが、これは排せつするために起立すると考えた方がよいと解釈している。牛によっては、横臥しながら排ふんするものもいる。このときのふん量は一般に多い。横臥しながら尿をする牛はほとんどみられないが、私は3回ほど観察した記憶がある。排せつ場所は特に決めないでところかまわずといったところだが、これがネコや犬のようにしつけができれば、管理する上で楽なのにと思うことがある。目次に戻る 

7.牛の鳴き声

 若かりし頃、なぜ牛が鳴くのかを知るため、公共牧場の牛を調べたことがある。大変退屈であった。ほとんど牛は鳴かないからである。また鳴いた牛の周りのほかの牛も無反応な場合が多い。コミュニケーションとは、ある個体が何らかの情報を伝達し、他者がなんらかの反応を示すものと認識していたが、どうも牛の鳴き声は、そのような機能がなく、感情、興奮に基づく強弱3種程度の音声から構成されているようである。ニホンザルは、平静時、警戒時などの機能別に40数種の音声が観察されているが、牛にはこのような明確な機能はなく、人の赤ん坊の泣き声のような感情声というのが私の考えである。観察中、「ヒエ−ヒエ−」という牛の鳴き声を聞いた。「これは新種の鳴き声だな」と思いつつ、おっとり刀でその牛のところに駆けつけた。草地を横切る強い風が、そのような鳴き声に聞こえたとわかり、がっかりした思い出がある。目次に戻る 

8.牛とアブ

 夏の真っ盛り、遠くから牛をみる。牛が首や尾をしきりに振ったり、足をあげたりり、歩き回ったりせわしない。サシバエやアブと格闘しているのである。真夏の高温はただでさえ食欲不振となり、体重は減少、完全な夏バテ状態になるが、これに追い打ちをかけるのが、こうした吸血昆虫である。特にウシアブ、アカウシアブといった小指大の大型アブの攻撃は強烈である。彼らは牛の呼気中炭酸ガスに誘われ て飛来し、特に体表温度が高い黒い毛色を好む。だから毛色の濃い黒に近いウシほど攻撃を受けやすいし、白黒のホルスタイン種であれば、白よりも黒の斑紋に多く寄生しているのが観察される。こうした攻撃に対し、ウシは一群に集結する防衛行動をとる。その群を観察すると、群の真ん中がアブの攻撃の少ない好適な場所であり、体格の大きい上位牛が占拠し、群の周辺部にはアブの攻撃の受けやすい下位牛が位置する。目次に戻る 

9.牛の母性                    2003.9upload

 牛が分娩すると、乳牛は大量の乳を搾る必要があるため、母子は早いうちに分離され別飼いされる。またいつまでも子付きだと次の妊娠が遅れるのである。一方、肉牛は子が離乳する3か月齢程度母子が一緒に生活する場合が多い。母牛が実子(自分の子牛)を識別するのに、視覚(子牛の姿)、聴覚(子牛の鳴き声)、嗅覚(子牛のにおい)いずれが強く関わっているか調査したことがある。その結果、母子が離れていると、いずれの感覚も決め手にならず、必ずしも実子を認知できないが、母子が接触したときに母牛は子のにおいを嗅ぎ、嗅覚により実子かどうかを最終的に認知する。親牛の母性は強く、子牛が見あたらないと発声しながら探索するし、一般に実子以外には授乳はしない。ただ実子の死亡や隔離により不在となり、他子にその母牛の臭いを付けると授乳し、乳母(うば)牛になる。また子のいない成雌牛の中には世話好きの子守牛もいる。子牛はある程度大きくなると子牛同士いっしょに行動、休息するが、近くで寄り添うように子守をする。目次に戻る 

10.牛の飲水                                          2003.10upload

   大人の牛、すなわち成牛でいうと、肉用牛の和牛で15-30リットル、乳用牛の主流であるホルスタイン種で30-120リットルである。乳牛の飲水量が多いのは、牛乳(水分87%)として体外への持ち出しがあり、主にその水分補給に必要であるためである。従って産乳量の違いにより飲水量の変動幅が大きい。飲水量は採食量とも比例し、乳用牛は肉用牛よりも採食量も多いために、飲水量も多いわけである。また夏の暑い時期は飲水量は増加する。成牛の一日の飲水回数は、肉用牛で2-4回、乳用牛で4-8回であり、一回の採食継続時間の後半から終了にかけて多く飲水する。飲み方は、口を水中に付けて吸い飲みする。遊びや暑いときのストレスから、時に犬や猫のように舌によるすくい飲みも時に観察される。目次に戻る 

11.牛 道                     2003.10upload

 放牧地を見て歩くと、裸地の道が観察できる。牛が採食場や水飲み場などへの移動に利用するためにできる牛道(うしみち)である。平坦な放牧地では、牧柵沿いに多くみられる。傾斜地では、等高線上に平行に網目状に形成される。一度、夕日の逆光の中でシルエットとなった山容に、残光が牛道にあたり、網目状の発光体のように放射する光景をみて息を飲むほど感動したことがある。    目次に戻る 

12.舐 塩                    2005.01upload

   ヒトが塩を必要とするようにウシも塩を与える必要がある。飼料中に配合するか、微量ミネラルを含むブロック状の固形塩を舐めさせる、二つの給与法がある。後者の塩を舐めさせる、すなわち舐塩(「しえん」と読む)は、ウシによく観察される行動である。ちなみに、料亭や飲み屋では客を立ち寄らせるおまじないで盛り塩するのは、ウシの舐塩にまつわる次のような中国の故事に由来する。昔、中国の皇帝は多くの妃を抱え、夜ごと牛車に乗って一夜のともにする妃の邸宅を訪ね歩いていた。見捨てられがちなある妃が門前に塩を盛ったところ、ウシが動かずに塩を舐め始め、皇帝はしかたなくその妃と一夜を過ごすようになった。ウシが塩が好きなことがわかる故事である。     目次に戻る