秋名の幽霊


 

 


「秋名に高橋涼介の幽霊が出る?」



 秋名山の麓、渋川市。いつものガソリンスタンドに、いつものメンバー。客のいない間の無
駄話もいつものこと。だが、この話題はどうだろう?
「怪談始めるにはちょっと気が早すぎるんじゃないか、健二?」
 他に言うべきこともあるような気はしたが、池谷としては無難なところから振ってみる。
 なにせ、今は春。四月ともなれば、早春、というには遅いが、それでも日が落ちてしまえば、
まだまだ風は冷たい。まして峠ではなおさらだ。
 幽霊だって、こんな季節に峠で立ちつくしていては、風邪の一つもひくのではないだろうか?
「そうですよ、健二先輩。だいたい高橋涼介、生きてますよ。今日もプロジェクトDの遠征だ、
って昨日拓海も言ってたし!」
 いつもはこういった話題に悪ノリしがちなイツキも、今回のはさすがに突拍子もなさ過ぎる
のか、ノッてこない。
 だが、健二のほうも簡単に引く気はないらしい。つい胡散臭そうな顔をしてしまった池谷と
イツキに憤然と言い返す。
「そんなこと言ったって、見た、ってヤツがいるんだよ! 高橋涼介のFCが秋名を走ってた、
って」
 それを聞いて、池谷とイツキは顔を見合わせた。なんだかよくわからない。それがどうした
というのだろう。「高橋涼介が秋名を走っていた」それが何故幽霊に結びつくのか。
「ちょっとまてよ、健二。別に高橋涼介が秋名を走ってたっておかしくはないだろ。なんでそ
れが幽霊になっちまうんだよ?」
 最近はともかく、拓海とのバトルの前には何度か秋名を走っているのを目撃されているし、
その後も、拓海に会いにこのガソリンスタンドまで来ている。高橋涼介が秋名に現れたからと
いって、特に話題になるようなことでもないはずだ。
「確かに高橋涼介が秋名を走ってたっておかしかないさ。でも、そのFCが走ってたのがプロ
ジェクトDの遠征の真っ最中だったとしたら、どうなる?」
「どうなる、って……」
 健二の答えに、さすがに池谷もとまどう。
 プロジェクトDの遠征中は、総指揮をとる高橋涼介は当然遠征先にいるはずだ。では、彼の
FCは?
「誰か他のヤツが運転してた、とか……」
「“あの”高橋涼介のFCを? 一体誰が?」
 間髪入れずに切り返されて、池谷は考え込んでしまった。普通の車なら家族が使いまわすこ
とはよくあることだ。だが、より速く走るためにチューニングをほどこされた走り屋の車は、
それだけ繊細な操作を要求する。家族といえども、ある程度以上のドラテクがなくては、扱い
には苦労するはずだ。まして高橋家は資産家だと聞いている。他に家族用の車がないとは思え
ない。
 唯一、涼介のFCを運転する可能性がゼロとはいえないのが弟の啓介だが、監督以上に、ア
タッカーが遠征先にいないことなどありえない。
 そこまで考えて、今更ながらにもっと基本的な疑問が浮かぶ。
「それ、そもそも本当に “高橋涼介の”FCだったのか? たんに白のFC、ってだけなら他
にもいるだろ」
「レッドサンズに他に白のFC乗りがいるっていうならそうかもな。見た、ってヤツはナンバ
ーまでは確認できなかったけど、レッドサンズのステッカーは確かに貼ってあった、って言っ
たんだ」
 そこまで言われては、池谷も黙るしかない。レッドサンズのメンバーを全員知っているわけ
ではないが、高橋兄弟の他にロータリー使いがいるという話は聞かない。それになにより、あ
の高橋涼介とまったく同じ車で同じチームにいられるほどの強心臓の持ち主はまさかいないだ
ろう。
「なぁ、池谷」
 考え込んでしまった池谷に、妙にしんみりした口調で健二が話しだした。
「高橋涼介は走りを引退した、って話だったよな」
「……あぁ」
 いきなりそんなことを言いだした健二に面食らいながらも、池谷は拓海が言っていたことを
思い出していた。拓海の話では、高橋涼介は、プロジェクトDの遠征先にも自分のFCは使わ
ずに、サービス隊のワゴンに同乗してくるのだという。

 


『涼介さんは走らない、ってことは聞いてました。けど、それでも、実際に目の前に涼介さん
がいるのに、白のFCがそこにない、っていうのが、なんか……ものたりないっていうか……
ヘンな感じで……』

 


 そう言った拓海の、言葉通り、どこか寂しげで複雑な表情を思い出す。
 それを聞いたときには、池谷も同じような寂寥感を感じたものだ。
 拓海のドリフトもそうだが、高橋涼介の走りも、一度見れば忘れることのできない鮮烈さが
ある。

 


 確かなテクニックに裏打ちされた、どこか攻撃的な走り。
 バトル相手のわずかな隙に、鮮やかに切り込んでいく、純白の閃光。
 今はあまり使われなくなった、かつての二つ名のように。見る者の心に、鮮やかな軌跡を残
していく“赤城の白い彗星”―― 

 


 走り屋として車を走らせる、というのは、実の所かなり危険な行為だ。
 車という機械は、人が自力で出し得る力を遥かに凌駕する動力を持っている。肉食の獣と同
じだ。どんなに慣れたように見えても、アクセルを踏み込めば、スピードという獰猛な牙を剥
いてドライバーに襲いかかってくる。
 対抗する術は、己の腕一つ。およばなければ、その代償は自分の身で贖うしかない。
 それは、身の危険と引き換えの、きわどいゲーム。
 だが走り屋という連中は皆、程度の違いはあっても、そんなゲームに魅せられた者達だ。と
いうより、危険は承知の上で、それでも走らずにいられないからこそ、走り屋などと呼ばれる
のだ。
 池谷自身、ただ、走ることが好きで、走っていられれば幸せで。事故っても、己の腕の未熟
さに歯噛みしても、走ることだけはやめられない。
 だが、高橋涼介は、あれだけの走りをしながら、「引退する」という。
「本気だと思うか?」
 そう続ける健二に、池谷は言葉を返せなかった。それでも、沈黙する池谷に何か通じるもの
があったのか、健二は気にした風もなくさらに続ける。
「あれほどの腕持ってて、あんなプロジェクト本気で始めちまうくらいだぜ。結局のところ、
走るのが好きでしようがないんだ。なのに自分は走らないなんて、絶対無理してると思うぜ。
FCに乗って行かないのだって、移動時間に少しでも休む、ってのもあるかもしれないけど、
オレには、乗って行けば自分で走りたくなっちまうから、ことさら乗らないようにしてるんだ
と思えてしかたないよ」
 そして健二はようやく話を元に戻したのだった。

 


「だから、そうやって無理矢理押し込めた“走りたい”って気持ちが、幽霊、っていうか――
生霊みたいにさまよい出てきたのかもしれないぜ?」

 


「――そっかー、なるほど! じゃ、じゃあホントに秋名に高橋涼介のゆ、幽霊が出るんです
かーっ!?」
 一瞬の沈黙の後、それまで池谷と健二のやり取りに固唾を飲んでいたイツキが常のテンショ
ンを取り戻して騒ぎ出す。
 だが、池谷はどうも納得できずにいた。心情的には健二の言ったことはよくわかる。だが、
だからといって、生霊、とはあまりに突飛すぎる。それに、やはりまだ疑問が残る。
「それならなんで秋名に出るんだ? 高橋涼介なら赤城に出るのが筋ってもんだろ」
 幽霊に筋も骨もなかろうとは思ったが、他に言いようもない。だが健二はそれには頓着せず
に、この疑問にも淀みなく答えを返してきた。
「高橋涼介が引退するきっかけになったのが、秋名での拓海とのバトルだったからだろ」
 一応理屈は通っている。だが、池谷にはどうもまだしっくりこない。さっきから何かが頭の
隅に引っ掛かっていて、それが健二の説明を鵜呑みにするのを邪魔しているのだ。
 そんな池谷の様子を察して、健二は不満そうに言い募る。
「なんだよ、池谷。そりゃー、幽霊なんて信じられないのはわかるけど、見間違いでもない限
り、他に説明つくか?」
 そもそも生霊説からして、まともな説明とは思えなかったが、それは言わないでおく。
 与えられたパズルの断片は、「白のFC」、「レッドサンズのステッカー」、そしてそのド

ライバーは、少なくとも生身の高橋涼介ではありえない―― 
「……そうだ……ステッカーだ……」
 そう、確か以前噂を聞いたのだ。「レッドサンズのステッカー」に関することだった。
「それ、偽レッドサンズじゃないのか?」
「え? えぇーっ!? 何ですかそれ? レッドサンズに偽物なんてあるんですかー?」
 大騒ぎしているのは、偽レッドサンズを知らなかったらしいイツキだ。一方、健二は苦笑い
を浮かべながら、平然とこう言った。
「やっぱりイツキはともかく、池谷は引っ掛からなかったか」
「え? えっ!? 今のは嘘だったんですか?」
 状況がよく飲み込めていないイツキに、健二が言う。
「秋名にレッドサンズのステッカー貼った白のFCが出た、って話は本当らしいぜ。俺が見た
わけじゃないけどな。話の出所はしっかりしてるから、信じていいと思う」
「じゃぁ、それってやっぱり高橋涼介なんじゃないんですか?」
 そう言うイツキに、健二は首を横に振った。
「現れたのはプロジェクトDの遠征中だった、って言ったろ」
「えーっ!? どういうことなんですか、健二先輩、池谷先輩」
 イツキは訳がわからない、といった様子で、救いを求めるように二人を見る。
「池谷はわかったんだろ? 説明してやれよ」
 笑いながらそう言う健二に頷いて、池谷はイツキに説明を始めた。
「レッドサンズが、本格的なドラテク追求の、レベルの高いチームだって話は前にしたよな」
 その高いレベルを保つためには、サーキットでの走行会やジムカーナへの参加など、日々の
鍛錬ももちろんだが、それ以前に、まずメンバーを厳選する必要がある。つまり半端な腕では
レッドサンズに入ることすらできないのだ。
 だが逆に言えば、レッドサンズのステッカーを貼ることを許される、というのは、そのまま、
速さの証明になる、ということでもある。
「……そんなわけで、勝手にレッドサンズのステッカーを自作して貼るヤツまで出るようにな
ったんだ」
 ぽかん、と口を開けて池谷の説明を聞いていたイツキは、感慨深げに大きく息をついて言っ
た。
「はぁー、そうなんスかー。やっぱレッドサンズってすごいんですねー……。あ! でもそう
すると、秋名に出るレッドサンズのステッカー貼ったFCって、その偽物のほうなんですか?」
「出たのがプロジェクトDの遠征中だったっていうなら本人のはずはないし、他に考えられな
いだろ」
 池谷はそう言って健二を見る。
 健二もやはり同じ結論に達していたのだろう。頷きだけを返してくる。
 一方イツキは、幽霊の正体にごく常識的な説明がついてしまったことに露骨にがっかりした
ように言った。
「……幽霊ならともかく、偽レッドサンズじゃ見に行ってもしょうがないかー」
「何をのん気な……」
 思わず呟いてしまった池谷に、何故そんなことを言われたのかわかっていないらしいイツキ
が、怪訝そうな顔をする。仕方なく池谷はさらに説明を続けた。
「確かに偽レッドサンズはいる。けど、オレが聞いた話じゃ街中にしか現れなかったはずだ」
「へ? 峠に出るんじゃないんですか?」
 走り屋は峠。という発想が身についてしまっているらしいイツキが不思議そうに聞き返す。
「もともと本物に入れる腕はない連中だからな。峠で本物にかち合ったりしたら勝ち目はない
だろう。本物が偽者に対してどんな対応してるのかは知らないけど、放っておく、ってことは
ないだろうしな。でも街中ならお互いそう無茶な真似はできないだろ? だから峠を堂々と走
ってる、なんて今まではなかったはずなんだが……」
 秋名といえば、走り屋の間では拓海のハチロクがすっかり有名になっている。だが、プロジ
ェクトDの遠征中には、そのドライバーである拓海は当然秋名にはいない。そして池谷達とし
ては不本意なことに、秋名には他に拓海ほどに走れる者はいない、というのも一部の走り屋達
には知られているのだ。それを承知の上で秋名に出没するのだとしたら……。
「なめられてる、ってことだろうな」
 苦々しげに健二が呟く。
 池谷としても不本意ではあるが、おそらくそういうことだろう。
 偽レッドサンズ自体は、レッドサンズの問題だ。部外者である自分達が口を出すことではな
い。だが、偽者が出没するのが自分達のホームコースとあっては話は別だ。最終的な処分はレ
ッドサンズに任せるとしても、本当に偽レッドサンズなのかの確認と、もしそうなら、どこの
誰の仕業なのかを、出来れば明らかにしておくべきだろう。少なくとも、なめられたまま放置
してはおけない。
 そこまで説明されてようやく事態を理解したイツキは、憤然としてまくしたてた。
「でも、つまり、レッドサンズの二軍よりも腕は劣るわけですよね。だったらそんなヤツ捕ま
えるぐらいわけないですよ。オレ達で捕まえて本物のレッドサンズに突き出してやりましょう
よ!」
 だが、池谷と健二はその言葉に沈黙でしか答えられなかった。去年の夏、初めてレッドサン
ズがこの秋名に乗り込んできたとき、自分達スピードスターズのメンバーは、そのうちの誰一
人、捉えることさえ出来なかった。だが、後から聞いた話では、そのときのレッドサンズのメ
ンバーは、当然のことながら一軍だけだったわけではなく、二軍も混じっていたそうだ。
 自分達の腕がそれほど劣るとは思いたくないが、それでも、相手がレッドサンズに入れない
程度の腕だからといって、確実に捕らえられるという根拠にはならないのだ。だが――。
「放っておくわけには、いかないしな。とりあえずやってみよう。おあつらえ向きに今日はプ
ロジェクトDの遠征日だ。――秋名山で待ち伏せるぞ」
 池谷の言葉に、健二とイツキは力強く頷いた。

 


   ×××××

 


 三人は、いつもの秋名山頂に深夜一時に集合した。
 走り屋としても少々遅目の時間だが、健二の話では、前回目撃されたのもかなり遅い時間だ
ったらしい。相手もさすがに、走り屋にとってのゴールデンタイムに出没するほどの度胸はな
いのではないかと思われた。その予想が正しければ、深夜もかなり遅くまで張り込むことにな
る。それを前提に、仕事が引けた後仮眠を取り、それから、ということにしたのだ。
 万が一それより前に出没したとしても、今日は土曜。秋名を走っている走り屋の数は多い。
今回は、まだ事の真偽も定かではないため、大事にはせずに、スピードスターズの他のメンバ
ーにもあえて知らせなかった。だが、レッドサンズのステッカーを貼った白のFC、などとい
うものが出没すれば必ず話題に上るだろう。問題は、人気が少なくなってからなのだ。
 結果として、その予想は今の所裏切られていない。
 池谷達がやって来た時にはかなりの数の走り屋が排気音を響かせていたが、見知った顔にそ
れとなく聞いてみても、特に話題になるような車は来ていないという。
 山頂でじっと待っていたところで意味はないし、なにより四月の峠はやはり冷え込む。池谷
達も彼らに混じって、いつものように走りながら標的が現れるのを待つことにした。
 そうやって走り出してしまえば、所詮走るのが好きな彼らのこと、時間の経つのも忘れてし
まう。行き交う車に注意を払うことは怠らなかったが、それでも、いつの間にか走り込むこと
に夢中になっているうちに、かなりの時間が経っていた。

 



「――現れないな、白いFC」
 三人は再び山頂に集まっていた。あたりはしんと静まり返り、彼らの愛車のアイドリングの
音だけが、ささやかに、冷え切った空気を震わせている。
 あれほど大勢いた走り屋たちも、二時をまわる頃には一台、二台と減り始め、三時を過ぎる
頃にはあまり行き交うこともなくなり、四時もだいぶ過ぎたこの時間には、彼ら以外の姿はな
い。
 夏場なら夜通し走る者も珍しくはないが、まだまだ冷え込みの厳しいこの時期では、夜明け
直前の寒さに耐えてまで走り込もうという物好きはいなかったようだ。
 寒さに凍える手を擦り合わせながら、健二が言った。
「今日はこれ以上張ってても無駄なんじゃないか? Dの遠征は二日がかりだから、明日出る
ってことも十分ありえるしな」
 確かにこれ以上待っていても、もうじき夜が明けてしまう。明日も張り込むならば、このあ
たりで見切りをつけて切り上げるべきだろう。
「……そうだな、今日はこの辺にしておこう。明日も同じ時間に集合だ。イツキ、居眠りする
んじゃないぞ」
 眠そうに押し黙っていたイツキにそう声をかけて、池谷はシルビアへと向かう。
「だぁいじょーぶですよぉ」
と慌てたように答えるイツキに笑いで答え、池谷は先頭に立って秋名を下るべく、車をスター
トさせた。

 



 すでに他の車を見かけなくなってから、二、三十分は経っている。かなり下っても、他の車
には、まったく行き会わない。
 そうして五連ヘアピンに差しかかったあたりで、池谷はカーブミラーに対向車のヘッドライ
トが映り込むのに気付いた。対向車が、ハイビームにしていたライトを落とすのがわかり、池
谷もそれに倣う。限界走行を敢行しているバトルの最中ならともかく、通常の夜間走行中なら、
すれ違う相手の視界を奪わないため、そうするのがマナーだ。
 だが池谷は、何か違和感を感じた。ミラーに映りこむヘッドライト。それが接近する速度が、
いやに速いような気がする。あんな速度でヘアピンを曲がりきれるのか。
 不安が、無意識のうちにアクセルを踏む足に伝わって、池谷のシルビアはわずかに速度を落
とした。その、次の瞬間。
 耳をつんざくスキール音とともに、片側一車線のみを使った鮮やかなドリフトを見せて現れ
たのは――白のFC、だった――。

 


 一瞬ですれ違う相手の横腹に「Red Suns」の文字を確認し、考えるより先に池谷の手はサイ
ドブレーキを引いていた。
 やや速度を落としていたとはいえ、出会い頭、といっていい状況で、きっちりと鼻先を山頂
方向に向けてスピンターンを決められたのは、我ながら上出来だったと思う。日頃のドリフト
練習の成果というべきか。
 だが、自分の行動に感心している暇はない。すぐにアクセルを踏み込み、追撃態勢に入る。
前方には、先のコーナーに消えていくFCのテールと、池谷の少し後ろにいた健二のワンエイ
ティがこちらにフロントを向けたまま止まっているのが見える。健二がUターンして追いつく
にはもう少しかかってしまうだろう。
 イツキがさらにずっと後ろにいるはずだが、イツキのハチゴーでは、上りでFCを捕らえる
ことなどまず不可能だ。
 自分が、やるしかない。
 池谷は気合を入れてコーナーをクリアした。
 だが、その先のコーナーに見えたのは、テールライトの赤い残像のみ。
 ――離される。
 理屈ではなく、直感で捉えたスピードの差。それは錯覚などではなく――。
 さらに二つコーナーを抜けたところで、Uターンしようとしていたイツキにパッシングで進
路をあけさせて、やや強引にその脇をすり抜ける。
 その時には、もう完全にFCの姿を見失っていた。

 


 追いつけないと知りつつも、もしかしたら折り返して来る相手に出会えるかもしれないと、
結局山頂まで上ってしまった池谷は、そこで車を止めた。
 だが、山頂にもFCの姿はなく、その向こう、秋名湖へと続くかなり長い直線道路にすらテ
ールライトの一つも見えなかった。その道は、秋名湖だけでなく箕郷や高崎にも通じている。
そちらへ下られてしまったとしたら、追跡は不可能だろう。
 いや、たとえ追跡できたとしても、捕らえられるとは思えなかった。パワーの差が生きる上

りとはいえ、地元の池谷をあっさりと振り切ったその速さ。そしてすれ違ったときに見せた鮮

やかなドリフト。――並みの腕ではない。
 いくらレッドサンズのレベルが高いといっても、あれほどの腕で入ることさえできない、と
いうことがあるだろうか。本当にあれは偽レッドサンズだったのか。
 だが、池谷自身、確かに白いFCの車体にレッドサンズのステッカーを確認しているのだ。
 一人考え込んでいた池谷の隣に、ようやく追いついてきたレビンが止まり、イツキが転がる
ように駆け降りてきた。
「池谷先輩、あのFCは!?」
 勢い込んで尋ねるイツキに、首を横に振りながら「見失った」と答え、逆に聞き返す。
「健二はどうした?」
 FCに遭遇してUターンしたのはかなり下の方だった。当然健二のほうがイツキより先に着
くと思っていたのだが。
 今度はイツキが首をぶんぶんと振って、知りません、と答える間に、当の健二のワンエイテ
ィがやっと現れた。
 だが、車から降りた健二の様子がどうもおかしい。夜明け前の暗がりのため判然としないが、
表情が硬く、さらに心なしか顔色も悪いようだ。
「……どうかしたのか?」
 そう聞かずにはいられなかった池谷に、健二は硬い声で、答えではなく問いを返した。
「見なかったのか?」
 何のことだかわからず、顔を見合わせるだけの池谷とイツキに、健二はたたみかけるように
言った。
「さっきのFCのナンバーだよ」
 何やらただ事ではない雰囲気の健二に気おされて、二人は慌てて答える。
「いや、見てない。なにせコーナーで出会い頭だったしな。レッドサンズのステッカーは確認
したんだが」
「オ、オレもステッカーしか見れませんでした」
 その答えを聞いて健二はうつむいたまま黙り込んでしまう。
 先ほどからの会話から察するに、健二はナンバーを確認したのではないのか?
 そもそも今日自分達がこんな時間まで秋名にいたのは、先ほどの偽レッドサンズと思しき白
いFCを、捕らえるか、正体をつきとめるかするためだった。予想以上に相手の腕が立ち、捕
らえることが難しいとわかった以上、次善の策は、とにかく相手が誰かという手がかりを掴む
こと。そのためには、まずはナンバーを押さえることだろう。
 すでに完全に行方をくらましてしまった相手に、また遭遇できるという保証はない。ナンバ
ーを見た、というなら朗報のはずなのだが、それにしては健二の様子がおかしい。
 いぶかしむ二人をよそに、健二はぼそりと呟いた。
「……13‐137」
「「……え?」」
 思わず同時に聞き返してしまった二人に、健二は、今度ははっきりと言い切った。
「群馬58、よ、13‐137! ……さっきのFCのナンバーだ」

 


 それまで失念していた寒さが急に背筋に感じられる。
 “群馬58・よ・13‐137”
 それは高橋涼介のFCのナンバーではなかったろうか?
「見間違いじゃないんだろうな?」
 思わず強い口調で確認する池谷に、健二はきっぱりと首を横に振った。
「それはない。確かに見た」
 FCが現れたとき、健二はコーナーを抜けた所だった。だが、FCはかなりのスピードで接
近してくる。先にUターンするのは無理と判断した健二は、せめてナンバーは確認しようと、
すぐに車を止めて待ち構えていたのだ。そして確認したナンバーが――。
「群馬58、よ、13‐137。絶対に見間違いなんかじゃない」

 


 白い後期型FC。レッドサンズのステッカー。ナンバーは群馬58・よ・13‐137。
 そろうはずのない断片が次々にそろっていき、予想もしていなかった絵が完成しようとして
いる。欠けている断片はあと一つ。
「健二、乗ってるヤツの顔は見なかったのか?」
 池谷の問いに健二は首を横に振った。
「暗かったからな……。ナンバーに気を取られてたし……」
 健二としても、わざわざ停車して相手のナンバーまで確認したのに、乗り手を確認し損ねた
ことに忸怩たる思いがあるようだ。
 だが、夜の峠は暗い。街中とは違って街灯があるわけではないのだ。車内を確認するのは難
しい。池谷もイツキも、すぐ脇をすれ違いながら、乗り手は確認できなかった。
 しかし、ここまで条件がそろってしまえば、車が高橋涼介のFCであることはもう否定でき
ないだろう。問題は、その乗り手だ。高橋涼介は、今頃はプロジェクトDの監督として栃木に
いるはずなのだ。
 束の間訪れた沈黙を破ったのはイツキだった。
「や、やっぱり最初に健二先輩が言った通り、高橋涼介の幽霊なんですよ!」
 まさか、とは思うのだが、今度ばかりはそれをどう否定したらいいのか、池谷にも見当がつ
かなかった。わかっているのは、こんな所で話していたところで、何がわかるわけでもない、
ということぐらいだ。
「落ち着け、イツキ。とにかく、こうしてても仕方ない。一度帰ってゆっくり休んで、それか
らもう一度集まろう」
 みな、一度仮眠をとってから集まったとはいえ、こんな時間まで走り込んでいたのだ。やは
り疲れが見える。きちんと休んで本来の調子を取り戻せば、もっと納得のいく答えを思いつく
かもしれない。
 だが、興奮しているイツキは、このままおとなしく帰る気にはなれないようで、食い下がっ
てくる。
「幽霊はどうするんです、放っておくんですか!?」
 そう言われても、そもそも出来ることなどありはしない。
「じゃあ、何をどうするっていうんだ?」
 そう聞き返してやれば、やはりイツキは言葉に詰まる。だがそれでも何かせずにはいられな
いようで、必死に考えている。
「え、えぇーと、えーっと、あ、そうだ! お祓いするとか!」
 イツキの言葉に、それまで青い顔をして押し黙っていた健二が、大きく息をついて、あきれ
たように言った。
「今、ここで、相手もいないのにかぁ? だいたいお祓いなんて誰がやるんだよ。少なくとも
俺はお祓いの方法なんて知らねーぞ」
「ほら、塩を撒くとか!」
「塩、持ってるのか? イツキ」
「…………」
「なんなら、路面の凍結防止剤でも撒くか? あれって“塩化”カルシウムだったよな、確か。

今の時期ならまだ、そのへんの路肩探せば置いてあるかもしれないぜ」
 笑ってまぜっかえす健二に対し、イツキはかなり真剣だった。
「効きますか!?」
「……冗談だよ」
 今度こそがっくりと肩を落として脱力している健二に笑いを誘われながら、池谷は先程の提
案をもう一度繰り返した。
「もう気が済んだろ、イツキ。ここにいてもどうしようもないんだよ。今日はもう帰ろうぜ。
明日……いや、もう今日か。今日の昼頃にでも集まって、どうするか考えよう」
 今度はイツキも、躊躇いながらも頷いた。健二も頷きを返し、自分の車へと戻っていく。
 心なしか、空の暗さが薄れてきたような気がする。夜明けまで、もういくらもないはずだっ
た。

 


 今度も先頭を下りながら、池谷はバックミラーに目をやる。すぐ後ろはイツキだ。だいぶ浮
ついていたイツキを心配して、健二が先行させたのだろう。
 ややもすると遅れがちになるイツキに合わせ、ペースを落としてやる。慣れた秋名の峠とは
いえ、暗い峠道では、先行車のテールライトが見えたほうが格段に走りやすいからだ。
 そうしてしばらく走るうちに、イツキが不意に速度を上げた。池谷もそれに合わせて速度を
上げる。
 だが、イツキの腕には、その速度はややオーバーペースのようだ。レビンの挙動が少々あや
しくなっている。
 よく見れば、イツキが速度を上げた、というより、いつの間にかすぐ後ろに迫っていた健二
がイツキを煽るかのように速度を上げたのだとわかる。
 ――何やってるんだ?
 いぶかしむ池谷をよそに、健二がイツキを追い越しにかかる。
 レビンの後ろから現れる、リトラクタブルのライトに、白い車体。ボンネットには吸気孔……。
 ――ワンエイティじゃない。FCだ!
 愕然として見送る池谷の横を、FCは難なく擦り抜ける。またもや、確認できたのはレッド
サンズのステッカーだけ。
「くそっ」
 今度こそ、せめてドライバーだけでも確認しようと池谷はアクセルを踏み込んだ。
 次は右コーナーだ。並んだまま入れれば、イン側のFCは、先に減速せざるを得ない。うま
くすれば、乗っている人間を確認できるかもしれない。
 だが、コーナーが迫っても、苦しいラインにいるはずのFCは、一向に減速しようとはしな
い。
 背筋に冷たいものを感じながら、堪えきれずに池谷のほうが先にブレーキを踏む。
 FCが、ぐい、と前へ遠ざかり、池谷の目にそのナンバーが明らかになる。
 “群馬58・よ・13‐137”
 健二が確認したナンバーは間違いではなかった。
 そしてFCは、インベタのラインを信じ難いスピードのまま駆け抜けて行った――。

 


「池谷先輩っ! 見ましたかーっ!? やっぱり幽霊ですよー! インベタのラインからろく
に減速もしないでコーナークリアするなんて人間業じゃないですよーっ」
 麓まで下り、路肩に車を停めるや否や、イツキが泣きながら訴えてきた。だが、その内容は
あまりにも今更だ。
「馬鹿、イツキ。あれは拓海がよくやってる溝落としだろーが!」
 思わず突っ込みをいれてしまった池谷に、おそるおそる、といった調子で健二が言う。
「でも池谷、あれをやれるヤツが何人いるよ? 高橋涼介は拓海とのバトルで使ってたけど
……」
 確かにそうなのだ。一応あれは人間業の範疇に入るが、実際にあれほど鮮やかに使いこなせ
る人間など、ごく限られている。
「わーっ、やっぱり高橋涼介の幽霊なんだーっ!! 先輩、もういいですよ。偽レッドサンズ
なんかじゃなくて、本物の高橋涼介の幽霊だってわかったんですから。祟られないうちに帰り
ましょうよ〜」
 もうイツキの頭の中では、先程のFCが幽霊だというのは決定事項らしい。かなり本気で泣
きが入っている。
 だが、こうも続け様に信じ難いものを見せられては無理もないのかもしれない。池谷自身、
何をどう判断したらいいのかわからずに、無意識に空を仰いだ。
 いつの間にか、日が昇っていた。あたりはすっかり明るくなっている。
 幽霊だというなら、先程のFCは、朝日を浴びて、その姿を消してしまったのだろうか。
 夜が明けるよりも先に、またもあっさりと振り切られてしまったために、その答えはわから
ないままだ。
 だが、あのFCは幽霊というには存在感があり過ぎた。すれ違ったときには、その振動が空
気を伝わってきたのを確かに感じた。
 では今頃、あのFCはいないはずの主を乗せて、高崎へ向かって走り続けているのだろうか。
 そこまで考えて、池谷はふとあることに気がついた。
 もう一度、すっかり明るくなった空を見上げ、秋名の峠を振り返る。
 いるはずのないFCがいたのに、いるべきはずのものが、いない。
「池谷、やっぱり疲れてると考えがまとまらないよ。今日はもう帰ろうぜ」
 考え込んでいた池谷に、今度は健二がそう切り出した。
 だが、池谷はたった一つ、ある可能性を思いついていた。まさか、とは思うのだが、それを
確認するのはそう難しいことではない。
「待ってくれ。一つ、確認しなきゃならないことが出来た。……ひょっとしたら、幽霊の正体
がわかるかもしれない」
「えぇーっ!?」
「どういうことだよ、池谷」
 突然そんなことを言い出した池谷に、イツキと健二は穏やかではいられない。
 だが、池谷としても、何の確証もないまま自分の疑いを口にするのは抵抗があった。
 言いよどむ池谷に、焦れた健二が先を促す。
「もったいぶらないで教えろよ」
 別にもったいぶるつもりはなかった。ただ、思いついてしまったある可能性を、池谷自身、
あまり信じたくなかったのだ。だから、結局言えたのはこんな言葉だけだった。
「その前に、一つだけ確認したいことがあるんだよ。いいから黙ってついて来い」
 その場で説明をする気のないらしい池谷に不満そうな顔をしながらも、イツキも健二も、車
を発車させる池谷に従うしかなかった。

 


   ×××××

 


 その場所には、ものの数分で到着した。
 すがすがしい朝の光を燦燦と浴びて、白いFCは確かにそこに在った。そのナンバーは紛れ
もなく“群馬58・よ・13‐137”。
 健二は茫然と声もなく立ちつくしている。
「な、なんでですか? 池谷先輩。ど、どうして拓海の家に高橋涼介のFCがあるんですかー
っ!?」
 そう、池谷が二人を引き連れてやってきたのは、藤原とうふ店だった。
 素っ頓狂なイツキの声を聞きながら、池谷は最悪の予想が現実になったことに、内心頭を抱
えていた。だが、ここまで来ておいて確かめもせずに帰るわけにはいかない。
 朝の六時前というのは、他家を訪問するには早過ぎる時間だったが、相手がとうに起きてい
るのはわかっている。池谷は意を決して扉を叩いた。
「藤原さーん、すいませーん。おはようございまーす」
「……なんだぁ、こんな朝っぱらから」
 そんな台詞とともに銜えタバコで現れたのは、拓海の父、藤原文太その人だった。
 眠そうに目を細めているように見えるが、これはいつものこと。文太にとってこの時間は決
して早くはないはずだ。
「すいません。あの、藤原さん、さっき、秋名を走ってませんでしたか?」
「ああ」
 そう返事をしたきり、文太は黙ってしまう。どうやら拓海の無口は父親譲りのようだ。
 池谷はおそるおそる問いを続けた。
「いつもの、配達ですか?」
「ああ」
 今度も一言で答えた文太に、イツキが訝しげな声を上げる。
「え? でも……」
 そんなイツキをあえて無視して池谷はさらに続けた。こうなれば、毒を食らわば皿までだ。
いつもはハチロクが停まっている場所にある、白い車体を指差し、ともすれば喉に詰まりそう
になる声を振り絞って言う。
「あのFCで、ですか?」
「ああ」
「「〜〜〜!?」」
 イツキと健二の言葉にならないうめき声を背後に聞きながら、池谷も気が遠くなりそうなほ
どの眩暈に耐えていた。
 肯定されることを覚悟の上で発した問いとはいえ、出来るものなら否定して欲しかった。
 昨夜から今朝、朝日の昇る時間まで、池谷たちは秋名の峠にいた。なのに毎日夜明け前に豆
腐を秋名湖まで配達しているはずの、藤原とうふ店の車を見た覚えはない。それらしい時間帯
に現れたのは一台だけ――。
 無論、プロジェクトDの遠征中はハチロクはいない。配達を休むわけには行かない以上、当
然別の車で配達をすることになるのだろうが。
 何故、よりにもよって、走り屋達の憧れ、公道のカリスマ、赤城の白い彗星、高橋涼介の愛
車。優美な車体に、マツダが世界に誇るロータリーエンジンを搭載した、ときには戦闘機とさ
え呼ばれるピュアスポーツ車。乗り手の清雅な印象ともあいまって、侵しがたい高貴ささえ漂
わせるクリスタルホワイトのFC3S――それを豆腐の配達に使うのか。
「なんで……」
 池谷の口から漏れたのは、問いかけではなく無意識の呟きだったが、近くにいた文太の耳に
は届いたらしい。
「なんでって言ってもなぁ……。県外遠征にうちの車とバカ息子を貸してくれって挨拶に来た
兄ちゃんが、使ってくれって置いてったんだ」
 その“兄ちゃん”とはやはり、もしかしなくても高橋涼介その人なのだろうか?
「あんまりいかにもな車だし、最初は断ったんだが。ヤワそうなナリに似合わず、けっこう強

引な兄ちゃんでなぁ」
 押し切られちまった、と呟く文太の言葉に、やはりそれは高橋涼介本人だろうと確信する。
 しかし、いかに相手があの高橋涼介であろううと、文太には何がなんでも断り倒して欲しか
った。
 そんな池谷の切実な心の叫びも知らず、文太は相変わらずの淡々とした調子で続けた。
「用がそれだけならもういいか? これから店売り分の豆腐、作らなきゃならないんだ」
「あ…はい。……お邪魔して、すみませんでした」
 最後の気力を振り絞って言った池谷に、軽く頷いて文太は店内へと戻っていった。
 池谷の気力が持ったのはそこまでだった。へたり、と腰から力が抜けて、その場に座り込む。
そのまま、すっかり静かになっていた後ろを力なく振り返れば、来た時のまま、茫然と立ちつ
くしている健二と、いつの間にか地面に膝をついて放心しているイツキの姿が見えた。
 そして再び目を転じれば、そこには、朝日を浴びてまばゆいばかりに輝く、白いFC――。
 池谷は今度こそ激しい眩暈に耐えかねて目を閉じた。
 そして三人はそのまま、早朝散歩のおじいさんが心配して声を掛けて来るまで、意識を飛ば
していたのだった――。

 

 

 


 

 最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。お、怒ってませんよね? 最初にジョークだ、って言ったよ!? 信じてもらえないかもしれませんが、私はこれでも涼介ファンです……。

 これはもともと、YM本誌に兄のFCが全然出てこなかった頃、寂しさのあまり浮かんだネタ(←古い)。藤原親子が「配達は1日おきにかわりばんこ」と言っていたシーンで、運転手がかわりばんこはいいけど、車は? と思った途端、浮かんでしまいました。文太がFCの後部に豆腐入りのケースを積み込む映像が(←想像するな、そんなもの)。自分で想像しておきながら、思わずその場に突っ伏しそうになりました。すみません、バカで。

 次こそは、もっと真面目に兄への愛を語りたいと思いますので(笑)、これに懲りずにお付き合いいただけると嬉しいです。

あずさ

 

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