物理のブッチャンストーリー   (ブッチャン誕生)



大学卒業後、東京から戻ってきて物理の教師として初めて教壇に立ったのが、秋田県北部のある高校でした。2年生と3年生が物理・化学・生物の3科目から1科目を選択するというカリキュラムでしたが、3年生の物理選択者はなんと4名(少ないっ!)。新学期早々、その中のひとりがボソッとこう言いました。「物理どご選んですっぱいすたでぇあ」(注 秋田弁で『物理を選んで失敗したなあ』)


その彼の一言で、私は決心しました。どうにかしてその生徒に「物理どご、選んでいがったでぇあ、へんへぇ」(秋田弁で『物理を選んで良かったです、先生!』)と思わせたい!思わせたい!思わせたい!


そうだ!学生時代の塾のアルバイトのときのように、センター試験を代ゼミの前田式をまねて教えてみよう・・・・・
「しぇんしぇ、なあんも、わげわがんねえでぇあ」(秋田弁で『先生、わけがわからないほど難しいです』)しっくりこないようです。じゃあ、重力加速度を測定させて、物理の楽しさを!・・・・・・「こえどごやってなんとならあじ?」(秋田弁で『これやってどうなるの』←それにしても、秋田弁ってすごい言葉・・・)
こんな感じで、思うようにノってきません。


そんなあるとき、授業中に、小学生の頃、友達と4人で漫画の雑誌を作って2年間で25号も発行したんだぞー、という話をしたときに、生徒のひとりがこう言いました。「うそだでぇあ。しぇんしぇ、したば、その漫画見せでけれっす」(『本当ですか、先生。できれば、その漫画を見たいのですが』←やたらきれいな)。

次の日、家の倉庫から小学生の頃作った漫画を探して生徒に見せました。すると、生徒はこう言いました。
  
「うおおお、すんげでゃー。しぇんしぇ、おれがださも授業で漫画やってけれでゃあ。」(『すごいですね、先生。私たちにも授業で物理の漫画を作ってくださいませんか』←だんだん、おかしくなってきたような)。


そのとき、1つのアイディアが生まれました。というよりも、生徒が教えてくれました。
授業を漫画仕立てにしてみよう。キャラクターはどうしよう・・・・・・・「物理のブッチャン」
安直だけどまあ、いいか。


というわけで、物理のブッチャンが登場しました。
(物理のブッチャンは1993年生まれ)

その後、物理の授業は変わりました。板書にはいつもブッチャン。生徒のノートにもいつもブッちゃん。私のあだ名もブッチャン。生徒も前よりは物理の授業が楽しそう・・・・。すっかりブッチャンは市民権を得ることになったのでした。
そうそう、「街で会ったとき、大声でブッチャン!というのはやめなさい!」
「スーパーの駐車場で、私の車に指でブッちゃんの絵を描くのはやめなさい!」・・・・・・
(ホントはうれしいのですが)


楽しく2年間を生徒と一緒になって過ごした後、今度は商業高校へ異動となり、また新しいブッちゃんストーリーが始まるのですた。(秋田弁で『でした』)



ホームページ開設から、14年が過ぎました(あまり更新されていませんが、まあいいか・・・)。この間に勤務先も2校変わり、ブッチャンも忙しい日々を過ごしています。