初雪と共に、ドイツから手紙が届いた。
差出人はヴィリー・ラインハルト。
厚手の封筒の上に、見慣れたかっちりした字が、少し右肩上がりで並んでいる。
封を切ると、ポインセチアの柄が鮮やかな、クリスマスカードが現れた。
カードを開くと、お世辞にもうまいとは言えないカタカナとひらがなで『メリークリスマスゆうご』と書いてある。
まるで幼稚園児が必死に書いたみたいだ。
きっと試合中に集中している時みたいな真面目な顔で、一生懸命に書いたんだろう。
そんな想像をしていると、嬉しいと同時に無性に会いたくなった。
いきなり訪ねて行ったら、驚いた後に満面に笑を浮かべ、抱きついてくるんだろう。
一緒に過ごした短い期間の、金色の思い出が蘇る。
ヴィリーの居るドイツは遠すぎる。会いたくなったからと、気軽に行ける場所じゃない。
物理的な距離は気持の距離とは関係ないと解っていても、それが寂しい。
ヴィリーを抱きしめる代りにカードを胸に押し当てると、そこから何とも言えないじんわりとした温かさが広がって行く。
なあヴィリー。お前は今この時、遠い国で何をしている?
カードを汚さないように封筒に戻そうとして、カードの隅・ポインセチアの柄に紛らわせるかのように、小さな文字が書き込まれているのに気が付いた。
『この花の、花ことばをしっているか?』
気付かれるのを恐れるかのようにひっそりと書き込まれた文字の上を、熱を探るように指先でそっとなぞってみる。
ポインセチアの花言葉なんて知らない。
だけど何が言いたいのかは判ったと思う。
きっとそれは、オレたちの気持ちを表している言葉なんだろう。
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2002/12/10(Tue) 19:28:44 |
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