
☆ ネタばれ… と、感想
物語の登場人物は、マンリーコと母親ジプシーのアズチューナ、女官のレオノーラ、ルーナ伯爵との人間模様。
マンリーコはレオノーラへの想いが強く、レオノーラ自身もマンリーコへの想いは、ジプシーという生れに囚われない
程に強く、それに反してルーナ伯爵はレオノーラへの一途な想いで、ジプシーは反キリスト教徒であると、またそれは
人間じゃないという扱いの酷さ。
伯爵自身にも20年前の出来事を家臣達に伝えた。その出来事というのは、伯爵の弟は体が弱く、ある占い師に見ても
らったがおもわしくなくて弟に呪いを掛けた結果だろうと。その人はジプシー女だった事で罰として、火炙りの刑に処した。
その燃え盛る火の中、駆け寄る1人の女性が母親が刑に処された事を嘆き、奪ってきた伯爵の弟である赤子を抱いて、
火の中へ投げ捨てた。
その後、伯爵の両親は病んで順番に無くなり、その出来事も伝説としてジプシー女の”アズチューナ”という名前だけを
残して処刑場を去った、と言い伝えられた。
伯爵には、ジプシーへの恨みがこの出来事から始まったのかもしれない。
赤子の弟から両親まで身近な人物を亡くしてしまったのだから、本当の愛情というものを理解出来ず、レオノーラへの恋心
さえ一途な想いで押し通し、他人との接し方でさえもジプシーという事で復讐にまで発展する恨みが強く、冷酷な人物になった
のだろうと思ったわ。
特に、ジプシー達へレオノーラの存在を聞き出す場面で、「白状しないなら、殺せ!」って言葉を発した時の表情なんて、顔色
一つ変化させず(怯まなかった…)。
レオノーラは、幼心に魔女扱いされた人達への火炙りの刑を記憶していて、見物に取り囲む人達は誰一人躊躇する様子も
無く見ているだけだった事が、何故人を見世物にしてまで酷い仕打ちをするのか?理解できなかったって思い返す場面も。
終盤の牢獄にいる捕らわれたマンリーコを助け出す為に、ルーナ伯爵との約束を交わし、脱出の為のカギを持って牢獄で
マンリーコと再会。 彼に宮殿の外へ繋がる道を教える。でも伯爵との約束はマンリーコを助ける為に取り交わしただけで
あって、伯爵に知られる事に恐れ、毒を飲んだ。それは、マンリーコへの愛を守る為…。
伯爵とは対照的な人物。
マンリーコは、ジプシー出身の吟遊詩人とレオノーラに紹介してた。
アズチューナにルーナ伯爵と女官のレオノーラと出会った事を知らせた。
母親から、20年前にアズチューナの母親が占い師として宮殿に行くと、ジプシーだったという事で人間の扱いどころか
火炙りの刑にされた事を告白。その時の恨みは大きく、奪ってきた赤子(伯爵の弟)を火の中へ投げ込んだと聞かされた。
しかし、本当の復讐は終わってなかった。 実際に投げ込んだ子は、奪ってきた赤子では無くて、自分の子供だった事に
気付くが、時は遅しで既に骨と化していた。
マンリーコは自分の存在が何か?またその子は僕の兄か?って問いただすのに、アズチューナは「あなたは私の子」って
実際の事は知らせないまま。
そして、アズチューナは20年前の復讐をマンリーコに託すの。
牢獄の場面では、マンリーコが火炙りの刑が決まった母親アズチューナを救いたいという気持が強く、怯える母親に「私は
好きか?」って親子の愛を確かめるの。その返事は「好きだよ」って。だったら、僕の声を聞いてくれ、って子守唄を歌う。
とても母親への愛情、優しさが溢れているし、母親が安心感から心和み眠りにつく姿は、まるで子供になってしまった様に。
レオノーラに再会したが、その幸せも束の間でルーナ伯爵に察して見つかって、マンリーコが火炙りの刑にされてしまう。
処刑台に上がり、毒を仰いだ為にこの世を去ってしまったレオノーラへ謝るマンリーコ。 その頃、眠りから覚めたアズ
チューナが駆け寄るが、彼は火の中。 マンリーコは「全てに許しを〜」と訴えるのに、誰一人助けるものは居ない。
そして、アズチューナはルーナ伯爵に事実を打ち明ける「マンリーコはあなたの弟だ!」って。
驚きの中、更にアズチューナは「母さん、復讐は遂げました!」って言うの。
マンリーコは、火の中で事実を打ち明けられた時、きっと落胆したんだろうな、って思うわ。
真実を知っていたのは母親として育ててくれたアズチューナ一人だけだったのだから。
母親に存在について問いただしていたのに、はぐらかされた感じで復讐する事が第一って聞かされていたし。
復讐心に勝るものは無かったのだろうって思う。でも処刑の際に、駆け寄った時は自分の子として育てた20年は大切な
期間だったろうし、親子愛もあったんだろう、って。最後の言葉を聞くと、マンリーコへの愛情をも犠牲にして、彼女の母親と
実子を亡くした事への恨みを晴らしたかったのか。
すると、マンリーコは全てに救われなかったのか?では無くて、レオノーラの愛情があったしジプシー仲間との友情もあった
訳で、全てに孤独な人生だったとは思えない。 運命のいたずらで人生の結末を迎えた事は悲劇だったな、って思う。
また、仲間達を大切にして、自分自身の存在について疑問を持ちながらも母親への親子愛、レオノーラへの愛情もあった
純粋な心を持った人物だった事が、とても心痛みました。