セント・アンソニー・ヴァリエーション W・H・ヒル作曲

楽曲紹介

冒頭の金管とティンパニーの変拍子の派手な掛け合いから始まり、その後テーマであるセントアンソニーのコラールが静かに流れる。タイトルにあるとおりそのテーマを次々にアレンジしていく曲である。タンギングの早さと木管楽器にある程度の指の回りが要求される。中間部にはアルトサックスにかなり長い歌い込むソロがあるので、高音域が美しく響くアルトがいた方がよいだろう。パーカッションのパートソロもあるので、打楽器にある程度の人数も必要。しかし全体像がつかみやすく、練習のポイントも割とはっきりしているので中級バンドでも十分に取り組めるだろう。

私的感想

割と知られていないことなのですが、これほど全曲とカット版(’85天理バージョン)の印象が違う曲はないでしょう。なんと言ってもカットしただけでなく、全曲版にはないコラールを最後にくっつけてしまったことがその最たるものです。ここまでやると、もはや同じ曲とは思えません。ちなみに全曲やると、ヴァリエーションの間にきちんと元のテーマが奏でられるという構成になっています。 しかし、その最後の編曲(というよりは作曲)があるからこそ、この曲はコンクールの定番になったのだと思います。天理以前にもいくつかの団体が取り上げたのですが、いまいちレパートリーとして定着していませんでした。しかし、天理がやった劇的なフィナーレを迎えるニューバージョンは人々の心を強くとらえました。

その後、全国で爆発的に流行ったのはご存じの通りです。 あの一回の演奏で、この曲の運命は大きく変わりました。それはまた’85の天理高校の演奏が素晴らしかったということも言えるでしょう。 けれども最近の中高生なんかは、あの曲がカット版だってことすら知らない人も多いのでしょうね。