ス サ ノ オ
-創国の魁-

大地の誕生に関った自然の神々の物語「古事記」で、とても興味深い作品でした。
以前に”剣幸さん”が出演された公演でもあって、数年前に遡りますが、当時
他の劇団と参加され、京都の”南座”で観た作品でした。
その頃の感想といえば、劇場にしては歌舞伎向きの為か、歌ありダンスありにしては
狭すぎて、思うように動きがとれないんじゃないかと。何だか暗いイメージがありました。

今回、宝塚での作品とあって、どんな作品に仕上がるのかとても楽しみでした。
座席の方も14列目のセンター席とあって、見ごたえ充分でしたよ。
客席降りもあったので、華やかさに圧倒されて夢の様でした。

出演者一部紹介します。(敬省略)

スサノオ 朝海ひかる
イナダヒメ 舞風 りら
アマテラスオオミカミ
(スサノオの姉)
初風 緑(専科)
アオセトナ 水 夏希(宙組)
アシナヅチ(イナダヒメの父) 未来優希
月読(スサノオの兄) 壮 一帆
アメノウズメ 音月 桂




舞台の展開はあるものの、全体の背景はあまり変わらず、闇の世界となった大和の国を象徴されて
いたように思えます。一見、昨年の星組公演「王家に捧ぐ歌」みたいな感じというのでしょうか。
でも舞台は大和の国という事で、太鼓の演奏も含まれて、大人数の民が、どの場面にも
登場していて壮大な雰囲気。衣装の方は、全員白に統一されてました。
途中で、大和の民による客席降りが2回あり、あまりにも間近だったので歌の拍子に踊らされて、
夢見心地で、「え〜、うそー?」って感じでした。

物語は…
アマテラスの考えに反感を持ったスサノオが、暴力を振った事で、大和の国に太陽の光を遮ると
伝え、闇の世界となって10年が過ぎていた。その原因がスサノオ自身にある事に打ちひしがれて
いた。そんな時、毎年森に棲むヤマタノオロチにアシナヅチの娘を生贄に捧げていたが、誰一人
娘を捧げようとする民が居なくて、1人となった自分の娘(イナダヒメ)を生贄にする事になる。

スサノオは傷を負ったアシナヅチを助けたが、この剣でヤマタノオロチを倒してくれと、言い残して
アシナヅチは息絶えてしまう。 結果、ヤマタノオロチを剣で倒す事が出来るのだが、大和の民と
の暮らしや、自己の葛藤に苦しむ事になる。

以降、ずっと続く話だけれど、この辺で留めておこうっと(暫くの間…)


☆感動した場面

傷を負って息絶え絶えに話すアシナヅチの姿は、とても迫真の演技であって、ずっと
オペラグラスで釘付け状態でした。配役をしっかり見ていなかった事もあって、
役柄も高齢者だから、後になってビックリ。ハマコさん(未来さん)だったとは!
本当に涙を流してらしたし、まーちゃん(舞風さん)も「死なないでー!!」って大粒の涙を
流してらしたんですよ。”アシナヅチ”の発する言葉にも、ぐっと胸に来て、目に涙が
溜まっちゃいました。

ヤマタノオロチを倒す場面では、イナダヒメがオロチに捕われそうになって、
瀕死の状態で「スサノオ〜!!」って助けを求める所でしょうか。
剣を振るうスサノオの姿が凄かったです。

そして、何より私の今までの印象を裏切ってくれたのが、水さんでした。
今までそれ程、気にとめて無かったの。(ファンの方ごめんなさい)
前回の宙組公演では、ランブルーズを演じていらっしゃいましたね。
今回は、森の統治者”アオセトナ”でした。
役柄が謎を秘めた黒い役というのでしょうか、良い意味でとても
似合っているんですよ。今回の鬘も素敵でした。早替わりもあるので
これからの方は見逃さないで。

最終章では、スサノオが戦いを続けて、勝っても負けても虚しさが残るという葛藤に
悩み大和の民からも批判を浴びる。「どうすれば良いんだ〜!」って叫ぶ場面が
ありました。現実社会の中での人間の生き様等について考えさせられる作品
だと思いました。

月読の壮さんは、がむしゃらに生きるスサノオに少しでも現実を諭そうとする力に
なりたいという役柄でしょうか。台詞がそれ程多くは無かったのですが、立ち姿が
とても綺麗でしたよ。

タカラヅカ・グローリー!

この作品の原案が小林公平先生との事、今回は岡田先生によるアレンジとなっているとか。
岡田先生といえば、シトラスの風の”明日へのエナジー”や昨年のテンプテーションが真っ先に
思い浮かんじゃいます。とても印象深くって、特に群舞に関しては気に入ってます。

最初の方は、華やかなパステルカラーの衣装をまとった貴族?のカップルによるダンスが
あって、全員によるコーラスとなっていくの。群舞ありでとても迫力があって、岡田先生の
作品だ〜って感じでしょうか(笑)お芝居でのモノトーンな雰囲気から、こちらは華やかなショー
と相対的な印象です。

また、ダンスの方もいいメンバーが揃ってましたよ。同じ場面に1列にコムちゃん(朝海さん)、
ハマコさん(未来さん)、桂ちゃん(音月さん)、そして専科のガイチさん(初風さん)と宙組の水さんが
踊る姿は、迫力そのものって感じ。

ここでも、私の印象を良い意味で、裏切ってくれたのが、ハマコさん。
最初、こんなにも大きな声量で伸びる歌声は誰かしら?って思ったのです。
初舞台生の頃(10年は遡るけど…)、”おとめ”の掲載順を見て、何かしら才能が優れている方
なんだわ〜、位だったの。(スミマセン)

最後にはやっぱり欠かせない大階段での黒燕尾姿での群舞ですね。
とてもカッコ良かったですよ。