2 ペンダント

 

 

 「アニキ! これ見てくれよ」

 ゼミ合宿から帰ってくるなり、当然の様に涼介の部屋にやって来た啓介が、そう言って胸元からひっぱりだしたのは、シンプルな細いチェーンに、小さなトップが一つだけ付いたペンダント。

 ずいぶん可愛らしいデザインのそれは、明らかに歳若い女性が好みそうな、もの。

 「ずいぶん可愛らしいな。女の子からのプレゼントか?」

 内心の嵐を押し隠し、無理やり作り上げた平静さで訊いた涼介に、

 「まさか! 自分で買ったんだよ。女からのプレゼントなんて俺が身に着けるわけねぇじゃん。」

 あっけらかんとした、啓介の答え。 

 その答えと一緒に向けられた、曇りのない笑顔に感じたのは、わずかな罪悪感と、圧倒的な幸福感。

 この誰にでも好かれる弟を、独占していることに対しての。

 それにしても。

 「お前の趣味もずいぶん変わったんだな」

 確かに子犬だの子猫だの、可愛らしい小動物は好きだったが、身に付ける物はいわゆる“かっこいい”ものを好んだはずなのだが。

 からかうような笑い含みの涼介に、啓介はあわてて言った。

 「そんなことねぇよ。よく見てよ。これ、星なんだぜ?」

 ぐい、と目の前にかざされたそのペンダントトップは、さっき見せられた時には小さくてよくわからなかったのだが、確かに星、いわゆる“お星様”の形をしていた。色は、白。

 「アニキみたいじゃねぇ?」

 そう言われても、とっさには繋がらなかった。その、可愛らしい“お星様”と、自分の二つ名とは。

 「指輪、だとステアリング握るのに邪魔だしさ。ペンダントならいつでも服の下にしてられるだろ?」

 そこまで言われて、ようやく繋がった。繋がった途端、自分の顔色が変わるのも、わかってしまった――。

 「あれ? アニキ。顔、赤いぜ?」

 うるさい。それ以上しゃべるな啓介。

 


 

なんかやけに兄が可愛くなってるんですけど。

おかしい。こんなはずでは(汗)。

誰だよあんた、って感じですね。……今更か。

お盆休みの旅行で拾ってきたネタ。

 

 

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