憂慮の真相2

「それは…………いやっ!!!つまり!!!!」

なぜか顔を真っ赤にした青騎士団長は一瞬口籠り、もごもごと、普段の彼からは考えられないようなあいまいな言葉で語尾を濁す。

「…とにかく!! 婦女子をつれて行くのは反対だといっているんです!!」

口下手なマイクロトフにそれ以上の説明を求めるのは早々に諦めた皆の視線は、やれやれといった笑いを口の端に浮かべ一歩進み出た赤騎士団長に集まった。
ちらりと傍らのマイクロトフを見ると、縋るような視線がカミューを見つめている。その赤くなった顔の必死さが可愛らしくて、つい緩みすぎそうになる口元を僅かに引き締め、カミューは盟主の少年に向き合った。

「まず、誤解なきように申し上げておきますが、私達が問題にしているのはレディ達の戦闘能力ではありません」

彼女達の強さについては、同盟軍にきてからの数々の戦闘でしっかりはっきり思い知らされている。
「女性は守るものである」という騎士道精神を叩き込まれて育ったマイクロトフにとって、各々得意とする手法……さらには素手でさえも魔物と対峙する勇壮な彼女たちの存在は相当衝撃的だったらしい。
しかし、戦いで身をたてるものとして、最初の衝撃が過ぎた後はむしろ騎士の戦闘形態とは異なるこれらの戦法に大層感動し、興味を抱くようになったようだ。もちろん、彼にとってやはり彼女達は守るべき存在ということは変わりはないのだが。

「今回の闘いで使用するのは、騎士団でもごく少数の者だけが知る秘密の抜け道です。抜け道といっても、警護の白騎士によく知られている白騎士団長の部屋へ直通の道はまず厳重に警戒されているとみてよいでしょう。
私達が利用するのは、いったん見習い騎士の兵舎となっている塔を通り抜けるルートになります。」

「それに、なんか問題があるっていうのか?」

慎重に順を追って説明していくカミューに、美青年攻撃の(いちおう)リーダーとして親交のある青いバンダナをトレードマークにした青年、フリックが疑問の形で先を促す。
しっかりうなずくことで肯定したカミューは、なおも核心に向けて説明を続けた。

「ロックアックス城は、盟主殿やナナミ殿が通された部分……賓客や騎士団中枢のための謁見の間周辺とそれ以外の部分で、基本構造がまるで異なるのです。見習いが利用するのは城の左右に立ち並ぶ塔の棟なのですが、これらの塔には階段はありません」

「え、え、じゃあどうやって上にのぼるの!?」

興味津々で問いかけてきたのは、いつのまにか近くに集まって聞いている盟主の姉、ナナミ。

「新人が綱、少し序列があがると縄梯子で、従騎士になれば鉄の梯子を使うことがゆるされるようになります。縄の方は、はっきり申し上げて慣れないうちは両手両足を使って登ることになるでしょう」

皆はその光景を脳裏に思い浮かべ、マチルダ騎士団へのイメージを微妙に変化させた。 縄………縄って……………

そしてひと呼吸後、カミューの声はさらりとマイクロトフが言い淀んだ事実を告げた。

「スカートでは中が、丸見えです」

………………………………………………………………………。

………………………………………………………………………………。

「……はい?」

そんな事なのか〜!? 疑問形の返事があがったのは、やむを得ないだろう。

「そんな、ですと!? ビクトール殿!!!」

一番言い辛いことをカミューがいってくれたことに勢いを付けて、マイクロトフは激昂する。

「慣れない装備で実戦にでるのは相当な危険を伴うものだということは、ここにお集まりの皆さんなら十分御存じの筈ではないか! まして馴染まぬ地形で侵入する側ともなれば尚の事っっ!!!」

「な、なるほど」

勢いに納得しかける傭兵の後ろから、しかしのんびりした声が届く。

「…別に見えるくらい気にしないけどねぇ」

(おおっ…)その服装とプロポーション並に大胆な発言をするオウランの言葉に場の人間はどよめいたが、続く言葉に一瞬で凍り付いた。

「どうせ見た奴なんて一瞬後には生きてないんだし」

「…なら、つまりは綱登りに慣れればいいんですよね」

静まり返った広間のなかに、相変わらずにこにこしている少年の声が響き渡った。

「いい方法があるんだけど」

その日から数日、きこりの結び目には慣れないジャージ姿に身を固めた同盟軍のレディ達が列をなし、ゲーム始まって以来の大盛況になったという。

肝心のロックアックス攻防戦がどうなったのか、それはまたべつのお話(になるかもしれない、ならないかもしれない)

■END■

途中から文章のノリがイマイチかも(^^;) もっと勢いにのって書けば良かった〜〜っっ