○銀河織女に似たる事


南亜米利加のうちに、「アマソウネン」といふ所あり。此山に女ばかりすみて、一年に一度河を渡りて男に逢うといふ。その河の名を蛮語にては「リヨデラタラタ」といひ、紅毛語にては、「シリフルリヒール」といふ。「シルフル」は銀なり。「リヒール」は河なり」。もろこし人のいひ伝へし銀河織女の事などは、かかる事を聞き伝へたるにや。その山の辺りに、男つねにかよへば、竹槍にてふせぎて入れずといふなれば、阿蘭陀通事今村金兵衛話なりと、蜀山翁申されき。