落ちる暁（久保×神谷）

7000COUNT GETTER
Mariko.Shirogane-sama Request Novel.

落ちる暁

紫緒　匡

「あ、そろそろ帰らなきゃっ」

「あれ？いっつの間にこんな時間になってたんだろ。じゃあなっ！！また明日！！」

「じゃあなー！」

夕方の「七つの子」の音楽が流れると、いつも慌てて散り散りに自分の家に帰っていく仲間たち。

オレンジ色の空。

鳴いているカラス。

落ちていく太陽。

暗くなっていく視界。

「おい、お前も帰らないのかよ」

「う～ん、なんだかまだやってたい！あともうちょっと！」

「しょうがねーなー。じゃあ、暗くなったらやめようぜ」

「ああ！」

いつも残っているのは俺と久保だけ。

家に帰って、親にこっぴどく叱られるのが分かっていてもやめられずに、ボールをどこまでも追って。

走って。

走って。

追っているボールが闇に隠れて見えなくなったら、今度は隣りを走るお互いを見た。

荒い息遣い。

噴き出る汗。

俺を見つめる視線。

俺たちは無言で見詰め合ってるうちに、お互いの足が絡んで派手に思いっきりすっ転ぶ。

「いたたたあ・・・」

「大丈夫！！神谷！！！」

膝を擦りむいて蹲る俺に、久保が慌てて飛び起きた。

「だいじょうぶ・・・久保、お前、顔！」

「え？」

「あーあ・・・」

久保の頬が擦りむいて血が出てしまっていた。

女の子が見たら悲鳴あげるだろうなぁ。

どうやれば顔面から転べるんだか。

「大丈夫だよ、舐めてれば治る」

「舐める？どうやって」

「・・・・・・あ、そういえばそうだねえ」

ははは・・・とのほほんとした顔で笑う久保に、俺はあきれて。

「しゃーねーなー」

「え・・・」

久保のキズついた頬に、俺はペロリと舌を這わせた。

ちょっとジャリッとしてる。

バイキンが入っちゃいけないから、俺は丹念に舐めて傷口を綺麗に消毒する。

「ちょ、ちょっと、神谷っ！」

「ん？」

「も、もういいよっ！！」

「何照れてんだよ」

「そ・・・そりゃ・・・」

俺は言うとおりやめてやって。

「もう治ったろ？」

「・・・・・・」

ニヤニヤ笑っていたら、久保が口をへの字に曲げていきなり身体を屈ませて俺の膝を派手に舐め始めた。

「いっ・・・いてってええええっ！！！久保っ！！もうちょっと優しくっ！！」

「これぐらい我慢しろよ！」

「～～～っ！！」

まるで仕返しだと言わんばかりに乱暴に舐められて、俺は目に涙が滲むぐらい痛かった。

ああ、でも。

なんで久保ならいいんだろ。

他の奴になんて絶対にこんなことしないし、させるわけがないのに。

なんで久保なら全部いいと思ってしまうんだろ。

何もすることがないなーと退屈を持て余していた俺たちのところに、綺麗なサッカーボールを持って現れた見知らぬ少年。

『ねえ、サッカーやらない？』

俺たちは誰もサッカーのルールも知らなかった。

全部久保が教えてくれて、一生懸命練習して、親にねだって俺もサッカーボールを買って貰って、家に帰っても庭で特訓までして。

楽しかった。

ただの子供の遊びしか知らない、子供の俺たちが、いきなり凄い奴と出会って。

急に見知らぬ世界に誘い込まれたような気がして。

毎日学校が終わるとすっ飛んで行って空き地に集まって日が暮れるまでサッカーをした。

サッカーが大好き。

それは素直に言える。

けど、本当は･･･････。

「久保、中学になったら一緒にサッカーできるな！」

「うん！サッカー以外でもずっとずっと一緒にいられるよ」

学区の分かれ目に住んでて、小学校は別々の俺たち。

来年の春までお預けだけれど。

久保と一緒にと考えるだけで、俺は嬉しくて。

「久保、これからもずっと一緒だよな！」

「ああ、どこまでも一緒だよ」

にっこりと久保が笑って頷く。

「「げんまんっ」」

照れながら、俺たちは指きりして。

「・・・・あっ・・・やべっ、何時だろ、今っ！！」

「え・・・あ、真っ暗だねえ」

「またオヤジに叱られる！！」

「え？叱られてたの？」

「・・・・・・ちょっとな」

軽～く鉄拳の一発や二発は覚悟しとかなきゃな。

「行こう！」

俺は立ち上がって、久保に手を差し出す。

「うん」

久保はしっかり俺の手を握って、立ち上がると、そのままその手を掴んで離さなかった。

「久保？」

「ギリギリまで・・・いいでしょ？」

「・・・・・・ああ」

俺も握り返して、そして誰も見てないからって俺たちは手を繋ぎながら走って。

二人の分かれ道に辿り着くまでずっとそうしてた。

「じゃ、また明日な」

「うん、バイバイ」

「バイバイ・・・」

俺たちは名残惜しげに掴んでいた手を離すと、別方向のそれぞれの家路につく。

振り返ると、また別れがたくなるから絶対に振り返らなかった。

そんな毎日の繰り返し。

また明日も会えるのに、いつも俺たちは別れるのが怖かった。

また明日。

また明日。

そんな明日がいつまであるのかなんて、考えなくてもいいことまで考えて。

どうしてこんなに別れるのが怖いんだろう。

落ちた日がまた昇れば明日は来るのに。

なぜだったんだろう。

あの頃の俺たちは。

ＥＮＤ
2002/05/11

まりこさーん、まりこさーん、まりこさーーんっ！！！！！
しょ・・・ショタじゃねぇじゃんっ！！！！！（爆）でごめんちゃいっ！！！

う、器だけショタで中身アダルトな子供たちってことでひとつ（涙）
設定。「子供の頃から一緒にサッカーをしてた久保と神谷のショタ時代。（しかし結末は一緒）」

もうすでにお気づきの久保神らばーの皆様もいらっさるかと思われますが、久保と神谷には「オレンジ」がとても似合うと私は常々思っておるのです。
夕焼け色。部室もそうだし、グランドもそうだし、子供時代の空き地とか。二人はこの昼と夜の間の時間というのがことさら微妙～に表と裏がない混ぜになって、チラっとしたエロリズムが（・・・なにを力説してるんだ）

というわけで、よくこういった日暮れ時を久保神でやるんですよねー。（また雪とは違うムード）

しかし、久保より神谷のほうが黒い気が・・・一瞬・・・「神谷×久保」？と疑いましたが・・・ま、まりこさんに捧げるからいっかぁっｖｖｖと。
謹んで進呈致しますです。へへぇい・・・(平伏）

★紫緒さん、ありがとうございました！

もう脳内は煩悩で溢れています。黒い神谷、ああ目眩がｖｖｖ
傷に触れる舌先の感触を想像してしまうと、思わず赤面してしまいます～。
お子様なときからこの調子だと、将来がとても楽しみですわｖ

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　