あいつはライバル。 友達だけど、それ以前に最強のライバル。
田仲を初めて知ったのは、実は小学校の時だった。
数々の大会で最優秀選手賞に選ばれるあいつは、内緒だけどオレの中では憧れの対象だった。
どう見たって、オレとそんなに変らない体格。
オレより幼い顔付きとあいまって、そんなに凄い選手だなんて思えなかった。
だけど違うんだ。
スタンドから見る試合中のあいつは本当に凄くて、そのプレイの一つ一つに魅せられ目が離せなくなってしまう。
先の見えない魅力。次の瞬間、どんな風に成長するのか予想が出来ない期待感。
だけどそれ以上に――表情に魅せられた。
クルクルと変る表情。 真剣だったり、嬉しそうだったり、感激していたり。
瞬間瞬間に、感じるままの感情を隠そうともしない素直な心に惹かれ、「あんな風にサッカーがしたい」と真剣に思った。
中学時代にがんばれたのも、いつか田仲と対戦できるかもと言う打算があった、予選地区が違うから、直接対決が出来るのは県予選本戦にならないと無理だったからだ。
そして中三の夏。
対決を夢見て育て上げたチームも順調に実力を付けた。
一次予選を勝ち抜いて、ようやく本戦に出られる、田仲と試合が出来ると小躍りしている時に――
届いたのは、掛川西中の出場停止処分のニュースだった。
サッカー部員による不祥事の為の、1年間全試合停止処分。
馬鹿な部員の軽率な犯罪によって台無しにされた事実に、オレはすっかり打ちのめされた。
目の前が暗くなった。 陳腐な表現だけど、本当にそんな気分だった。
悲しかった。 寂しかった。
田仲の気持ちを想像すると、自分のことのように悔しかった。
中学時代の最後のチャンスを、参加することすら否定された処分が、あの生き生きとサッカーをする人間にどんなダメージを与えただろう!
出来るなら抱き締めて、慰めてあげたかった。
そんな考えが自然に浮かんだとき――
気付いてしまった。
オレは、恋をしていたんだ。
そして今でも恋は続いている。
浜松で会えたとき、まだサッカーをしていたと知って踊り出したいぐらいに嬉しかった。 実際にもし二人きりだったら、抱き締めていたかも知れない。
今は最強のライバル。 だけど、手を伸せば触れられるだけの距離にいる。
先はまだ解らないけど
きっと、オレの恋は終わらないだろう。
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2002/05/19(Sun) 00:54:11 |
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