1-1 プレゼント

 

 

「啓介、これをやる」

帰宅した途端、アニキがでっかい包みをオレにくれた。

「え、なに、何!? 開けていい?」

嬉々として開けると、中身は床からオレの胸元にとどくぐらいの、でっかいイルカ。

「かわいいな、これ。でもなんでこんなでっかいぬいぐるみオレにくれんの?」

別に今日は記念日とかじゃないし、さすがにオレももうぬいぐるみを手放しで喜ぶような歳でもない。

「それはぬいぐるみじゃない」

「へ?」

あらためて見直す腕の中のイルカは、手触りのいいタオル地でできていて、中身もふかふかだ。

どう見てもぬいぐるみ以外のものには見えない。

「?」

さっぱりわからずに首を傾げるオレに、アニキが淡々と答えをくれた。

「それは抱き枕だ」

「えー、どうせ抱いて寝るならこんなのよりアニキのほうがいいよ、オレ」

つい間髪いれずに、正直に答えてしまったオレに、帰宅してから(いや、ひょっとすると朝からか)ずっと、静かに怒ってたらしいアニキが、とうとうキレた。

「だったらせめてもっと早く起きろ! おまえがオレを抱えたまま、起きもしなけりゃ離しもしないせいで、今朝は危うく遅刻する所だったんだぞ!」

ご、ごめん! アニキ。

 


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