※ 感 想 (ネタばれ)

     今回の作品では、ファントムの真相が全て第2部に秘められています。
     特に、ファントムと前支配人のキャリエールとの関係。 キャリエールがファントムの生い立ちを知っている
     唯一の人物であり、仮面に隠されたエリックの本当の姿を知っていたが、エリックにその事を話したのは、
     生死に関る窮地に陥った頃。
     エリックは早くに母親を失った為、幼き頃に愛してくれた母親の存在を求め続けてきたが、彼の存在を
     認めてくれる場所は無く、持って生まれた歌の才能(母親から受け継いだ)を披露する場所さえも無かった。
     その結果、彼は従者を雇い、身の回りの世話をしてもらいながら好きな場所オペラ座の地下で生活をしていた。

     歌の才能があると認められて、フィリップ伯爵に連れてこられたクリスティーヌの歌声を聞いたエリックは
     歌を教えたい、このオペラ座で歌うべきだ、と申し出る。
     この時、クリスティーヌがファントムの姿を見ようと暗闇の中、近づこうとするが、「そのまま、動かないで!」
     と優しく話すファントムがとても切なく感じました。
     後にも先にも、この時と歌のレッスンをする場面、ビストロで歌ったクリスティーヌが周りの団員達に認めて
     もらった成功の場面が、エリックにとってこれ程までに幸せだった時は無かったから。
     2部の内容を知ってから、この場面を観るとまた別の感動があります。

     ファントムはいつもクリスティーヌを見守っているの。ビストロで1人歌うクリスティーヌの歌声は、自信が無くて
     弱々しい感じだったけれど、ファントムが後で見守りながら歌う歌声を聞いて、力強く歌う事が出来たクリスティーヌ。
     最初は、彼もクリスティーヌの歌声を心配しながら様子を伺っていたけどね。
     団員達が彼女の歌声を誉める中、その一部始終を知ったファントムはとても嬉しそうな笑顔をニッコリ。
     歌のレッスンをしてあげて、本当に良かったね。という気持で一杯でした。

     オペラの上演が決まり、大役でもある主役のタイターニアをクリスティーヌは任されたが、歌や美貌に嫉妬心を抱いて
     いたカルロッタの企みでもあった。カルロッタは毒薬をオペラの上演前に団員達が飲む飲物だと難なく騙す。
     オペラも最高潮に達した頃、突然クリスティーヌの歌声が出なくなった舞台上でのハプニングで、オーケストラの指揮を
     していたエリックは、演奏を中止する。観客からのざわめきの中、クリスティーヌを奪いに行く。
     エリックが指揮をしている時は、客席に背を向けているので心境の変化が顔の表情で知ることは出来ませんでしたが、
     指揮棒を振る時や団員に歌の出だしを知らせる仕草で楽しみにしていたオペラが始まった、という喜びから不信感、苛立ち
     へと繋がる心境の変化が伝わってきました。エリックの表情が目に浮かぶようです。まぁ、この場面は今までの話の経過から
     観客各々が感じたエリックのクリスティーヌへの気持を読み取ってみれば自然と伝わってくるものかと思います。
     たかこさんの演技が読み取れる場である事と思います。

     クリスティーヌを奪う時、エリックの気持としては成功するはずだったオペラの作品が失敗に終わった為、あれほど絶賛されて
     いたクリスティーヌの歌声が披露できなかった、その屈辱的な立場に立ったクリスティーヌを少しでも早く解放させたかったので
     しょうね。 考えてみると、とても切ないです。舞台に居たキャリエールは、逃げるエリックを撃って捕らえようとする人達に、叫ぶ
     のです。「(撃つのは)やめろー!」って。エリックはまだ知らない父親の存在がキャリエールにあると思えば、助けたい一心だった
     のかと…。

     クリスティーヌはエリックよりも先にキャリエールから彼に隠された真相を明かすのです(回想の場面にて)
     母親に愛された期間が少なかったエリックは、その愛情を求めながらも周りの人から隔てた場所での生活を強いられた中で、
     仮面を被る事で逃れていたかった。
     クリスティーヌは「私もお母様と同じ愛を持っているから全てを受け入れる事ができる」とエリックに伝える。(森の場面にて)
     心に響く言葉の中では、最初にクリスティーヌがエリックに「歌ったら、顔を見せて欲しい」って頼むけれど、エリックは「歌は
     愛や喜びの為に歌うものだよ。願いの為で歌わない。クリスティーヌの願いは何でも聞いてあげるから。」って諭す言葉。
     その後のクリスティーヌは「♪私の愛を受け止めて〜!さぁ〜♪」と歌うの。
     心情が伝わってくる分、エリックの気持の変化が仕草で伝わってくる。
     最初は、人々の生活を共に出来ない苦しみを仮面の下に秘めたものを明かす事は、クリスティーヌの愛情を受け止めて
     信頼しようと心を開く時でもあって、しんみり切ない場面でした。(涙腺が緩みます)
     結局、全てを受け入れる心づもりが出来ていなかったというか、気持のゆとりが無かったせいか驚きで逃げ出してしまう
     クリスティーヌを見て、エリックは「ほら、ごらんよ。やっぱりダメじゃないか」という思いが入っていたと思うの。
     最後のエリックの叫びは、序幕での”僕の悲劇を聞いてくれ”の歌詞と繋がっていると思いました。
     あぁ〜、悲しい悲しい…。
     

     父親の存在であるキャリエール、最初の頃は年齢を感じさせない雰囲気でしたが、公演も中日を過ぎてから「あれ?」と思いました。
     それもそのはず、彼の頭髪は白髪混じりになってたのです。まぁ、18、9歳の頃にエリックが生まれたんだから…、と考えてみると
     エリックの年齢が想像できるかも!?
     信頼していたクリスティーヌにも、彼女の愛を信じて閉ざされた心を開いたのに、受け入れてもらえなかった為に結局は裏切られたと
     感じているエリック(←そう思った私)は哀しみの中、地下から出てきたところをキャリエールに助けられ、心休まる時を束の間
     味わえた。エリックにしても、どうして他の者と違って優しく接してくれるのだろう?と思ったのでは無いでしょうか。
     彼はエリック自身について何かを知っている存在であろう…と気付き始めていた場面では?って。
     (お茶会でのトークでも、ありましたよね?多分この場面だと思うの、東京公演で確認しちゃった。「お父さん!」って気持で
     キャリエールの靴を触った事もあったそうです…)

     銀橋の場面では父子の思いをそれぞれ歌い上げるので、感動もひとしおになるのです。
     エリックは言うの、死ぬ時はお父さんの胸に抱かれたい!って。お互い約束を交わし、エリックは母を無くしたけれど何もかも
     知っている父はすぐそばに居てくれる、親子の愛情はまだ残っていたのだ、って。ずっと孤独だったのね、エリック(>_<)

     とうとう、警察に見つかってしまったエリックは一心で逃げるけれど、捕われの身となってしまう。
     劇団員の1人?が生け捕りにしようと言い出してしまい、頭を抱え込むキャリエールは自分との葛藤に悩まされ、公には親子だと
     言えない気持もあったのかと思う。そこで、葛藤に打ち勝つキャリエールだったら引き止める事もできたのだろうけど、結果的には
     銃で撃ってしまう事に。彼自身、生け捕りの結果エリックを見世物にされる姿を見たくなかったのでしょう。
     エリックの最期の頼みとなった叫びも聞き入れて貰えなくなって、引き止めるのに必死だったクリスティーヌの膝の上で息を引き取るの。
     最期に力尽きたエリックとクリスティーヌが歌うのも切ない気持で一杯だったし、やっと仮面の下の顔を受け入れてもらった時の
     エリックの表情は嬉しそうだった。仮面を外されるのは、やっぱり嫌だったのよね、首を振って拒否してたし<エリック
     もう少し時期が早かったらハッピーエンドだったのに、エリックの生涯ってなんて孤独で悲しい人生だったのだろう…。

     エリックの亡骸を地下?にひっそりとオペラ座の怪奇事件と共に封印されたような感じ。
     クリスティーヌが”僕の悲劇を聞いてくれ”の曲で、「♪私の願いを聞いて欲しい〜」って歌うの。
     もう一度、エリックに会いたいという気持が一杯で。

     大劇場公演では、白い衣装を着たエリックが船を漕ぎ、クリスティーヌがその船に乗っている夢を見るのよね。
     何故、夢だ?って。 エリックが無くなった時の衣装と全く違うじゃない、仮面も取ってるし。

     東京公演では、同じ場面が、クリスティーヌは船に乗ってません。


  

☆大劇場と東宝の違い…

                  #大劇場#                  #東宝#

カルロッタのお衣装         深紅色                     緑色  

警察の行動              大劇場ではエリックの捜索をキャリエールに任せてその場を離れる。
                      東宝では、キャリエールに任せるものの、疑いながらエリックの隠れ場を探してから離れる。

ラストシーン              上記同様。大劇場では、クリスティーヌがエリックの漕ぐ舟に乗っている。
                      東宝では、船を漕ぐエリック。クリスティーヌはその場に居ません。

たかこさんのお衣装        ゴールドの総スパン            シルバーグレー
(フィナーレ)

                                   

※  お気に入り場面 (第2部)

♪  回想シーン      エリックの視点から見るクリスティーヌと母親の姿の対比場面があった事と、エリックの生い立ちについて
                心打たれるものがあった。
                母親ベラドーヴァ(音乃いづみさん)が歌う”♪マリア様〜、お救いください!”の歌声が澄んでいて、
                とても綺麗でしたわ。

♪  地下にある森の場面     花ちゃんの歌声がとても綺麗だったし、エリックが最後に叫ぶシーンは幕開けで歌われた
                     ”♪僕の悲劇を聞いてくれ”に繋がるものがあり、ここから全ての秘密が明かされたって
                     感じですね。

♪  銀橋の場面

♪  エリックが捕まり、亡くなるまでの場面