6ヶ月




「本当に、入学したんだなぁ」
 入学式を終えた帰り道、校門を振り返って神谷が呟いた。
 語る横顔が、戸惑いを含んだ微笑みに縁取られている。
 夢見るような口調が、感慨の深さを現していた。
 そんな神谷の横顔と校門を見比べて、久保はうっとりと微笑み言葉を継いだ。
「これから、始まるんだよな」
 新しい学校。
 これから二人で作り上げていく、理想のサッカーチーム。
 全てはここから、今日始まる。




 思えば二人が出会って、まだ半年しか経っていない。
 たった半年
 でも、永遠に近い半年。




 一人になったばかりの久保と
 一人にならなければならなかった神谷。
 お互いの孤独の中に、まるでパンドラの箱に残った希望のように「夢」を見つけた時、
 一人では無くなった。




 共に夢を追える相手を見つけた幸せが、二人から『孤独』という言葉を消し去った。
 たった半年前
 孤独だった者はもう居ない。




「どこまで行けるかな」
「どこまでだって行けるさ」
「お前に言われると、そんな気になってくるな」
「お前が居るから、言えるんだよ」
 自分たちの言っていることに、可笑しくなって笑う。
 肩を組んで、間近で顔を見合わせて笑う。
 こんな一瞬が嬉しい。





 半年前、二人は孤独だった。





 半年後、孤独だった者は、もうどこにも居ない。








                                終わり






 Web開設半年記念。
 半年前、まだ出会えていなかった貴女に捧げます。