コラム「現代ウシ事情」
家畜牛生産や技術に関する現代の実相を調べ考察,解説します。
 
 1.乳牛は放牧で飼われているの?  2.肉用牛の放牧の実態は?
 3.子牛生産法の新事情   4.お米をウシのエサに
 5.長旅をするウシ達   6.酪農作業事故の実態
 7.ウシの皮膚病   8.アニマルウェルフェア
 9.農水省の飼料自給率の向上政策  10.蹄病問題 
 11.暑さによる受胎率低下を受精卵移植で改善   12.搾乳ロボットの現代事情 その1 
13.搾乳ロボットの現代事情 その2 飼養法と評価    14.公共牧場の現代事情
15.ホルスタイン種とジャージー種の産乳性比較  
1.乳牛は放牧で飼われているの?           (201512月記)

 牛乳パックをみると,放牧牛と塔型サイロを描いた絵柄が多いので,消費者の皆さんは,乳牛は放牧で飼われているのが当然と思っているかもしれない。放牧か舎飼いかの選択は,乳牛に限れば,成育段階や泌乳の有無,あるいは地域や季節によって異なっている。▼生後5ヵ月齢頃からの育成牛や初産前の未経産牛は,直接,乳生産をしていないので,公共育成牧場に預けられる場合があり,放牧牛となる。その入退牧は季節の風物詩としてマスコミによく紹介される。▼一方,泌乳中の成雌牛は,放牧だけでは栄養が足りない,乳成分が変動,低下しやすいなどの理由で,特に経営面積が小さい都府県は舎飼いとなる傾向がある。しかし,広大な草地のある北海道でも泌乳牛の放牧は酪農家の7%程度である。大規模で飼養頭数が多く,個体乳量が高い牧場は,放牧を運動やストレス解消として位置づけている。一方,成牛の昼夜放牧を行う牧場は,配合飼料の利用を少なくして,乳量を抑え,飼料費抑制と健康を主眼に置いている。▼放牧は草が豊富な春から秋にかけて行われ,通年放牧は可能であるが,実践する農家は少ない。

2.肉用牛の放牧の実態は?               (201512月記)

肉用牛は,ホルスタイン種去勢牛,和牛(黒毛和種,褐毛和種,日本短角種など)及びそれらの交雑種に分類される。和牛は子とり生産用の繁殖雌牛と肥育牛とに分けられる。放牧は主に繁殖雌牛で行われ,妊娠牛や子付き分娩牛が放牧される。栄養価の高い牧草は栄養過多になりやすく,ノシバなどの野草が適している。農家周辺の草地に放牧される他,公共牧場に預託される。▼近年,耕作放棄地が増加し,その草刈り用に繁殖和牛の出前放牧が西日本を中心に行われている。繁殖和牛は季節放牧が基本であるが,牛舎がいらず,えさ代が半減する通年放牧を実践する農家もある。▼放牧和牛の子牛も10ヵ月齢弱まで放牧されると,肥育もと牛として出荷されるが,やや小型だが足腰が強く,肥育成績がよいといわれている。近年,高齢の廃用繁殖和牛を野草地で肥育放牧する技術研究も行われている。

 3.子牛生産法の新事情                (201512月記) 

 雌牛は大人になれば自然に乳を出すわけではなく,子牛を産むことによって乳を出すのは人間と同じである。現在,子牛は選抜された種雄牛の精液を人工授精することによって生産される。▼近年,受精卵移植技術による子牛の生産利用が進みつつあり,日本は世界の1割の頭数を実施する先進国である。平均受胎率は新鮮卵で約52%,凍結卵で45%と,人工授精に比べ受胎率が低いのが課題である。▼受精卵移植は,体内受精卵あるいは体外受精卵を用いるが,後者の体外受精卵の生産法として,と畜由来の卵子を利用する方法と生体由来の卵子を利用するOPU(経膣採卵)法がある。▼と畜卵子は現在の主流を成すが,採取卵子数と品質の差が大きい。一方,OPU法は,1~2週間ごとに卵子を吸引採取でき,未経産ドナーの利用もでき,ウシへの影響も少なく,急速に利用が増えている。外国ではブラジル,アメリカなどがOPU法による繁殖生産が盛んである。OPUによる卵子採取効率を高めるには卵巣に多くの正常卵胞を存在させ、1520個以上の卵子の培養が理想である。そのため搾乳牛であればエネルギーバランスや飼料給与、また卵胞ウェーブ制御で小卵胞が多く育つ卵巣環境を作ることが重要とされている。▼高泌乳化が進み,それに伴う繁殖性や育種改良速度の低下が指摘されている。受精卵移植はそれを改善する技術として有望だと思う。

 4.お米をウシのエサに               (2016年1月記)

食用米の過剰問題はよく知られているが,その対策として飼料米を作付けする考えは1978年頃にすでにあった。しかし,品種の育成と栽培がうまくいかず,主食の米を家畜のエサにする抵抗感もあり,普及には至らなかった。▼2000年頃から,飼料イネ用品種作出や栽培,ウシへの飼養試験が行われ,普及,増産に向けた政策が行われた。その結果,2015年産米は,主食用米から飼料用米1)やイネホールクロップサイレージ2)(WCS)などへの転換が進み,作付けと数量の超過が初めて解消したと報道されている。▼それによると飼料用米は8万ha弱,前年比2倍以上の道府県が27に及び,関東・東北が目立っている。イネWCSは3万8千ha余,前年比23%増で,九州・東北で作付けが多い。▼自ら飼料用米などの作付けや収穫を行う畜産農家もでてきた。流通・保管コストの削減,交付金の継続が課題であり,飼料用米を本作として定着させる取り組みが求められている。

1)脱穀した籾米をウシの消化をあげるために粉砕して給与 2)穂のついたまま丸ごと密封して発酵させた飼料

5. 長旅をするウシ達                 (2016年1月記)

北海道は日本の乳牛頭数の50数%を飼う主産地である。都府県の酪農家の中には,搾乳へ専念するため,子牛や初めて出産する初妊牛を,北海道の飼養頭数に余裕のある酪農家から仕入れている。201512月にその初妊牛の高騰が報じられ話題となった。▼育成牛を北海道の公共育成牧場に預託する都府県酪農家もおり,かくしてフェリーやトラックで長距離の旅にでるウシ達がいる。ウシは,暑さに弱く,立ったままでもあるので,ドライバーは良質乾草と水を給与しながら,ウシの呼吸,ふん,反すうなどの状態を観察しながらの運搬となる。▼畜主は,到着後も飼料に馴らしたり,寝床の改善などの環境馴致を行い,ウシのストレスをためないように努めることが求められている。

 6.酪農作業事故の実態                (2016年1月記)

農業の就業者数当たりの死亡事故件数は建築業を抜き最も多い。農業の中でも酪農・畜産は事故が多い傾向にあり,大きくウシとの接触事故と農業機械による事故とに分けられる。▼ウシの接触事故の内訳は,「搾乳」作業が最も多く,以下「牛の移動」「牛の捕獲」「給飼」「治療」「牛管理」の発生順である。「搾乳」作業は,フリーストール飼養よりウシと直接接触する機会が多いつなぎ飼養で多く,女性の事故割合が高い。▼農業機械ではフォーレージハーベスタ,ロールベーラ,トラクタなどによる事故が多い。事故の背景は,機械の特徴上,危険箇所が多い点や,作業が天候との兼ね合いで時間に追われる点があり,適切な判断力が求められている。

 7.ウシの皮膚病                   2016年1月記)

ウシの頭や首に,毛が抜けて肥厚したイボがあるウシを見たことがあると思う。カビの一種で「皮膚糸状菌症」といわれ,免疫力が弱った状態で発症する日和見感染症である。群飼の子牛や育成牛に蔓延し集団発生する傾向がある。自然治癒するといわれているが,抗真菌軟膏による早期治療が望ましい。人にもうつるので患部に直接手を触れない方がよいとされている。予防対策としては,栄養不良の改善や牛群編成,牛舎環境,移動などによるストレス要因の除去による免疫力改善を挙げられる。

 8.アニマルウェルフェア               (2016年1月記)

快適性を配慮した家畜の飼養管理をアニマルウェルフェア(家畜福祉)といい,その基本概念である5つの自由として、(1)飢えと渇きからの解放、(2)不快からの解放、(3)痛み、障害、病気からの解放、(4)恐怖や不安からの解放、(5)正常な行動を表現する自由-を掲げているウシを健康でストレスフリーの状態にして,ウシの生理や要求を満たす飼い方をすれば,生産性と利益の向上をもたらすという考えに基づいている。20世紀後半の工場的畜産に対して,英国などヨーロッパでこの考え方に基づく政策が進められ,日本でも2011年までに「アニマルウェルフェアの考え方に対応した飼養管理指針」が畜種ごとに整備されている。

 9.農水省の飼料自給率の向上政策           (2016年1月記)

飼料自給率はここ30年間2527%で推移している。その向上を図り,飼料生産基盤を確立するために,農水省は,難防除雑草の駆除などによる草地改良,飼料生産作業の集積などによるコントラクターの生産機能強化,自給飼料生産や環境負荷軽減に取り組む酪農家の交付金支援,などを2016年度概算要求をしている。また農水省の4つの政策目標として,国産粗飼料,飼料用米,エコフィード及び放牧の利用推進を掲げている。

 10.蹄病問題                    2016年1月記)

乳牛の除籍(廃用淘汰)産次の平均は3.5産である。除籍理由として,乳房炎,繁殖障害に次いで多いのが蹄病(肢蹄障害)である。▼規模拡大に伴い,つなぎ飼養から牛舎内を自由に動けるフリーストール(FS)飼養が普及している。蹄病はつなぎよりもFSで多い傾向にあり,飼料の要因とコンクリート床が主因といわれている。▼最近の解説記事によると,直接的な飼料効果よりもこれを介して生じる蹄底クッションの機能低下によるコンクリート床に対する機械的作用と考えられている。▼削蹄,蹄浴,通路や牛床の除ふんや敷料利用などで予防し,跛行を記録して早期発見し,牛群の15%以上の跛行を確認したら,獣医師や削蹄師に治療・処置を依頼する。蹄病に強いウシの選抜育種も求められるが,複数の要因が関わる蹄病は,予防効果に時間がかかるので,持久的な取り組みが必要である。

 11.暑さによる受胎率低下を受精卵移植で改善     2016年1月記)

 乳牛は基本的に暑さに弱く,高泌乳化や温暖化の影響もあり,北海道でも放牧地にひ陰林を設けたり,牛舎内に扇風機などを設置している酪農家が多い。暑さによる影響は,乳量や受胎率の低下となって現れる。暑熱ストレスによる受胎率は,排卵や受精卵の初期発育をバイパスできる受精卵移植(ET)が人工授精よりも3倍高く,効果的といわれている。最近の記事によると,これまでのETで使う凍結授精卵や新鮮受精卵の問題を克服したチルド受精卵の開発と供給事業が紹介されている。すなわち十勝の全農ET研究所で,4~5環境下における非凍結チルド保存液を開発して,1週間保存後も高い受胎率を得られるようになり,年間4,000個のチルド受精卵を全国に供給しているそうである。

 12.搾乳ロボットの現代事情 その1        2016年2月記)

牛舎作業は,搾乳,飼料の調製・給飼,ふん尿処理,繁殖管理などが主であるが,搾乳は作業時間の約半分を占める。搾乳時間を減らし,通常2回搾乳を,回数増によって乳量を増やすメリットがある搾乳ロボット(AMS:Automatic Milking System)が徐々に普及している。人に手を借りず自動的に搾乳可能なAMSは,1990年代に家族経営向けにオランダやスウェーデンを中心に開発され,国内では現在250戸程度稼働しているとみられる。国内酪農家数17700戸(2015年現在)のうち1.4%を占める。▼1)搾ロボを導入する牛舎構造であるフリーストール飼養が普及してきたこと,2)高齢化で省力,軽労化したい酪農家が増加傾向,3)搾ロボのハードとソフトの両面の技術が高度化してきたこと,4)ウシの乳器形状の改良が進み,搾ロボによる搾乳率が高い可能性-などAMS普及を後押しする条件が揃いつつある。▼一方,法人経営など大規模な牧場が採用するロータリパーラ向けの次世代型搾ロボが販売されている。これまでの搾ロボは,24時間ウシが自発的に搾ロボにはいり,自動で搾乳を済ませるのが基本だが,次世代型搾ロボはワンマンでウシをロータリパーラに追い込み,搾ロボの管理をしながら,1日数回,時間を決めて搾乳する。現在の大規模牧場は,搾乳以外の作業はほぼワンマンで可能だが,搾乳だけは人数が必要であり,外国人雇用が多いなど人手不足が販売の背景にあるとみられる。▼搾ロボは,生乳成分をモニタリングして発情や乳房炎を発見したり,BCS(ウシの太り具合)を自動測定する機能も加えられつつあり,搾乳だけでなくウシの健康状態を管理する機器に進化しつつある。

 13.搾乳ロボットの現代事情 その2 飼養法と評価     2016年2月記)

 搾ロボの導入は,ウシが搾ロボにアクセスできるフリーストール飼養であることが基本条件であり,アクセスが自由で飼槽やベッドを行き来できるフリーカウトラフィックと搾乳前後に飼槽エリアをワンウェイで介して誘導するフォースト(forced)カウトラフィックがある。条件が整わないと,フリーはロボットへの追い込み作業が増えるのに対し,フォーストはロボット前の待機時間が増え,休息時間が減り,社会的順位に影響し,アニマルウェルフェアの面から望ましくないという指摘がある。北海道の飼養形態別乳検データ解析によると,搾ロボ飼養は,フリーストール・ミルキングパーラ飼養,つなぎ飼養,放牧飼養に比べ,305日乳量が高く,除籍産次が短い傾向がある。短い除籍産次は搾ロボで搾乳できないウシがいることが背景にあると推察される。搾乳はロボットがやるので,労働時間短縮につながるが,うまく搾れないウシもあるので監視が必要なことや,故障もあるので維持費用も必要となる。
 14.公共牧場の現代事情              2016年2月記)

公共牧場は,産乳に貢献しない乳用育成牛を預託する公共育成牧場と子とり用の繁殖和牛やその子牛を預託する公共繁殖牧場とに大別される。H26年度の牧場数は736(北海道204,都府県532)で,乳用牛が91千頭(北海道72千頭,都府県20千頭),肉用牛42千頭が(北海道9千頭,都府県33千頭)預託され,それぞれピーク時の1100余,130千頭,95千頭に比べ減少している。▼この間,経営主体が地方自治体(管理委託63%),農協営が多くなり,農協の合併による再編,夏季放牧から通年預託への移行,繁殖開始時期の早期化-など変貌している。公共牧場の利用状況は,乳用牛が放牧対象頭数の14%,肉用牛が同4%であり,酪農家の36%,肉牛農家の7%が利用している。▼公共牧場のha当たりの放牧頭数はピークの2.35から1.55と低下し,面積当たりの頭数に余裕がある。乳牛の飼養頭数の減少の他,規模拡大による草地面積や労働力の確保が利用の下押し圧力になっているようだ。▼育成牛にF1よりもホル種種付けによる乳牛改良,適正月齢での繁殖性やそのための発育改善,搾乳や採草による粗飼料生産などの多機能化-が今後の課題であろう。

15.ホルスタイン種とジャージー種の産乳性比較   2016年2月記)
 
日本の乳牛の99%を占めるホルスタイン(H)種と1%のジャージー(J)種との産乳性の品種間差を1990年と2014年とで比較してみる。H種の305日乳量,乳脂肪率,乳タンパク質率は,それぞれ9907705kg3.69%,3.09%に対し,20149382kg3.92%,3.26%と+1677kg,+0.23%単位,+0.17%単位の増加を認めた。J種の305日乳量,乳脂肪率,乳タンパク質率は,それぞれ19904807kg5.07%,3.75%に対し20146242kg4.92%,3.85%と+1435kg-0.15%単位,+0.1%単位の増加であった。▼一般に乳量が増えるほど,乳成分率が減る傾向があるが,H種はJ種に比べ,着実に乳量と乳成分率が向上している。H種は,種雄牛の後代検定といった育種改良が行われ,J種は行われていないことが背景にあるとみられる。
 北海道の農協による大規模酪農経営          20171月記)

 酪農家戸数の減少による乳牛頭数や生乳生産量の減少、及び畜産の収益力強化を目指した地域ぐるみの畜産クラスター関連事業を背景に、北海道の農協自らが出資する酪農場の設立や構想が増加傾向にある。▼目標乳量2,0005,000tとメガファームと呼ばれる大規模農場が主体で、道東、道北の酪農専業地帯で増えている。生乳生産の他、保育・育成牛預託や後継者を育てる研修部門を併せ持つ事例もある。▼酪農の中心であった家族経営に内在する、制度・政策の先行き不安、設備・資金不足、労働力不足、高齢化などの問題解消を目指す一方で、綿密な投資計画や自給飼料基盤の確保などが課題として指摘されている。 

 酪農の排せつ物利用の最近の情勢            201612月記)

近年の酪農家戸数減に伴う排せつ物発生量減少の一方で,1戸当たりの飼養頭数増に伴う排せつ物量は1,300t/年まで増加している。施設整備など家畜排せつ物法はほぼ順守されているが,適切な処理利用や悪臭対策が求められている。耕畜連携によるさらなる堆肥利用推進,メタン発酵による売電といった高度利用,家畜排せつ物関係法令の規制強化への対応,温室効果ガス対策などの課題があり,施設整備の支援策が必要である。堆肥は、酪農家内や地域内の農地に散布循環するのが標準だが、堆肥の広域流通を行っている地域もある。たとえば熊本県のJA菊池は,直営の有機支援センター2か所でバラ状堆肥及び牛糞と牛鶏混合の2種ペレット堆肥を生産し,地域外の広域流通の拠点となっている。ペレット堆肥は,低水分のため長期保存ができ,成分凝縮のため散布量と作業を軽減する利点がある。堆肥の広域流通を進めるために,流通コストの削減,堆肥の品質確保,他地域産堆肥の競合の3つの課題がある。バイオガスプラントも普及しつつある。2000年当時の建設目的は,売電よりも糞尿(消化液・液肥)を肥料として利用する資源循環酪農が主目的であった。2012年の再生可能エネルギー電力の全量買取制度(FIT)で,39円/kWhで売電可能となり,バイオガスプラントの建設と普及が進んだ。共同型や法人型の大型プラントで増える消化液・液肥を散布するための農地確保の必要性が指摘されている。

 子牛の飼い方の注意点                 201612月記)

新生子牛の死亡は生後3カ月齢未満の,特に出生直後に多い。新生子牛は病原菌に対する抵抗性が低く,寒さに弱いので,乾燥敷料の準備や隙間風をなくすなどの分娩環境を整える必要がある。子牛が生まれたら、呼吸の確認と体毛の乾燥,初乳の給与といったケアが必要である。▼難産率は初産牛が2産牛よりも高く,体重45kg以上の雄子牛で高い。難産低減のため,子牛が小さい黒毛和種精液の利用や雌雄選別精液を利用する方法もある。子牛の下痢症の予防も大切である。下痢症を防ぐには,初乳量や哺乳量を微調整し,清潔な分娩房や子牛ペンで飼養する必要性がある。寒さは下痢に影響するため、寒暖差に留意した保育施設構造を整えたり、カーフJacket\\\利用することも一考する。

 

 エコフィード                    201612月記)

エコフィードとは、食品残さ等で製造された家畜用飼料をいう。ここで食品残さ等とは、食品製造副産物、余剰食品、調理残さ、食べ残し、農場残さを指す。食品残さ等の年間発生量は2千万t弱で、70%が飼料や肥料に再利用される。再利用するために、他の飼料と混合、乾燥、発酵などの処理をして調製する。給与畜種は、豚が多く、次いで牛が多い。食品製造副産物以外の食品残さは、包装されていたり、少量で多種多様な残さであるため、分別の手間や成分不安定などで再利用率が低いのが課題である。適切な分別や調製、成分分析の実施で、エコフィードの品質向上、生産畜産物の差別化などの取り組みに対する事業に対して 支援が行われている。

 

 肥育和牛のビタミンAコントロール
和牛肉のうち、肉の中にサシ(脂肪交雑、BMS)が入る霜降り肉が高値で取引される。ビタミンAは、脂肪分化細胞の増殖を抑えるため、サシがよく入る1824カ月齢に相当する肥育中期にビタミンAを制限する給与法が行われている。
しかしビタミンA欠乏は、失明、足の関節炎などのほか、採食量が低下するので、血中ビタミンA濃度は30IU/㎗を下限とする。草の中のβ-カロチンはウシの小腸でビタミンAに変わるが、肥育中期に利用するβ-カロチンの少ない飼料としては、大麦、ふすまなどの濃厚飼料や稲わらがある。ここ20~30年で、黒毛和牛肉の最高格付の脂肪含量は20%レベルから40~50%に増えている。脂肪の多い肉は柔らかくジューシーであるが、うまみ成分である遊離アミノ酸が少なく、味に欠けるという指摘もある