窓
季節が変わる空気の匂いに激しい淋しさを感じていた
胃が痛い
まだ古くもない傷跡が疼くように痺れた
ふと自分の現実の姿を鏡で見せられたような気がして
ひどく嫌な気持ちになった
四角い箱
僕の一年はここから出なかったような気がする
自分そのものが1か0のデジタル信号と化して
生々しい匂いから隔絶されていたようにすら思える
・・・僕は・・・生きものだったんだ・・・
そんな事までしみじみかみしめていた
今までの全てが映画かテレビの映像だったように思えてならない
そういう一種のデジャヴ
思い描く映像にいつも僕の姿はない
いや
「生きもの」の姿が一切ないのかもしれない
風景だけが切り抜かれたようにそこには存在している
開いた窓から入ってくる光 カーテンを揺らす風
窓の下の道を子供たちが何か騒ぎながら通り過ぎていき
その向こうを電車が走っていく
そしてもう少し視線を右に流せば
・・・・・君がいるはず・・・・・
右を向けないまま
視線を落とした
気が付くと
深いため息をついていた