日本障害者雇用促進研究会アンケート報告


 平成9年12月に、日本障害者雇用促進研究会より日本AS友の会事務局 を通してアンケ−ト協力の依頼があり、会員有志に協力していただいた 調査報告書が事務局に届きました。報告書は「難病等慢性疾患患者の 就労実態と就労支援の課題」という約150ペ−ジの1冊の本となっており、 内容は、難病等慢性疾患の障害としての側面、職務適合性と就労可能性、 就労実態などに分かれていますが、その中から、「強直性脊椎炎」患者の アンケ−ト調査結果のまとめと自由記述欄の記載内容を掲載します。


 強直性脊椎炎患者の就労実態

1) 対象者の病気の状態
 回答者は男性が81.3%と多く、発病年齢は20歳代を中心として1O歳代と 30歳代に広がっており、先行研究の報告よりは男女差が少なくなっていた が、発病年齢については合致した。医師からの就労上の注意としては、 座業、軽作業への作業強度の制限や残業の制限、勤務時間中の安静・休憩、 ストレスを避けることなどが30%前後ずつあった。症状変化は軽快と 増悪の繰り返しが40%で最も多く、次いで増悪傾向が30%が多かった。 治療・通院時間は1週間平均で1時間を中心として0時間のものから3時間 というものまであった。身体障害者手帳は60%が取得しており、1級から 6級まであった。視覚障害や関節の運動制限による障害認定であろうと 考えられる。また、支給を受けたいが認定されないものやあえて障害者認定 を望まないなど障害を自覚しているものを含めると90%弱となり、 障害がないとしたものは5%であった。

2) 対象者の就労状況
 今回の調査回答者には60歳以上が25%強とやや高齢者が多く、就労 非希望者も多かったが、一方で40歳代以下も半数弱あった。失業率は 30%と低く、現在求職中のものも21%であった。しかし、潜在的失業率は 13.5%となり、また、就労者のなかで正社員での雇用が56.3%あった ものの、自営業が31.3%と比較的高かったことから、必ずしも雇用上の 問題がないわけではないと考えられる。職種は事務職が比較的低く、 自営のためか管理職が多くなっていた。発病時に就労していたもので、 発病により仕事の変化がなかったものは31.9%、自主退職の36.2%を 含め退職した者が51%で、そのうち43%が2ヶ月から2年以上後に 再就職していた。就労者の職場状況としては「設備現状満足」が低く、 また、「疾病管理可能」もやや低く、就労支援要望としては「身体障害者 雇用対策」が高かった。職場で事業主に病名を告げていないものが34.6% あり、職場で誰も病名を知らない状況は16.1%であった。

 一方、就労していない者の非就労の理由としては適職がみつからないが 57.1%で最も多かったが、特に特徴はなかった。就労希望者の就労支援 要望としては「身体障害者雇用対策」が高く、一方、「労働環境改善」 や「公的助成・福祉」は低かった。

3) まとめ
 強直性脊椎炎患者は全身の関節のこわばりや痛みによる障害があり、 それが普通の肢体不自由者と異なる点であり、また、痛み止め薬の服用も 行っており治療・通院も必要な場合もある。また、自営業での就労が 比較的多かったが、雇用の促進のためには、外見よりも肢体不自由の 度合いは大きいことを考慮して、肢体不自由のための対策を適用する ことが必要であると考えられる。


 自由記述欄
  • リウマチは昨年に出まして、そのことは回りの方にも話せますが、 B型肝炎については話すことが出来ません。不利になるような気がする のです。仕事をする事に(例えば)なってもこのことは話せません。 手当や保護よりも(私は)世の中の無知からの偏見をなくして行きたい と思っています。障害者の事のみならず、その事が世の中をより良く して行く事になると思います。

    【合併:リウマチ、B型肝炎、35歳・女】

  • 看護婦として長く働いてきました。病名を付けられた時は定年間近 でしたので定年で退職しましたが、1年半後、元の職場で働く事が出来、 パートとして週4日働いています。少々きついと思う事もありますが、 筋力も衰えず働く事が出来るのは幸いと思っています。 (私は精神科勤務です)

    【合併:乾鮮、貧血、ブドウ膜炎、69歳・女】

  • 難病を持つ主婦ですが、外に出て皆さんと一緒にパート等をしたい のですが、仕事内容に制限が有るので。本心は社会の一員として楽しく 働きたいと思っております。障害者にやさしい社会が早く来ないかと 思います。

    【40歳・女】

  • 都心近くの郵便局に勤めていたが業務運行状況が悪化すると自分の 存在を理由にする管理者や役職者が必ずいた。新築したのに洋式の トイレが無く、設置してもらうのに数年かかった。毎日1時間以上早く 出勤し、休日には仕事を持ち帰ったり、退職日に挨拶にいったら私の 職務に2人が当てられるほどの仕事をしていたのに、郵便局員が 「アルバイト並みの仕事をしていなかった」とデマを捏造して流され、 ばか呼ばわりされている。
     8回手術、1回骨折、9転10起、畳の生活は出来ず、自分の足を 握ったこともなく、エスカレーターについて行けず、踏み切りの中に 閉じ込められる等。脊椎炎のせいだというが、1日2回の導尿、交互に やってくる両手、両腕の炎症に耐えている。全身を戸板に固定して、 1年間生活してもらいたいものだ。公団住宅に空き家募集で入居したが、 添付していた診断書を職場や下請け業者の中に平然とプライバシーを 差別的な住人に公開して、嘲笑の種にしている。自治会長みずから差別 をしている。ポスターに、住民は、福祉、人権だとやっているがよくも ぬけぬけといえたものだ。

    【63歳・男】

  • 情報社会の現在、世に多くの情報があふれかえり、錯綜している中で、 自分の病気に関する(本当に知りたい)情報を探し出すのは、本当に 大変な世になってきました。一昔のアナログ社会のように病院内に必ず 相談できる部所を法的に作っていただきたいと思います。便利なようで 複雑すぎる現代の機構かと思われます!

    【42歳・男】

  • 私は国鉄で機関士として、昭和60年まで勤務し、定年退職(55歳)し、 現在年金で生活しております。定年まで勤められたのは、上司、先輩、 同僚または後輩の理解、協力により助けてもらったお陰だと思って おります。障害者手帳の支給を受けたのは平成6年です。

    【67歳・男】

  • 現在表面上は普通に生活しているように見えるが、毎日薬漬、そして 痛みとの戦争状態で常に不安を持っている。都や国の政策に、これ以上 心配を起こさせない様に、また希望を持てるような施策を施していただける ように望む

    【合併: 四肢不自由(痛み)、松 葉杖、車椅子、62歳・男】

  • どれほど無理をして就労しているかと言うことなど、公的機関関係者は 理解できない様だ。ま、各種ボランティア的活動も平行して行っているが、 こういう活動家は重度の人に多いと言うのも皮肉である。

    【合併:下腿難治性潰瘍、59歳・男】

  • 何よりも思うことは、ラッシュタイムの通勤が難関、障害者を 働きやすくするために、たとえは、グリーン席(座れれば良い)の援助を するなど策が望まれる。在宅勤務はまだまだ定着しないと思うから…

    【47歳・男】

  • 身体者手帳の基準がきつすぎる。手や足が正常だから出ないと言う のはおかしいと思う。発症所見があり、身体に痛みがあり一生この痛みと 付き合うのだから、この病名に対しては支給して欲しい。

    【33歳・男】

  • 私の場合は障害が表面的に出ず、見かけは健康体に見えるので、 職業相談しても、なかなか理解してもらえなかった(ハローワーク)。 もっと、公的機関の人々も勉強してほしい。

    【33歳・男】

  • 仕事はしたいが1ヶ月何日仕事が出来るか不安。それでも会社が 理解してくれるのか。仕事を探し面接に行ったが、病院へ月2回通院 したいと言うと良い返事はなかった。

    【48歳・男】

  • 強直性脊椎炎と申しましても比較的軽い方で外観上の姿勢と ちょっとした痛さを我慢すれば、日常の生活、仕事に影響はほとんど ありません、幸せなことです。

    【51歳・男】

  • 現在、公務、私生活に特に支障がなく、従来の生活スタイルです。 治療通院はしていなく、痛み止めの薬は1日1回服用していますが 普通の生活をしています。

    【49歳・男】

  • 現在就労しているので良いが、将来できなくなった時のことを思う と一抹の不安を覚える。重症患者にとって不安を感じさせない行政を 希望します。

    【57歳・男】

  • 自分はまだ職に就くことが出来たが、慢性疾患の人達で職に就く ことが出来ない人々が沢山いるので、国でもっと考えてもらいたいと 思う。

    【24歳・男】

  • 能力を生かせる職場が少ない。日本では転職が大きく不利で つらくても今の仕事に執着している。

    【39歳・男】

  • 65歳まで仕事をしました。その後無職で厚生年金を受給中で 生活には困りません。

    【合併:糖尿病、71歳・男】

  • 在宅勤務の仕事が有ればうれしく思います。

    【骨成長障害症,合併:体幹機能障害、 くも膜下出血、58歳・男】



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