欧米では一般的ですが、日本ではまだなじみの薄い毛色です。
ブルーといっても、別に真っ青な犬ではありません。
光源や状態によって「青光りする」というのが正しいでしょう。
日本では「薄墨色」と表記される事が多いのですが、
海外にならって「鉄色」の表記の方が有っていると思います
スチール・ブルーとは、青光りする鉄色です。・・・といっても結構光源によって変わるんですよね。
先にも述べましたが、晴天の朝日や日中の太陽光、
白熱灯の下では青光りする鉄色に見えますが、
曇天や夕日の下ではラヴェンダーがかって見えます。
写真であまりきれいなブルーを見ることが出来ないのはこのためだと思います。
実物は燻銀みたいな感じ? 近いところでチャコール・グレーかな?。
良く間違われるのですが、ワイマラナーのコート・カラーとは異なっています。
ワイマラナーはグレー、デーンの場合はブルーです。

このコートカラーはブラックの因子に希釈因子が働くことで出現します。
この希釈因子は両親が共に持っていて双方から子に遺伝される際に発現します。
ブルーの希釈因子DLをもっていない毛色が片親の場合、
仔犬はその片親のもっている毛色の因子か
希釈因子の働いていない元の毛色であるブラックで発現することがほとんどです。
(Dlは劣勢因子ですので、祖先犬に他の毛色の物があればそれが発言する場合が有ります)
デーンのスタンダード(犬種標準)は、
大別してアメリカ・イギリス(ブリティッシュ)・ドイツタイプに分けられ、
ブルーの毛色の許容範囲も少しずつ違っています。

例えばブルーの毛色でも、
   アメリカでは  可能な限り黄色・黒・鼠色を帯びない混じりけのないスチール・ブルー。 
            胸と足先の少量の白は許されますが、望ましくないとされています。
            混じりけのないスチール・ブルーから大きくはずれている物は欠点となります。

   イギリスでは ライト・グレーからディープ・スレートまで
            胸と足先の少量の白は許されますが、望ましくないとされています。

   ドイツでは  フォーン又は黒の可能な限り混じりけのないスチール・ブルー。 
            明るめの目の色は許されます。
            フォーン・ブルー又はブラック・ブルーの毛色、明るすぎる目の色
            又はウォール・アイは欠点となる。 胸と足先の少量の白は許されますが、
            望ましくないとされています。


  胴胎のソリッドとホワイトマークの有る仔犬
白い斑は無い方がベストですが、
有るからと言って駄目なわけでは有りません。 
ショーなどで全く同レベルの犬と競えば点差として出るでしょう。 
無い方が良いに決まっていますが、
胸に拳大、四肢のつま先程度なら気にする程では有りません。
白の全く入らない犬の方が少ないはずです。
鼻やアイラインも黒ではなく、グレーです。 
皮膚は青みがかった白で斑紋は見られません。
けがや湿疹の痕は色素沈着や後から生える毛が色抜けしやすいみたいです。
爪も黒い方が良いとされていますが、
ブラックの犬の爪に比べるとグレーがかって見えます。
毛色では有りませんが、瞳の色もダイリュート因子のために
薄まります。茶色ではなく黄色に近くなります。
色素の強い固体は爪や瞳の色が暗色になります。

                
子犬の頃は成犬の体色よりも明るめ(シルバーっぽい)です。 
老犬に近づくにつれて赤っぽく退色してきます。
老化と共に黒の色素が退色していくのでグレーに近くなっていきます。
口吻や足先など白の差毛が年齢と共に増えてきます。
又鉄分の多い食事がコートカラーに影響を与える場合も有ります。(赤くなりやすい)

湿疹や怪我などで皮膚が損傷した場合、後から白い差毛が生える場合が有ります。
また、コートにフォーンの形質が含まれる場合は
背線にシェード(全体よりも暗色になる)が入る場合が有ります
間違えないでいただきたいのは、
ハルクインからでるブルー・マールとブルーは違うと言うことです。
ブルー・マールは下毛と上毛の色が異なりムラがありますが、
ブルーは単一の毛色で構成されています。(左写真参照)
 
もっている毛色の遺伝因子も異なります。
ブルーのコートはダイリュート因子作用で発現します。
対してブルー・マールはマール因子の作用によるモノです。


                    ブルーマール                        ブルー
 
ブルーの毛色の遺伝子は5色有る(アメリカでの公認毛色は6色ですが遺伝形式は5色です)
デーンの毛色の中で最弱(フォーンも)です。 表現型の強弱は同等と思われます。
他の毛色が混ざれば混ざるほど本来のスチール・ブルーから離れたり、
さし毛や斑を伴いやすくなります。 そしてそれは後の世代に受け継がれて行ってしまいます。
コートの遺伝は冬の重ね着に似ていますし、気まぐれのように発現する場合もあります。

ブリーディング・プランは自分の持っている犬がブルーで有っても、
血統上の毛色の組み合わせがどのようになっているかを良く知ることが重要です。
純系ブルーを目指すなら、
交配を考える場合は相手の血統上の毛色の組み合わせも検討しなければなりません。

本来ブルーから生まれる子供は、ブルーかブラックですが、
近い先祖に他の毛色がいれば他の毛色が出てくる場合もあります。
原則としてブルーはブルー同士、ブルーから出たブラック、
又はブラックから出たブラックを用いた交配を行うよう定義されています。 
最低4世代をこの定義に基づいて繁殖されたものを、
ブルー・ブリード・ブルーと呼びます。
実際には、体型やサイズの改良のため
フォーンやフォーンからのブラックを交配することもあります。
けれど、これは遺伝子プールの大きい欧米だからこそ可能です。
こうして生まれたブルー達は又何世代もかけてブルーと戻し交配され、
再び純粋なブルーに戻される計画繁殖に組み込まれています。 
それでも時々ミスカラーが発現するため、
ブルーのブリーダー達は日本に渡った自分達の繁殖犬が
どのような繁殖に使われるのかとても気にかけて質問してきます。 
彼らは一様に、残念ながら日本で一度混ざってしまったものを元に戻すのは、
非常に困難だといいます。

付け加えておきますが、他の毛色から生まれたブルーは
ブルーではないと言っているわけでは有りません。

その場合は繁殖する側も他の毛色の因子が強いと言うことを説明すべきです。
又、飼われる側もその事を認識しておく必要が有ると思います。


ブルーのコートカラーを発現させる因子は、
ダイリュート因子といわれるメラニン生成阻害して希釈するモノです。
ですから、この毛色の因子をフォーン・ブリンドル等のラインに組み込むのは
避けるべきだと思います。
ブルーにとっては有益な交配でも、フォーン・ブリンドルにとっては得るモノはないでしょう。

ブラックの犬と同じく、ほこりや太陽光に赤く焼けやすいので、
この犬本来の毛色を日々維持していくのは大変です。

コートと皮膚の状態は摂取する脂肪の質に影響を受けやすいところがあると思います。
また、成長期に皮膚の過敏な子が出ることもありまですが
食事管理を見直せば大抵の場合は問題なく過ごすことが出来ますので、
デリケートではあるが、虚弱でも貧弱でもないと言えると思います。
というのも、ダイリュートというのは正常なメラニン細胞の生成を変形させるものですので
皮膚がもつ耐性と関係が無いとは言えないからです。
現在個人的には「ブルー全般」ではなく、弱い固体もいるという風に感じています。

ドーベルマンのように、希釈因子を持つ毛色の犬は
C.M.A(カラーミューテーションアペロシア)が発症する・・・
という心配はデーンではほとんどないようです。
*イギリス・アメリカ・ドイツ・オーストラリアのブリーダー方々にご意見頂き確認いたしました。*