かたきうちうらみくずのは
敵討裏見葛葉



 文化四年(1807)書肆平林堂より刊。北斎画。
 和泉国信太の森に住む狐が安倍晴明を生んだという信太妻伝説に基づき、さらに勧懲ものの趣向を加えた中編。典拠の多くを浄瑠璃「蘆屋道満大内鑑」に拠っているが、その他の人気戯曲からも翻案して、独自の構成にしている。
 ちなみに馬琴は、自ら「この編は書肆の需に応じて、半月の意思を費やし、只仮初に綴なしたるのみにて…」と巻之一に記しているように、書肆平林庄五郎の要請のために不本意ながらひき受けた仕事らしい。

参考
 「馬琴中編読本集成」 鈴木重三・徳田武編 汲古書院刊


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