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調査報告(2004年5月31日)

“自然派”の敗北
-プレタ・マンジェとSKIPの挫折-

2002年9月25日、東京・日比谷。この日、イギリス生まれのサンドイッチチェーン“プレタ・マンジェ(以下プレタ)”の日本1号店がオープンした。その8日後、“ユニクロ”のファーストリテイリングが、子会社を通じて食品販売事業“SKIP”をスタートさせた。それから1年半。プレタは3月末ですべての店舗を閉鎖、“SKIP”も4月末に営業を終了した。

強い“食”へのこだわり
 プレタを展開していたのは、日本マクドナルドホールディングスとプレタ社の合弁会社、日本プレタ・マンジェである。2001年、米国・マクドナルド本社はプレタ社に対し資本参加、プレタの海外展開を狙っていた。それに呼応してプレタ社は日本マクドナルドに国内展開を持ちかけ、翌年6月には日本プレタを設立した。一方のユニクロも’01年10月に準備部署を立ち上げ、翌年1月に正式参入を発表、同年9月にエフアール・フーズを設立した。

プレタとSKIPに共通している事項はいくつかある。まず、低価格で急成長してきた企業が高価格帯の商品に挑むという点だ。マクドナルドは一大旋風を巻き起こした65円ハンバーガーを打ち切って価格戦略の迷走が始まっていた。ユニクロも中国生産の衣類を低価格で販売しているユニクロもこの時期、売上が大きく落ち込み、それぞれ多角化を模索していた。また、マクドナルドには藤田氏、ユニクロには柳井氏というカリスマ的存在の経営者が事業を引っ張り、他にもスタートと撤退の時期が重なったという点やっていたというところも共通している。

しかし、最も共通しているのは、人間の生活において欠く事のできない“食”において、強烈なこだわりを持っていたのである。実際に“Passionate about food=食材へのこだわり”をスローガンにしていたプレタは合成添加物を一切使わず、パンに使う小麦粉もオーガニック素材を導入。さらに野菜を豊富に使って栄養バランスにも配慮した。SKIPは、野菜やお米などを低農薬有機栽培で丁寧に育て、独自の基準を設けて栽培履歴を公開するなどしていた。もちろん、手間隙かけているので値段は普通より高くなるが、中身はそれに十分見合うものだった。SKIPの商品は食べた事がないので何とも言えないが、少なくともプレタのサンドイッチはコンビニのそれよりボリュームがあり満足いくものだった。

時代に翻弄されて
しかし、最初は順風満帆に見えたそれぞれの取り組みは、程なく壁にぶつかった。プレタは食材調達の問題などで夏の1号店オープンがずれ込み、SKIPも販売開始直後に人気商品が十分確保できないなど、当初から前途多難だった。2004年までに80店舗展開を目ざしていたプレタは、ラーメン・うどん・牛丼など低価格を売りに増殖した他のチェーン店に客を奪われた。一方のSKIPも当初「スタートから2、3年で黒字転換を目指す」としていたものの、2003年は目標の16億円に対し6億500万円にとどまった。結局、プレタもSKIPも志半ばで撤退を余儀なくされてしまったのである。

ニーズとイメージのギャップ
プレタもSKIPも、顧客ニーズやイメージ戦略への対応が不十分だった一面は否定できない。それを僕なりに考えてみた。まずはプレタ。総料理長に日本人を起用して日本オリジナルのメニューを開発し、主にビジネス街に出店していたが、ほとんどの店が夜の7時には閉店してしまう。例えば、仕事が遅くなりそうで、軽く夕ご飯を食べておきたいとする。時間は夜7時、普通のおにぎりじゃなくて、今日はプレタのサンドイッチにしよう…。と思って店に行ってみたら“本日は閉店しました”になっていた。なーんだ、じゃあ近くの食堂にしよう…という感じで客がプレタから離れていってしまった可能性も否定できない。実際、東京・虎ノ門の銀行跡地に、プレタが吉野家やコンビニと並んで店を出していた。吉野家とコンビニは24時間営業である。プレタも24時間とはいかなくても夜11時ぐらいまで店を空けていれば、夜食の需要なども掘り起こせたのではないか。

SKIPについては宅配やインターネット販売に加え、デパートの地下食品売場などでも販売していた。デパ地下への出店には異論も出たが、ユニクロでも同様のケースがあり、SKIPがデパ地下に店を出そうと考えるのも自然な流れといえる。ただ、立ち上げ当初、ユニクロの店舗駐車場でトラックとテントを使い商品を売った事があった。売り方に違いがないとはいえ、コンセプトが曖昧だったと印象はい否めないかもしれない。また、野菜は気象条件などによって収穫量が大きく左右されてしまう。2003年は10年ぶりの冷夏で、ただでさえ手間がかかり、売上が予測を下回る状況では採算が合わないというのも想像できる。これが衣類との大きな違いでもある。

それ以上に大きかったのが本業のマクドナルドまたはユニクロからくるイメージとのギャップだ。先にも書いたが、低価格に加えて、店舗も同業他社に比べて多く、いつでも気軽に買うことができる。実際、SKIPでも人気だったのは一回あたりの金額の少ないコースだった。加えてプレタもSKIPも、スタート当初から「マクドナルドの新業態」とか「ユニクロから生まれた」という形容詞があちこちでついていた。それゆえ、マクドナルドやユニクロと同じものを期待していた一般の消費者には戸惑いが大きかったかもしれない。「手間とおいしさを考えればむしろ割安だ」という声もあったが、少数意見だった。

出てくるのが早すぎたのか
今、マクドナルドもユニクロも、本業へと回帰しようとしている。マクドナルドでは創業者・藤田氏の他界で一つの時代が終わり、もうひとつの“マック”ことマッキントッシュで知られるアップルコンピュータ日本法人元社長の原田永幸氏の下で大きく変わりつつある。一方、ユニクロでは女性用下着や水着を新たに投入し、ほかの会社との提携を進めている。“自然派”を旗印に他にない魅力と熱い情熱で非常識に挑み、そして破れたプレタとSKIP。おりしも輸入野菜の農薬残留問題やBSE、鳥インフルエンザで“食の安全”にかつてない注目が集まる時代だ。こうした商品に対する潜在的ニーズはあっただけに、今回の相次ぐ撤退は残念でならない。(肩書きはすべて当時)

参考文献リンク:
http://01.members.goo.ne.jp/www/goo/a/r/acrokk/needs.html
http://www.bakerstimes.co.jp/shop/hito/puretamange.html
http://www.shibukei.com/special/2002-10-18.htm
http://ps.allabout.co.jp/children/ikujinow/closeup/CU20031018/
http://www.eurohope.com/kio/archives/000225.html
http://eco.goo.ne.jp/magazine/files/interview/key_jul03-1.html

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