海鳴り  前川清

■海鳴り

海鳴り聞える 旅路の宿
今宵も涙で 枕を濡らす
老いたる父や母 今頃いかに
思いは遥か 故郷の空よ

心を許した 友も消えて
愛した女も 何時しか離れ
風吹く波の上 一羽のカモメ
お前とだけは 話がしたい

明日は夜汽車で 北の街へ
ハマナス咲いてる 名も無い街へ
私が旅先で 死んだら誰か
浜辺に骨を 埋めておくれ