第2部 講演「強直性脊椎炎に関わる福祉制度について」

日本医療社会事業協会副会長 磐井静江



(井上事務局長)
 よろしいでしょうか、ご着席下さい。では、今回の友の会の総会の目玉である 講演会を始めたいと思います。講師の先生は、社会福祉士で日本医療社会事業 協会・副会長という要職にあられる磐井静江先生です。私の方からお願いした テーマは「強直性脊椎炎に関わる福祉制度について」です。

 私が磐井先生を知ったのは「膠原病の友の会」でご講演された講演録が掲載 された会報を読んだ時です。これは大変興味深い、勉強になりそうだとピンと きて、そして磐井先生のお話ぶりが大変分かり易いんで、是非、我が日本AS 友の会の総会でもお願いしたいと思いました。それで、半年前ぐらいに、 ご挨拶に伺った次第です。

 現在のご勤務先は、東京都立大久保病院の医療相談室です。では、磐井先生、 よろしくお願いします。


(磐井先生)
 ご紹介いただきました磐井です。日本医療社会事業協会の肩書きとして お話しした方がよろしいのかと思います。今、ASでは判りにくいというお話 がありましたけれども、私どもの協会も何をやっている協会なんだか判らない と言われてしまうところがありますが、設立50周年を迎えた協会です。

 主に医療機関で働いているソーシャルワーカーの社団法人としてやっている 会なんです。私達もコマーシャルがあまり行き届いていないので、それほど 有名な会ではないんですが、3,000人くらいの会員でやっている会でございます。


 私は、病院のソーシャルワーカーとして駒込病院っていうところに21年間 勤務した後、今は都立大久保病院におりますが、今の医療改革の嵐というのは もの凄い勢いで吹き荒れておりまして、今日、会場にいらっしゃる方は、 その嵐の直撃を受けた方ではないかと思います。

 会長さんは、和歌山で色々な要職に就かれている方だということもあるし、 井上先生もいらっしゃるから、色んなことを言われないで済むのかなと思う んですけども、私達病院の相談員は、今、何をやらされているのかと言うと ですね、在院日数14日を守らなければならないために他の病院に行って下さい と言われてしまった患者さんやご家族の方から、「何処に行ったらいい でしょうか?」といった相談をかなり受けざるを得ない状況になっています。

 まず、私の資料の10の5 を見て下さい。明るい話題じゃないんですが、 皆さんには、まず、今、国民がどういう位置にいるのかということを認識 していただいてから福祉制度の話をしないと判りにくいと思います。この 絵が象徴的になってますので、ちょっとご覧下さい。

 私が小さい頃、もう50年近くですね、健康保険証さえ持っていけば、 何割でかかれるとか、自己負担がいくらとか、そういう時代が長く続いて た訳です。日本は皆保険制度ですから。ところが、今、何が起きているか というと、病院の機能分化というのが起きまして、順天堂大学病院に かかる場合と地域の医療機関にかかる場合と、病院という同じ看板は かかっていても、中に入ってみると中身が全然違うということなんです。

 それなのに、私どもの病院はこういう状態なんですよっていうのが 入り口に書いてないんですよね。何々病院って書いてあるだけで、たまに 書いてあるのが療養型病院とか書いてあるんですが、それに気づく人は まずいません。

 ここに大きな問題があるんですけれど、そのことをまず知って いただきたいということで、判り易くするために、ここに三角形の ピラミッドを書いておきました。

 病院としては、普通、このピラミッドの真ん中へんにある一般病院で、 皆さんが病院、病院っていうのは救急で命を助けてくれる所が病院 なんですが、それ意外に順天堂さんのような特定機能の許可をもらって いるところがありますし、それから地域支援病院って言って、紹介率が 何十パーセントを超えないと病院が運営できない、その代わりお金を あげますよという保険基準をもらっているところもあります。

 それから下の方にあります回復期リハビリテーション病院、リハビリ を主にやる所と療養型病床というのがありまして、こんなふうにいろいろ 機能分化しています。

 基本的には入院で治療期間を少なく、在宅で療養していただきましょう、 どうしても入院しなければいけない時は、入院してもらって、後は介護 保険でやってもらいましょう……というように日本の社会保障制度が この5年間ぐらいで急速に変わりました。

 変わったんだということを意識してないといけないので、まず、 右手に健康保険証を持ち、左手に介護保険証を持ち、これで日本の人達 の老後や介護の支えは出来ているのだ、これでワンセットだということを、 いつも頭の隅に置いておいていただきたいと思います。これが今の現状で あるということですね。

 私の資料 をここで全部説明するということは不可能なので、後で皆さん に見ていただければいいと思うんですけど、今度は、 資料10の2をちょっと ご覧下さい。その上に所得がまた導入されていますので、所得が沢山ある 方と普通の所得の方と非課税の世帯の方を分けたんですね。

 私もこの職業を30年近くやっているんですが、こんなことを国民が理解 するなんて不可能ですっていうぐらいに細かく細かくやられてますので、 今日、私が説明して一度で判る人なんていないということが前提です。

 それでまず大ざっぱに頭の中を整理すると、機能分化というものがあって、 介護保険というものがあって、もう一方で所得制限というものがきめ細かく なされている、そういうことなんですね。それで所得の多い方、たとえば 所得の上位の人だと、139,800円というのが自己負担の上限度額ということです。

 普段の診療費は、一回につき3割でお立て替えするんですけれども、差額 ベッド料とかそういうものでない限りは、4ヶ月後に手続きをすると後から、 限度額以上を超えた額が戻って来るという高額療養費制度というのがあります。

 そこにかける1パーセントっていうのがついていますが、非常に高度な 医療をする人にとっては、それに1パーセントの負担を新たにのせますよって いうのが導入されているということで、正に利用者の人が自己負担をどんどん 強いられているという状況です。

 ただし、世の中に混乱が起きないように住民税非課税制というのがあって、 この自己負担限度額が35,400円の住民税非課税世帯という低所得者にも配慮 しているようです。でも、住民税非課税世帯になってる方はほとんどいません。 つまり、土地、家屋を持っていてアパートも貸しもなくて預貯金は自分が 持っているんだけども所得はない……という人ですね。

 ほぼ国民年金だけしかもらってないっていう人を住民税非課税世帯と 言います。あと老人医療の方も、高額所得者、一般所得者、低所得者とに 分けられていて、この4月から導入されておりますので、医療にかかると いってもなかなか大変な話だということですね。

 それから資料10の3 にあります病院の機能分化、あとで読んでいただければ いいんですが、例えば、とってもいい治療をしていただいている順天堂に ご入院されますと、病院側は何もしなくても1ヶ月目は病院は1日25,000円 の収益が入るように保険制度が出来てます。

 だから月に75万円は病院にがっぽり入るんですね。ところが裏側の療養 型病床群の方を見ていただきたいのですが、 資料10の4です、療養型の所が 真ん中にありますね。そこがちょっと違っているんですが、急性期加算が もう無くなってきているので、1ヶ月お薬を出して検査して何をやっても 39万円しか入らないんですね。それが療養型病床群っていうものの保険の 収入なんです。

 だから、一般病院と療養型では、経営者の人は全く収入が違うところで 医療行為をしておりますので、皆さん病院を転院させられるって時に、 ここにずーっと居たいと思っても居られないんです。同じ保険証を出すの ですが、言った先の病院によっては、かかれるサービスが初めから違うと いう仕組みになっています。

 このことを国民にちゃんと国は説明をしていません。保険証にも書いて ありません。保険料を払うっていうことは、生命保険だったら定款という ものをくれますよね、あれ読むの大変で、読んだこと多分ないと思います。 私も読むの嫌ですけれども、あれ、一応契約書なんですね。

 契約書の中身でこの保険に加入するとこんな契約内容になってますよ っていうのを見せてもらうんですが、健康保険証の場合は、保険の紙切れ 一枚もらうだけで高額医療費のパンフレットなんかが横にあるだけで、 この保険証っていうのはどういう中身の使い方でどういうサービスが 受けられますっていうことは書いていなくて、何割負担ですって書いて あるだけなんですね。

 その入り口から中身のところはなんの説明もなくて、どういう仕組み になっているかということが説明されてないところに問題があります。 患者さんかご家族の方が誰でも健康を害されれば医療を受けますし介護 も受ける訳ですので人ごとではありません。


 一方、介護保険の方は明確なんですね。正しいか正しくないか判り ませんが、一応、要支援から介護5まで認定されますので、透明で して、いくらのものがもらえますよって、書いてあるものをちゃんと 皆さんにお配りする訳です。

 で、あなたの場合、要介護3だったら24万円の商品券みたいなもの が出ますので、あなたがケアマネージャーさんに頼んで一緒に話し 合って、そのメニューを作って、それでサービスを受けて下さいって いう契約書をいただける訳です。

 でも、医療保険の場合は全く判りません。病院へ入れてやっと命が 助かってホッとしたと思ったら、転院して下さいっていう話が出るって いうのが今の医療の現状であるということ、これはコネを使っても 何しても逃れようがおおむねございません。

 おおむね無いって言うのは、それをやっていると病院がつぶれるので 病院は必死なんです。皆さんに意地悪をするつもりは全然無くて、病院 もつぶれちゃうんで、やらざるを得ないというのが現状です。

 かくいう私も、昔はですね、福祉の仕事をしているというと割と正義 の味方だったんですが、最近は悪人で、結構都庁の方にも、私が追い出し 屋だとか、患者さんがとっても苦しいのにかごく幻滅するような未来が 無いような話をされたと投書されたこともあります。でも、現実問題と して言わざるを得ない、そういうシビアな状況があるんだということを とりあえずお話ししておきたいと思います。

 私が言いたいのは、医療改革制度がすごく推進していて、医療保険と 介護保険とそれを分離して考えられなくなっていると言うことと、 それから医療負担は所得に応じて負担増がどんどん言われておりまして、 医療にかかるというのも決して楽なものではなくなってきているという ことが今現在起きているということです。


 それでは次に、それを前提としてですね、皆さんのようなAS患者、 すいません、私もAS患者って言っても判りませんでした。井上先生、 以前、リウマチ学会の会場でお会いしませんでしたか?。

 私もちょっと一回お話ししたことがあって、膠原病の友の会から 呼ばれてリウマチ学会に行った時にですね、井上先生がいらっしゃって、 シンポジストとしてお話ししてたんですね。私もすごく羨ましいと 思いました。

 難病の患者さんで、しかも数の少ない患者さんの中で、医師がその 当事者で、それで頑張ってやってくれてるっていうことで凄く頼もしく 思いましたし羨ましくも思いました。ただ、ちょっと辛口の言葉で 言わせていただくと、依存症にならないで欲しいなと思いますね。

 井上先生に依存してはいけない、皆さんがそれぞれ個々の人間として 勝ち取っていかないと、この難病の嵐を駆け抜けていくことはとても 出来ない。井上先生という武器を使ってですね、皆さんが一人一人自立 してきちっと勝ち取っていかないと、なかなかこの厳しい状況の中で 皆さんの生活を豊かにするって言うことは難しいんだということを 敢えて申し上げたいと思います。

 それでASというのが判らなかったんで、私もパソコンを開けて、 それでさっきのホームページを見たんですが、ありましたね、燦然と 輝いてありましたね。出てきた出てきた……と見させていただきました が、強直性脊椎炎といえば判るんですね。

 さっきの難病の一覧表に、私は病気のことが十分に判っていなくても、 難病一覧に国の事業、都の事業っていうところを、ソーシャルワーカー はいつも見てますから、名前はどこかでお会いしましたねっていう感じ ですが、中身は判りませんでした。

 活動方針が非常に正しいなと思うのは、井上先生が、私の所に来て 話してくれないかと言った時に、あそこに並べてある冊子一切をバン と持って来られて、「まだ当日まで時間がありますから、これを読んで 下さい」と言われたんですけど、私もホントそうやって置かれると ですね、読まないと悪いなと思いますし勉強しないと失礼だなと思って 読みました。

 とても効果があることだと思いますので、こういう広報活動は、是非 お続けいただいた方がよろしいと思います。


 医療費の自己負担の方は、皆さん大体ご存じですかね。高額療養費の 話を先ほどしましたんですが、 資料10の2のところに書いてあるように、 老人医療もこういうふうになってますし、高額療養費のこともこのように なってますが、高額療養費のことをちょっとだけ説明します。

 入院したことのある方、ちょっと手を挙げていただけますか?。はい、 ありがとうございました。そして高額療養費でちゃんとお金を戻して もらった方は?。あっ戻してもらってない方もちょっといらっしゃいます ね。

 それは2年間有効なので、まだもし間に合えば請求していいと思う のですけど、あと会社にですね、付加給付というのがあって、黙って いてもお金が戻って来るという方もいらっしゃいますので、そういう方も いらっしゃるのかなというふうに思います。

 だから高額療養費と言っても何んのことか判んないという方もいらっしゃる と思うんですけど、高額療養費っていうのは、保険で利くお金を、カレンダー ごとの月の外来と入院を分けて、それぞれのレセプトという診療報酬明細を、 これは本当に事務的に機械的に分けられた制度なんですが、その月々の レセプトというもの一枚につき21,000円を超えたときは合算出来ます。

 そうでない時には、少し違います。昨日、私が面接した人の中にはですね、 1ヶ月のうちに外来診療があって、ところがリストラに遭ってしまって保険 が変わって、入院期間中に2つの保険に分かれた方がいたんですよ。

 そういう人の場合はですね、前の外来がレセプト一枚、前の会社の時の 保険の入院が一枚、それから今度国民健康保険でかかった時の入院が一枚と いうことになってしまって、レセプトが3枚に分かれるんですね。 そうすると全部21,000円を超えてないとその月は合算出来ないので自己負担 が増える、こういう制度です。

 高額療養費とは、皆さんの所得に応じた限度額を超えた分を戻してもらえる 制度で、時効は2年ということです。皆さんが持っている保険証の窓口の所に 行って返してもらうのが基本的に保険制度です。何をやられるにしても、この 高額療養費っていうのがあって、自己負担の上に、先程言われた難病の申請 ですとか障害者の申請ですとかそういうものが補足的にあるだけです。

 あくまで保険制度が土台です。保険制度なくしては、難病になったらただに なるとかですね、障害者になったらただになるとかそういうことはありません。 あくまで保険制度が土台だということをお忘れないようにお願いしたいと 思います。


 次にですね、障害者のサービスのことについてお話しして、後で質疑応答の ところで判らないところとか具体的なことがあったらお答えしていきたいと 思います。障害年金のことは、一番最後にお話ししたいと思いますので、 資料10の7をご覧下さい。

 去年の2002年の3月の会報「らくちん」に福祉制度の事が書いてあってご覧 になったと思うんですけど、私の方は事務的なお話をさせていただきたいと 思います。


 私は東京都という地域で仕事をしているんですが、とりあえず、全国共通の 事項についてお話を進めさせていただきます。身体障害者手帳の申請方法と いうことですが、必要なのはそれぞれお住まいの市区町村の役場に行きまして ですね、そこで所定の診断書など、書類をもらってくる訳ですが、この中で 身障手帳をお持ちの方は何人ぐらいいらっしゃいますか?。

 はい、ありがとうございます。手帳なんか取るような体にはなりたくない とか、30年前にはよく言われたんですけど、最近、手帳を取ったら税金の 控除に使えるので手帳を取りたいんですけど取れませんか?というような 相談の方が多いです。

 だから手帳を取ることに対してそんなに抵抗はなくて、私達は、障害者手帳 はパスポートと同じですから……という「合い言葉」でご説明しています。 パスポートと同じですから、3×4の写真を撮ってですね、パスポート証明 になるための診断書をお医者さんに書いていただいてですね、私は申請したい んですよという申請書を書いて、判子を押して出せばいいんです。

 これが身体障害者手帳です。まず皆さんのご意志が大切ですね。申請しよう という意志、それで指定医(認定医)といわれる医師が、あなたは障害者です よという証明を書いて下さるということが大切なんです。 資料10の9と10と11 にある等級表をご覧下さい。

 私こういう説明会で身障手帳の基準表を付けたのは初めてなんですけど、 ASの患者さんということで、私、不勉強で目の障害の方とかも色々出て おられるのかと思っていましたが、一応、肢体不自由ということを中心に お話しさせていただきます。

 上肢、下肢、体幹の障害と分かれていますが、皆さん、この等級表という のを見たことがある方、手をちょっと挙げていただけますか?。はい、 ありがとうございます。でも、診断書を出すだけで、その中身を見てない方 が多いと思うんですね。それであえて書かせていただいたんです。

 というのは、障害者っていうイメージに対してですね、自分は障害に 当たるほどの体ではないと考えがちな方が多いので、敢えて今日は等級表 を出しました。

 サービスは、この中の6級から受けられますので、例えば6級、 資料10の10 を見ていただくと、ASのことで考えると上肢機能じゃなくて下肢機能 で考えれば、下肢の足関節の機能の著しい障害でいいわけなんですけど、 そういうものとか、体幹の著しい障害っていうのが5級にありますよね。

 資料10の10 の表で、先生がこれに該当すると書いて下されば5級が取れる 訳ですね。とにかく、パスポートですから、6級であろうが3級であろうが 2級であろうが、まずパスポートという証明書をもらわなければ障害者の 福祉サービスは一切受けられないんだと記憶して下さい。

 だから抵抗がなければですね、取れるものは取っておいて、取った上で 自分が使うか使わないかは、その方のご意志です。パスポートを使って 海外旅行に一回だけ行ったきりで、後は行かないという人はいっぱいいると 思いますね。有効期限があっても使いませんよね。

 それと同じで皆さんがパスポートを取ったら、それに関するサービス メニューがいっぱい有りますから、それを使うか使わないか決めるのは 皆さんです。だから介護保険と同じです。介護保険も要介護1ってついた からベッドを使わなければいけないとか、ヘルパーさんを使わなければ いけないとか、そういうことは全くありません。

 取ったらそれを取れる権利を有したということであって、使おうが 使うまいがご自分の自由です。だから、出来れば取れるものは取っておいた 方がいいというのが私の結論なんです。それで、まず身体障害者手帳を お取りいただきたいと思います。


 次にですね、医療費に直接関係するものとして、強直性脊椎炎は東京都 では難病に指定されていますが、東京都だけの患者さんが関係すること なので、その話はあまりしなくても結構ですと言われたんですけど、難病 指定、それに身障手帳もそうなんですけど、かなり政治的なものです。

 取れる取れないというのは理屈を越えた政治的なものです。私はこれは 断定して言っていいと思ってます。理屈を越えたものの世界があると思って おります。敢えてその話は今日は致しません。

 下肢不自由のものに関しては全国共通ですからお話ししますが、1級や 2級が取れる方に関して、自治体が国に手を挙げれば、半分自治体が自己 負担しなければならないというのがあるので、予算処置が取れない自治体 では、医療費助成を1級しか認めてなくて、2級の人は医療費をただには しませんという所もあります。全部が共通だということは福祉では無いん ですね。


 身体障害者手帳を持っていて全国的に共通なものっていうのは次にお話 する厚生医療というものです。これは、国の制度で自治体の制度では ありませんので、これは自治体でもやらざるを得ないんです、国の事業 ですから。

 でも、資料10の7 にもあるように、重度障害者の医療費助成というのは 国の補助金は出ますが、自治体独自に予算を組まないといけないので やらないということもあり得る訳です。1級だけに助成するということも あります。東京都は、ひどいことに、今は老人医療と同じにしてしまう ところまでやっちゃいました。

 個々の自治体の裁量権っていうのがかなりあるものなんですね。とは 言うものの、皆さんに目安をお話ししなければなりませんが、表いっぱい 書いてもしょうがないので簡単なものを持って来ました。。

 東京都も、もう国とほとんど同じ基準になりましたので、その助成が 受けられるための所得制限(上限度)は、扶養家族が全然いらっしゃらない 人は、年間3,604,000円以下の所得の方、扶養家族が3人いる場合は 4,744,000円です。これ以下の方は、重度障害者医療費助成制度が受けられる という訳です。

 これ大ざっぱな数字なんですが、細かく総所得といわれるものから 色んなものを引いて役所の窓口は計算しますが、一応これが公になっている 数字の目安です。東京都の場合はそういうことですが、埼玉県は所得制限 がありませんし3級でも無料のところがあります。

 1級の障害者に対してしか医療費助成をやってない所もまだ2〜3ある ようですけど、ほとんどの都道府県で、この所得額以下なら障害手帳1級 と2級の方は医療費助成が受けられるようになっていると思います。

 次に更生医療の制度です。これに関しては皆様が例えば5級の障害手帳 を取った、それで先生からこのまま放っておくと病気が進行して良くない ので手術をすればくい止めることが出来る、または少し改善することが 出来るというご提案があった時に使える制度です。

 それでその医療をしたいということになるとですね、原則前もって 言わなければいけないので、先生に入院日も決められて入院してから 厚生医療を使いたいと言っても原則は出ません。原則はと申し上げた のは各自治体において、そういう制度を知らなかったから入院しちゃって からでも仕方ないねと言って下さる所もあると思います。ただ原則は 原則なので、この講演会で聞いたからでは困るので、原則はあくまで 前もって言わなくちゃいけないです。

 それで、お医者さんの証明書とか総医療費の概算書というのを書いて もらって、出しますと、その手術に関する費用について所得に応じた 自己負担分を助成してもらえるということになっているのが更生医療です。 更生医療の所得基準に関しては 資料10の8 の方に、AからD15まで19階層まであるので、後で見て下さい。

 更生医療については、皆さんは多分使い勝手があると思いますので ちょっと考えてみていただきたい。「何でもかんでも只にしてもらう つもりなんかありません、私は自活してやっているのですからそういう のは結構です。面倒くさい手続きは結構です。」って思う方も多いと 思うんですね。

 私なんかも公務員ですからこんな手続きをするよりも、一回立て替え てお金を附加給付で戻してきてもらった方が簡単ですから利用しないと いうこともあろうかと思うんですけど、最近どんどん厳しくなってくる んですよね。


(補足:附加給付制度
 公務員の共済保険や大企業の組合保険、一部同種国保組合などの組合員 制度上、附加金(一部負担金払戻金などの名称)として組合員の福利厚生 事業の一環として自己負担を軽減している制度を導入している場合があり ます。おおむね、1万円から2万円を自己負担の限度と定めているところ が多いので加入している保険組合に確認してください。

 この附加給付金の制度により東京都の共済組合加入者の自己負担は現在 1万5千円です。昔は2千円だったんです。この5年間で1万5千円の 自己負担になりました。一流企業はみな1万円以上になっていたものが、 3万、4万となってきていますので、徐々にではありますが、一流企業 の方も更生医療を使った方がいいケースが出てきてるかなっていうふうに 実感しております。)


 次に皆さんが使える制度として税金の控除、これが大きいかなと思って 書いてきました。資料10の7 の下の方です。身障手帳3〜6級の場合と 1〜2級の場合で控除額が違います。けっこう所得の多い方こそですね、 ランクが13パーセントランクになるのか10パーセントランクになるのか 控除額で変わっちゃうということになると、凄く大きいですから、この 税金控除というのはわりと使えるものだと思います。


 それからあとJRの割引ということで 資料10の8に書きましたけど、 障害手帳の1種と2種の違いが判る方おられますか?。身体障害者手帳 をお持ちの方で、ご自分が1種だ、あるいは2種なんだとおわかりいた だいてます?。

 1種っていうのは同乗者付きなんですよね。同乗者の方の割引も付く んですけど、2種の方は一人で歩いて一人で切符を買って生活していい っていう障害者なんですね。勝手に決められちゃうんですね。私、HIV (注:いわゆるAIDS)のことやっているんですが、HIVの方って 1種なんです。切符を買うときには同乗者付きでないと割引にならないん です。

 すごく不合理な事がいっぱいあるんですが、どなたかが決めたんですね。 とにかく1種と2種に分かれてます。そういう意味で、1種は誰かが 介護して二人分の割引があるもの、2種の人は一人単独でやるっていう ふうに決められたものです。

 それから航空運賃についても、割引は下肢障害者だけで、上肢は駄目です。 下肢障害4級以上の人で1種と2種に分かれてて、25パーセント引きで乗れる ようになっています。

 もう1つ駐車禁止除外者ステッカー。これは書いてないんですが、今日 会場までいらっしゃられる様な方でけっこう使い勝手がいいかなと思います。 各自治体の警察によって色々決め方があるんですが、下肢障害4級ぐらい でもですね駐車禁止除外者ステッカーを出してくれるとこがあります。

 今は、駐車違反で切符を切られると1万5千円でしたっけ取られるん ですよ。あれステッカー出してると何処に止めてもいいんですね(編集部注: 駐停車禁止のところはダメなようです)。これがすごくいいって言って 身障者手帳をお取りになる人がいます。こんないい物はないというふうに。 お金は要らないんだけど、これだけは欲しかったっていう方はいます。

 駐車禁止除外者ステッカーっていうのは警察署の方で対象者を決めるので、 1、2級の下肢障害の方は、勿論問題なく大丈夫です。3級の方も大丈夫 なんですけど、4級ぐらいになると警察署によって違います。ですから、 その辺は地元の警察に聞いてみないと判りませんがそういうものがあります。


 それから、ヘルパーさんとかそういうことについてのご質問もあったん ですけど、ちょっと私、今日は用意していなかったんですね。と申します のはですね、ヘルパーさんの活用っていうのは介護保険は一律なんで、 それは後でちょっと説明しますが、障害者の場合はですね、国がやる サービス制度に対して、さっき言ったように自治体が手を挙げて、半分の 補助金でするか自治体がまるまる持ち出しするかの事業が多いんです。

 ヘルパーの派遣事業に関しては、自治体によってやってくれる内容が 全然違いますので何とも説明が難しいんです。全国規模になるとそれで なかなか出来ないところなんです。概ね、先ほど言ったように重度障害 といわれた1級、2級の方に関しては全国どこの自治体でもある程度の ヘルパー派遣事業はやって下さっていると思います。

 ただし、その内容は本当に様々で、東京のようにALSってさっきAS と間違えちゃうって話が出た、筋萎縮性側索硬化症の団体の方がもの凄く 頑張られたので、東京では24時間介護の場合は、ヘルパーさんの費用が 24時間分なんだかんだ出るんですね。

 ただ、あれにも非常に問題があって、ヘルパーさんが夜中に来ても 1,350円しか時給が出ないんです。1,350円で夜中介護してくれる人を 雇うということは東京の労働事情で出来るでしょうか?という大問題 があるんですけど、それでも他の自治体よりはいいということです。

 これは、東京の難病団体さんが交渉しながら勝ち取ってきたものですね。 それがあるので東京は恵まれているんですけど、介護保険が導入された ときにですね、介護保険が優先するのでALSの方で認められてきたものを 支援費制度の導入に際して東京都が一回廃止するような話が出て、大騒ぎ になったことがあります。

 厚生労働省に皆さんが座り込みに行った時、ちょうど私も行きあわせた んですが、霞ヶ関のドアが遮断されていたんです。皆さんご存じですか?、 皆が並んで支援費制度反対闘争というのをやってたんです。厚生労働省の 前の地下鉄丸の内線の入り口が全部シャッター降りててビックリしたこと があったぐらい、もの凄い勢いで皆さん運動されたんですね。

 ああいうことがあったんで勝ち取れたんです。お家にいてテレビを見て いるだけだったら判らないんですけど、血のにじむような努力を皆さんが なさったから、今の制度があるんで、かなり政治的なものです。ただ、 お願いするだけではなかなか難しいところがあるのかなぁーというふうに 思っております。

 ですのでヘルパーさんの制度とかですね、ベッド、障害者のギャッジ ベッド(編集部注:病院にある上半身が手動または電動で挙上するベッド) なんかについても国の基準でいえば下肢障害だけで、体幹機能障害はためだ というように、下肢障害者と限定してあったりといった部分があります。

 その基準に則った人だけしか出しませんという自治体もあります。それに 準ずるものは認めますっていう自治体もありますし、障害者の場合は、ただ 寝たきりだからということで出るんじゃないんですね。それによって訓練 ベッドのような色彩があって、そこのベッドの所でやると立ち上がりとか、 そういうことについて人の介助じゃなくて自分で自主的にやるトレーニング にもなるんだというような訳の判らない理由を付けて要望を出さなきゃ ならないという現状のところもあります。


 身障の方、さっき出ました支援費という言葉をご存じでしょうか。支援費 制度というのをご存じの方ちょっと手をお挙げ下さい。


 身体障害者の福祉政策は、今、支援費制度に変わったんですね。 支援費制度とは何かというと、初め介護保険が出来たとき、「障害者の保険 制度はどうするんだ、保障はどうするんだ」という声が出て、介護保険が 出来たときに、障害者も全部一緒にして、障害者にも特別なものをつけて 保障して欲しいと、私たちソーシャルワーカーは思ってたんです。

 でも、実際には40歳以上で特定の疾患の人だけになりました。つまり、 純粋な障害者は除外されたんです。身体障害者の方たちはあくまで税金の 持ち出しでやることになり、そのことは良いかも知れないんですけど、 福祉の世界でこの10年間言われてきた、措置から契約へということが あります。

 福祉は恩恵で措置してお上が与えるものじゃなくて、個人で契約をして サービスを充実して受けてもらう時代に変わりましょうということなんです。 これはとっても良い言葉なんですけど、それが出来たんですね。これは 介護保険導入の時に、散々言われたことなんです。で、障害者の施策も、 「措置から契約へ」という概念を入れたんですが、実際にやって出来たのは 行政の事務量減らし、それだけで、当事者にメリットがどれだけあるのかな? って言う感じですね。

 確かに契約が出来るようになって、例えば、重症心身障害者で入所して いる方には、今までは措置ですから国が言ったものでサービスを受けて たものです。中身の本体の措置内容っていうのは行政が決めるんですが、 当事者同士で話し合うように契約書を結んで、何か施設に問題があれば 文句が言えたりとか、他のサービスを選べたりとかが出来るようには なったんです。

 ところが、今度は選べるサービスが無いんです。行きたいと言っても 無いので、支援費制度という名前と、手形は頂いたんですけど、当事者 が選べる状況が無くて……。それは何故かと言うと、バブルがはじけて お金が無くなってしまって、予算が無くてサービスが増やせませんと いうのが自治体の言い分なんですね。

 で、全然出来ないもんですから、今の現状では、役所の仕事量が少し 減ったのと、役所の責任が減って業者の責任が増えたっていうぐらいの ことしか無いんですけど、障害者に対する施策っていうのは支援費制度 となっています。

 ここの会場に居られる方が支援費制度を使ってヘルパーさんを派遣 してもらえるっていう事はあまりないんじゃないかなと思います。一方 ですね、介護保険の方は、多分該当年齢と該当疾病にあたっていれば、 要支援か要介護1になる方がこの会場にも多分いらっしゃると思います。

 もっと重度の方がいらっしゃるかもしれませんけども、さっき会長 さんが、要介護4とおっしゃってましたが、例えば体が痛くてですね、 お尻が拭けないとか、痛くてお掃除が出来ないとか、買い物に行った ら重い荷物がもてないとか、そういうことでも介護保険だと評価されます。

 でも、身体障害者手帳だと、何度曲がるとか、曲がらないとかそう いう事で決まってきてしまうんです。介護保険の方は、本当に人の手を 必要とするものを加味するような項目があるので、結構この会場まで ご自分の力でいらっしゃる方でも、介護保険だったら該当し得る方が いらっしゃると思いますけれど、身障の方は、そういう訳には行きません。

 で、難病でヘルパーが受けられる人に関しては、痛みとか日内変動 とか養生の変動ですね、保健所でこの人の場合は確かに変動があって、 障害者手帳はそんな高い等級は取れてないけど、大変だなっていう人は 受けられるようにはなってます。ただ、先ほど申し上げたように、 予算がないので、事情はわかるけど派遣できませんということが多い ように思います。それが現状です。


 で、介護保険のことを最後に説明しますが、 資料10の4に書いてあり ますが、介護保険の要支援から要介護5までで、それぞれの今出てる 料金表を書いておきました。これよりちょっと上がっているかも知れ ませんし、少し間違ってるかも知れません。あと施設基準とその施設 にいくらお金が払われているのかっていうのは、その下にありますので、 後で見ておいてください。

 介護保険というのが、もしASの皆さんに適用になると、40歳以上 の方についてはこういうサービスが、即、受けられるんだということ です。介護保険料を払ってるんですから、該当したら良い事は良いと 思いますね。それだけサービスを選択できる余裕が出来るのは良い事 だとは思います。


 以上説明してきたんですが、最後に、障害年金のことについてご説明 します。一番初めの資料10の1 の4番目の障害年金の受給方法です。 資料10の6 と一緒に見比べてください。ここにいらっしゃる方で障害 年金を受け取ってる方、いらっしゃいますか? 2級もらってる方 いらっしゃいます? あ、先生もらってらっしゃる、凄いですね。

 障害年金の3級っていうのは、会社にお勤めになってる方だったら、 労働が制限される程度の人に対して出るということになってるので、 お勤めの方は3級がありますので、プライバシーの問題とかで、会社に 言われてクビになるんじゃないかとか、そういうご心配の向きもあろう かと思いますけども、会社に加入されている健康保険、社会保険に加入 されてる方に関しては、厚生年金の中で3級があります。

 国民年金の方、国民健康保険の方は、2級と1級しかございません ので、2級でも該当するのはかなり厳しいと思います。一応、書き方 の注意という事でいろいろ話しても、皆さん、混乱されると思いますので、 ポイントだけ書いてきました。

 初診日がね、必ず年金加入中か20歳以下であるという事と、それから 9番に書いてあります、平成18年4月1日以前に初診の人は1年間、 保険料を納めてあれば良いという事があるので、まずここの会場に いらっしゃる方が、自分の初診年月日を思い浮かべていただいて、 その前に一年以上年金に加入していたかどうか?という事はチェックして いて下さい。

 今、障害が重くなくても65歳までに重くなった場合は、障害年金を もらえる可能性がありますので、ご自分の発病年月日、初診の年月日って いうのは必ずチェックしておいて下さい。それでもし、「私は1年掛けて ないわ」という方がいらして、「でも、障害が出てきてるのよね」って 言う方は、後で私にご連絡して下されば相談に乗ります。色々テクニック がありますので。


 次は3番目のですね、肢体不自由の用紙をもらってきて下さい。で、 目が非常に見にくくなっていれば目の方の障害に関する用紙も必要かも しれませんが、ま、皆さん、肢体不自由でまかなえると思います。それ から井上先生が主治医だったら上手く書いて下さるのかも知れませんが、 お医者さんは、病気のことしか書かないんですよ、データしか。

 皆さんが働けるかどうか、皆さんが生活していけるかどうか、それを 判断する能力も医師に求められてるんですね。ソーシャルワーカーには そういうのは一切求められてないので、私たちがやってることは医師に 焚き付けてですね、「こうやって書いて先生!」って頼むのが私たちの 仕事です。

 でも、書くのは医師なんですね。医師は言わないと書かない。労働能力 はどれだけ制限されるかっていう事は診察室で10分面接しても判りません。 皆さんが行って下さい。通勤に行くのにこんなに大変だとかですね、 こういうことが大変だって事を主治医に言ってないと、判らないんです、 理解できないです。

 ちょっとうるさいなと思われても、診察を受ける時、朝、痛くてこんなに 大変で、仕事が出来ないとかですね、仕事が終わって疲れちゃってその場で 寝たくなるとかですね、会ったらことごとく言っておいた方が良いと 思います〔井上注:メモにして渡しておいていただけると、医師は、診断書 を書く時に助かります〕。

 それが労働の制限。それから日常生活の不自由さ。それから検査の異常値は、 この病気に関係ないとか言わないで、全部書いてもらう。それから他の障害 があるときは初診日が同じでないと、バラバラの初診日だと、制度上非常に 面倒くさくって認定が難しくなっちゃうんで、これもちょっと細かいことを 話すとめんどくさいから話しませんが、そういう事があるのだという事を 考えておいて下さい。

 それから受給要件というのは、原則は、20歳から3分の2以上の額を 掛けてる事で、さっき言ったように、18年の4月1日以降の初診日の方は この原則が適応されます。


 ところで、障害年金というのはまず税金が掛かりません。それからお勤め になっていて3級をもらって働いたってかまいません。2級をもらって いたって、先生のようにお仕事していても構いません。年金をもらうという 事は働けないという事ではないんですね。

 年金制度に準じた障害が有るか無いかという事なので、直ちに年金を もらったら働けなくなっちゃうんじゃないかという事はありませんので、 そのへんはどこか頭の片隅に入れといて下さい。後、皆さんのご質問の中に よくあるのですが、働いてる方で、障害者だと言われたり、年金を もらったりすると言うことによってデメリットがあるんじゃないかという ふうに心配されてます。

 これはどんな病気の方の場合でも同じです。それが無いと言われたら嘘 になると思います。有るかも知れませんが、一流の企業は非常に理解が ありますので、却ってあった方が助かります。例えば身体障害者手帳を 取りますと、障害者雇用促進法というのがあってですね、大企業だったら、 身障者を雇用しなけりゃならないと言う義務があるんですね。

 ただ、大企業はお金持ちですから、そういう患者さんとか障害者を雇わない でおいて、お金を払って済ましちゃうという企業が後を絶ちません。 絶ちませんが、決してマイナスになるもんではありませんので、今、雇用 されてる方が、その障害認定を受ける事によって、社会的に良いことを やってるという事でクリアできれば、会社にとって決してデメリットでは ありませんから、障害者雇用に理解のある会社の方が健全だし成長もする のじゃないかと思いますので、弊害にはならないと思います。

 ただ、中小零細企業の方の場合は2つありまして、障害者の雇用促進法 を当てにして雇用している場合もあります。そういう人を雇ったら作業効率 が悪いから嫌だと言う会社もありますが、今は不況ですので、50人以上の 従業員がいるところであって、皆さんが手帳をお持ちになっていれば、 それを使った方が得だと思います。

 企業の方はそんなに抵抗感はありません。障害年金については3級を 取るとですね、中には、あなた3級をもらってるんだから昇給はしないで 良いでしょ!って言われた人も存じ上げています。それは無いとは 言えません。

 この不況下ですのであり得ますが、年金はもらい始めたらズーッと障害 が変わらない限り更新して出してればですねいただけるものなので、会社 に勤められなくなったときの準備金としていただいたお金を蓄えておくのも 方法でしょう。

 リストラに遭うときはすぐに遭ってしまいますから、その辺の天秤を 考えて取った方がいいか、そうでない方がいいかというのは自己決定ですね。 皆さんのご判断で。おおむね被害にあってる人の方が少ないです。圧倒的に。 もらって得してる人の方が圧倒的に多いというのが私の実感です。


 私のお話はこんなところで終了させていただくんですが、ご質問があれば 十分受けますし、こんな会場で個人的なことなので質問できないことも あろうかと思いますので、後で質問のある方はメールアドレスをお教え しますので会の方にお聞きになって下さい。もし皆さん今、ご質問があれば していただきたいと思うんですけども?


(井上事務局長)
 ありがとうございました。大変、歯切れのいいお話で、時間があれば、 あと2、3時間やっていただきたいと思うんですけど、残念です。でも、 せっかくですから、いくつかののご質問は可能です。今日、凄く嬉しかった のは、一番最初に磐井先生がおっしゃられた、「この会は変わった会で、 患者で医者という便利な人間がいるけど、それにあんまり依存してはいけない」 というお話。

 これは本当で、役員会で、いつも僕は「私が出過ぎじゃないか?」と 言ってるんですが、結局はそのまま……。家族に「あなたでしゃばり過ぎ」 っていつも言われてるんです。でも、私みたいな、ある意味便利な医者を 武器として利用してですね、自分が戦う……と。

 ASに限らず、どんな病気の人でも、本当にそうだと思います。医者は 使うもんです。それからいろんな公費助成なども、くれるのを待ってるん じゃなくて勝ち取るということ、努力しなきゃ勝ち取れない、黙っていても もらえる訳じゃないということ。私がいつも思ってることですけれど、 改めて磐井先生に言っていただいて感激しました。ありがとうございました。


 あと、とにかく役所とか役人は細かい、細かすぎるんで参っちゃいます。 ああいうものをシコシコ作るのが好きな人達なんだなぁとしみじみ感じます。 それからもう1つ感銘を受けたのは、身体障害者手帳はパスポートであると いうことですね。

 ですからもう取れるものは取っておく、情報はいくらでも転がっている んだし、聞けば教えてくれるんですから、自発的に良く調べて、あるいは 聞いて、取れるものは取れということです。言い方が悪いですけども、 これは国民の権利ですから、助成を受けられるものはどんどん受ける…… という事ですね。


 それから、僕は身体障害者手帳用の診断書を作成できる指定医(認定医) ですから、だいぶ書かせられます。当たり前ですが、特にASの患者さん のをね。けっこう歩いている人でも、体幹機能障害でうまく書けば通ります。

 審査の人があんまりこの病気を知らないもんだから、ヘェーそんな病気 なのって言ってるうちに通っちゃうんだと思うんですが、例えばF.N 副会長みたいにサッカーもスキーもやるという人でも、僕が書けば5級は 取れます。そんな状況ですから、取れる人は是非取っておきましょう。


 そこで、僕から一つ質問なんですけど、その時に必ずと言ってよい ほど患者さんに聞かれること、それは、障害者手帳を持っているという ことを会社に知られた場合のデメリットはないか、会社の人が役所に 調べに行くとか、そうすると役所が教えちゃうんじゃないか、そういう 心配はないのか?……ということです。僕は自信を持ってという訳じゃ ないけど、「まず大丈夫です」と言ってるんですが、実際問題として どうなんでしょうか?


(磐井先生)
 公務員が会社に教えるという事は、たとえ聞かれても絶対あり 得ないはずです。もしやったら、その人を告発してクビにしましょう。 懲戒免職に出来るんです。ただ事実をつかむのが難しいんで、尻尾を つかんでその人が言ってましたって事を証明しなくちゃなりませんけど。

 公務員自身にとって怖いですから絶対言わないです。ただ、判って しまう場合があって、それは税金の控除を使ったときですね。1年目は 確定申告で2月15日から3月15日の時に前年度、持ってましたよと出す んですね。

 初めの一歩っていうのは、会社の12月の源泉徴収のときに出すという のが普通なんですけども、知られたくないと言うのは、HIVのときはね、 普通、判られたくないからって言って税務署に話をつけて、毎年確定申告 をさせてもらうようなやり方をつけちゃってるような人もいるんですよ。

 でも皆さんの場合はそこまでやる必要は全然無いとおもうので、気に する方はやる方法はありますけど、税金だけです。税金は要するに会社 が全部税金をまとめて取って、それで納税するという形の源泉徴収という やり方をしちゃってるので、源泉徴収の時に障害者控除というのを申告 することになっちゃってるんですね。で、障害者であるということも わかります。


 で、スキーも行ったりして、ちょっとあの人、障害者かな、斜頸じゃ ないのと思われるぐらいの程度の方が手帳を取ってて、わかっちゃったら 困るというのは、ちょっと私にはその辺はどうなのかと思います。 どうしても隠したいというんで隠せばいい、やる方法はありますよって いう事ぐらいしか、ここでは言えないんですけど。会社が役所に調べに 行くとかそんな事は絶対にあり得ないと思います。


(井上事務局長)
 ありがとうございました。ちょっと安心しました。じゃ、めった に無いチャンスですから、ご質問を受けたいと思います。挙手でどうぞ。


(会員A)
 私、神戸から来ましたAと申します。身体障害者手帳ですね、 体幹機能障害や下肢機能障害で、我々の場合は取ると思うんですけども、 身体障害者手帳を取った後に加入した生命保険を使わなくならなければ ならなくなった時に、障害者手帳を持っていたということがネックに なると言うようなことがないんでしょうか?


(磐井先生)
 ASが理由で身体障害者手帳を取ったとしても、手帳を持っていた ということ自体ではなく、手帳を持つほどに重症のASだったということ になる訳ですから、当然、診断書にも既往症としてASのことを医師が 書きますので、契約前から発症の既存疾病ということでASに関わる 入院附加給付金とか死亡保険金は給付されないことも十分あり得ると 思います。

 でも、癌とか肝障害というような全く別の病気なら、普通は出るはず です。直接、関係ありませんから。


(会員A)
 そうするとASで下肢の身体障害が認定されていて、ASに関わる 例えば下肢機能障害が原因での病気だとか死亡だったら保険金は出ない という事ですか?


(井上事務局長)
 ASによる下肢の身体障害を認定されていた上に、後でASによる 下肢の障害で入院したり、死亡した場合には、まず出ないでしょう。別の 下肢の病気や怪我により死亡した場合は出るのですが、それでも、もともと (ASによる)下肢の機能障害が既存したということで、追加の下肢の 機能障害が出易かった、あるいはそれにより死亡する確率が一般人より 高かったと保険会社が判断した場合には、削減、つもり一部しか出ない場合 もあるようです。実際には、下肢の障害だけで死亡することはないでしょう けどね。


 生命保険はですね、よく話題になることで、実は、去年もこの会で出た んです。テクニックはあるにはありますが、痛み止めを飲んでた時に、 それを隠して契約すると、後で判った場合(お医者さんが書いた診断書の 既往歴の欄に記載があると)出なくなりますね。

 去年も言ったんですけども、基本的には生命保険っていうのは、公平な 負担という理念、つまり病気になってる人が入って、すぐに保険金を もらえたりすれば、他の健康な人が損しちゃうじゃないかっていうことに なるので、ある程度厳しいところはあります。

 一般の保険は社会福祉行政じゃないですからね。保険会社も営利目的で すから、大丈夫、病気でも全く心配無し、全部出るから……っていう訳に いかないってことですね。個別には、また相談してください。他に?。 会長、どうぞ。


(田中会長)
 身体障害者手帳を申請して診断書を書いてもらう場合、その認定医 の資格を持った医師に書いてもらわなければならないんですが、話に 聞くと、非常に甘い認定医と、厳格な認定医と様々っていう事を聞きますが、 どうなんですか?


(磐井先生)
 私の経験では整形外科医は厳しいと思っています。井上先生は違う みたいですけど。例えば神経内科の医師で脳卒中の後遺症なんかは全部 通るように書くんですね。医師自体の意識がですね、リハビリテーション を考えて如何にしたら通るかという事を集中して書いて下さる傾向が あるんですが、整形の先生というのは厳しいですね。

 自分はこれだけ治してやったんだと言いたいのかなと、これぐらい 良くなったんだからと、その結果身体障害になんてなって欲しくない という気持ちがないとは言えません。切断とか、人工関節入れてれば 別なんですけど、なかなか厳しいかなというところはあります。

 先生がおっしゃったように、体幹機能障害で書けばいいんだという事に リハビリの先生が今年気づいたって、私がそういったら、その先生、 脳卒中の診断書も体幹機能障害って書くんですね、みんな書くんですよ。 あまりにも体幹機能障害が多いのでおかしいなって思ったんですけど、 それだとベッドも支給され、いろんなものが支給される対象になるので 良いんですね。

 ところがこの前、1種と2種で、脳梗塞の人達が旅行会をしようと したんですが、一人だけ1種で、他の方がみんな2種だったんですね。 その理由というのが体幹機能障害じゃなくて上肢と下肢の合併でやって たもんですから2種になってたんです。

 そしたら奥さん付き添いがてきないから、あなた達旅行に来ないで くれって言われたって事で大騒ぎになって、先生がビックリしてですね、 1種と2種はどういう違いなんだと質問されました。

 見たら、結局、体幹機能障害と書けば1種が取れたのにっていうこと もあるくらいで、体幹機能障害を意識されると結構、上のレベルに 書けるという事と、それから著しい障害とかかいてありますので、それを どういうふうに先生が表現してオーバーに書いてるかっていうのもポイント です。

 診断書にも個性がありますね。私も沢山見てきましたけど、なんでこの人 がこうで、この人がこうじゃないの?っていうことは同じ病院の中でも あります。


(井上事務局長)
 整形外科医の方が冷たいのは、書き方が杜撰(ずさん)ということ もあると思います。神経内科医の方が、よっぽど患者さんをじっくり診て しっかり書いてくれますからね。ただ体幹機能の著しい障害はね、杖無し で2キロ歩けないともう5級が取れちゃうんですよ。書く医者のちょっと した書き方、だから、おかしな話ではあるんだけど、診断書を書く医師に よって等級が違ってくるので、医者は選んだ方がいいということになります。

 僕は甘いもんだから、しょっちゅう照会状が来て、目をつけられている ようですが、でも、面倒だけど、照会状の回答にウダウダ書いて戻せば、 だいたいそのまま通っています。あっ、1、2回、私の書いた等級を1級 下げられたことがあったかな。


(田中会長)
 いいですか? リウマチの方で人工関節を入れられて、股関節も 膝関節も楽になられたんです。その頃に再申請されたら等級が軽くなって しまったんですね。今はそういうことは無いでしょうか?


(磐井先生)
 普通は無いですよね、前の状態で書いていいという事になってる ので、軽くなった理屈というのは良く判らないですが。


(井上事務局長)
 書き方がよっぽどおかしかったんでしょう。人工関節が入ったと いう事だけで、いくら動けても、歩けても、自動的に「関節の全廃」に なります。「全廃」、つまり全く関節が固まって動かないのと同じに なるんです。医師向けの診断書作成マニュアルにちゃんと書いてあります。

 その認定医はそれを読んでいなかったということかもしれません。 自分がやった手術であまりによくなっちゃったんで、自慢げに「走れる」 なんて書いちゃったんじゃないでしょうか。あるいは逆に、患者さんが、 そのお医者さんに嫌われてるとかですね。

 僕、こんなに元気なのに2級ですからね。それに1種です。ところで、 1種だと介護がいなきゃ絶対、割引で電車とか飛行機に乗れないんですか?  僕、一人で乗ってますけど。


(磐井先生)
 普通はそういうことになっていて、売ってくれない駅員さんもいます。


(井上事務局長)
 あっ、そうですか?、今まで、全部売ってもらってますけどね。


(磐井先生)
 見落としてるんじゃないですか? わからないですけれど。そういう ふうに言って断られたという方を何人も聞いています。


(井上事務局長)
 勉強している駅員さんということですね。


(磐井先生)
 そうだと思います。手帳も一生懸命見る人もいれば表面しか見ない 人もいるし、切符販売係もいろいろなんですよ。だから凄く不愉快な思い をしたという人もいます。


(田中会長)
 だけど目の不自由な方はほとんど1種ですね。全盲の方ね。だけど 一人でプラットホームへ行かれてよく転落なんかされてますが、あの人達、 みんな一人で行動されてますもんね。なんとも言えませんね。


(A委員)
 少なくともこの資料10の8 の表を見る限り、1種の人も単独で行動 できると思うんですけども。1種も2種も単独で行動する場合は本人で 5割引、1種は介護者とともに乗る場合は介護者も5割引という読み方が 出来るので、これは1種で単独で搭乗してもまったく問題ないと思うん ですけども。


(磐井先生)
 解釈上はそうだと思うんですけど、駅員さんにそういうふうに 言われたという事で苦情というか、どうなんでしょうか?という問い合わせ が、毎年後を絶たないというのが現実なんです。JRのおおもとに、おかしい じゃないのか?と言ったら通るのかとは思いますね。


(井上事務局長)
 この表見せて、そこで説得すればいいんですよね。じゃー、次、 そちらどうぞ。


(会員B)
 初めまして、新潟から来ました。今回初めて出席しました。病気に なってるのは私の17歳の息子なんですけども、いろいろ聞いてきてあげるねと、 今日は新幹線に乗って来ました。今の講演を聞いてて、とても嬉しかった のは障害者手帳を持ってるのはパスポートを持ってるのと同じだという、 その言葉をお聞きしただけで、今日この場に来てとても良かったと 思いました。

 というのは、息子は今、特に膝の痛みがとても強くて松葉杖2本がないと 歩けないものですから、井上先生にお聞きしたらプールの中で歩くと身体に 浮力がかかって膝に痛みがかからないので訓練し易いという事で、新潟の プールを探したんですが、手すりのある市営プールはどうしても無くって、 障害者用のプールでないと駄目っていう事がわかって、そこに行こうと したら手帳が無いと入れないと言われたんです。

 それで病気になった事のショックがまだ覚めやらないうちに手帳をもらう のはちょっとショックだったんですけども、どうしてもプールの中で歩かせ たくって、整形外科のお医者さんにお願いしたら診断書を書いてくれまして、 身体障害者の肢体不自由の3級をいただくことが出来たんです。

 市役所にもらいに行ったときに、プールに連れて行けるのは嬉しかった けれども、手帳をもらったのが凄くショックで、もし治ったらどうすれば いいんですかと市役所の方に聞いたら、治ったときには要りませんって 言って下さって。今日、この資料 を見るとそういう日は無いのかなと思って ましたけど、手帳をもらった事でパスポートをもらったと思えば良いと。 本当に今日はありがとうございました。


 それから3つだけ質問してよろしいでしょうか? 今、18歳でうまく いけば来年で、もし浪人すれば再来年に大学生になるんですけども、 上の子達はアルバイトをしながら、自分の働いたお金と親の仕送りで 大学を卒業したんですけども、本人は自分はこういう体だからアルバイト できないからなにか奨学金みたいなのをもらえる方法があるかな?って 言ってます。

 高校のときは先生が資料をくれまして、身体障害者手帳を持ってる 高校生の奨学金って言うのをもらってました。それで自分で欲しい本 とか買ってました。

 もし大学に入ったら障害者手帳を持ってることで奨学金をもらえるか どうか?ということと、16歳のときに障害者手帳をもらいましたので、 もし18歳に、3月になるんですけども、更生医療制度を受けるために、 もう一度手続きをしなくてはならないのか?ということと、それから 20歳になったとき、初診が16歳になってますので障害年金を受ける時に、 20歳を過ぎて1年の3分の2以上を年金を支払ってから、障害年金用の 診断書を出せばいいのかな?って、判らないことばっかりなんですけれ ども、まだ若い子で、これからのことでいっぱい勉強しなければ判らない ことがあるので、電話番号も後で教えていただきたいと思います。


(磐井先生)
 一つ目の大学の奨学制度、なかなか難しくって全部調べきれない ですが、ご質問の趣旨は判ったんですけど、まず私、福祉系の大学です けど、奨学金制度は障害者のためにやってるというのはまだ聞いてない んですね。それぞれ大学で違うかもしれません。ミッション系の大学で は有り得ると思うんですけど、ちょっとまだ聞いていないので、今の 段階では判りません。

 判ったらお教えしようと思うんですけど、どこでもやってるものでは ないと思います。それから更生医療制度を使うときに、身体障害者手帳 をお取りになっていれば、年齢は関係ないので、更生医療は使えると 思います。受けるときにはその手帳を土台にして窓口で用紙をもらって お医者さんに書いてもらって、手術とかされる時にお使いになれば よろしいかと思います。

 それと年金のことなんですけど、ざっくばらんに言ってですね、 その方の将来がどれだけの障害になるか判らないのでなんとも言えない んですけど、万が一ですよ、就労がそれほど出来ないような病状になる と想定した場合の話ですけど、そういうときにはもう20歳以下の発病 ですから、極端なことを言えば「年金かけなくて良いですよ」って いうぐらいの話なんですね。

 ただし、発病はその時のことで、後は65歳になるまで、お若いです から今後の年金改正を視野に入れると70、75歳になるまで、老齢年金 まで出ない訳ですよね。この病気で障害年金をもらうことがあるという 確率は判らないのですが、やっぱりこういう病気を抱えていれば、この 初診が影響してくると言うのが一番大きいと思うんです。

 それと極端なことを言えば、かけなくても障害年金をいずれもらえる から掛けなくてもいいんじゃないのというぐらいの話です。3分の2と いうのはこの病気に関してまったく必要ないです。で、20歳以降で、 他の病気のために障害になったか、またはそれから交通事故にあった ためにとかいうことであれば、別ですけど。

 健全な考え方としてはもちゃんと普通にかけて下さい。この病気に 関してのことを言えば、かけようとかけまいともらえますよ、いずれ ……っていう事になります。


(会員B)
 じゃあの、20歳になった時に、周りの子達もそうだったんです けど、市役所に行って、経済状況とか書いて、年金は払わなくていい、 大学生の間は払わないという書類を書くんですけど、20歳になった時 に障害者手帳を持って済んでいる市役所に行って相談すれば判りますか?


(磐井先生)
 そうですね、20歳の時にはまだね、障害年金2級をもらえる状態 ではないのではないかと思うので、20歳の時に直ちに年金はもらえない んじゃないかと思うんですね。それが、30歳、40歳になった時に不幸に もそういうふうになられたら、16歳のときの発病でということでもらえ ますので、それで掛け金が3分の2有るか無いかは関係ないと思います。


 現在の制度では、20歳前が初診日で初診から1年6ヶ月以降に障害年金 2級に該当する程度の障害の状態になれば、掛け金をかけていなくても 障害基礎年金を受給することができます。ただし、受給できる方の毎年の 所得制限があります。(20歳前が1年半前の時は20歳の時点で)


 2003年現在、たとえば、単身者の場合360万4千円以内の所得で全額 支給、462万1千円以内で一部支給となります。ですから、20歳以下の 発病で身体障害者手帳を持っていても20歳の時点で年金法の障害年金 基準に該当しなければ、一般の方と同じように手続きが必要です。障害 年金2級以上の対象になれば免除請求ができます。


(井上事務局長)
 判りました。かなり特殊な状況ですから、磐井先生、今日で我々は 腐れ縁と思って諦めて下さい、あとで個別相談に乗ってあげて下さい ませんか?。「AS友の会総会」で聞いたということでお電話していい ですね?


(磐井先生)
 メールでお願いします。ご自身の連絡電話番号をお知らせいただ ければこちらからご連絡します。(注:転勤されるそうです)


(井上事務局長)
 判りました。「AS友の会総会」で磐井先生のお話を伺ったと言って、 遠慮無く……というと磐井先生に失礼ですけども、もしどうしてもっていう 場合には電話して相談に乗っていただきましょう。


 ところで、人工関節の手術でも、先に申請しておけば、補助がでるんですね。 実は、私は、そういう診断書を書かされたことがありません。自己負担金額 一覧表の「前年の所得税額」は税額ですね、年収額ではないですね。 そうすると、ASで手術(ほとんど人工関節)を受ける人は、けっこう助成 がもらえる人がいますね。


(磐井先生)
 いると思います。今、医師て所得がかなりある方が更生医療を70歳以上 で受給しています。例えば、その方は老人医療で自己負担は40,200円とお食事 代ですが、更生医療対象となって自己負担が12,500円になっています。


(井上事務局長)
 そうですか。他にどなたか?


(会員C)
 手当ってあるでしょ? 特別障害者手当て、これちょっと説明して 欲しいんですけど。


(磐井先生)
 国で共通でもらえるのは、重複障害者の1級、2級の26,620円、 重複障害者っていうのは2級で肢体不自由を持っていて、目のほうでも2級 を持ってるとか、それの重複っていうことです。何でもらえるか? 生活 して行くのに健康な人よりは色んな物品がかかるだろうということだと思い ますけどね。


(会員C)
 それよりももっと自分で食事が出来ない人とかね、その方が大変 でしょう? でもそれが単独の障害ならばそれが出ないということですか?


(磐井先生)
 単独の障害はだいたい自治体の制度になっているので、例えば東京都 の場合だったら、1級、2級だったら15,500円、毎月出るんですね、 お住まいになってる自治体によって異なります。多分、手当てに関しては 東京都の方が一番かと。


(会員C)
 その手当てというのは国民?手当て? 障害年金ではもらえないの?


(磐井先生)
 障害年金じゃなくて、身体障害者手帳を持ってる方の、国が国民全員 を対象として出してる手当てとして書きました。


(会員C)
 2級があればこれもらえると?


(磐井先生)
 いや、1級と2級、重複障害。


(井上事務局長)
 1級と2級だけですか? 例えば2級と6級とか?


(磐井先生)
 駄目なんです。一番軽いのは2級二つなんです。


(会員C)
 2級二つというのを例で挙げて下さい。


(磐井先生)
 2級二つの例ですか? えーとですね、両眼の視力の和が、 ほとんど見えないですよね、失明じゃないけどほとんど見えなくて、 それで肢体不自由が2級で、歩行がほとんど困難で、そうですね両股関節、 人工関節を入れてて3級と3級で2級とかそういうのが合わさる加算点数 法になってますね。肢体不自由もみんなね。それと別障害のもので2級で、 2級と2級。

 そういう感じでしょうかね。で、内部障害なんかで2級は無いですから、 ペースメーカーを入れてて、それで肢体不自由が2級で。(あくまで常時 特別の介護者を必要とする前提です)


(会員C)
 え、ペースメーカー1級? ピンからキリまであるのに、そんな とんでもない!


(井上事務局長)
 わざわざ入れるんじゃないでしょうね?(笑)


 第2部、時間が押してますけど、第3部の一部のような内容ですから、 続けてやっちゃいましょう。倒れる人がいない限りは。こんな機会は 滅多にありませんから。


(田中会長)
 すいません。私は1級なんですけれども住宅改造費。この制度は 地域によって違うんですかね。内容ってのは?


(磐井先生)
 まったく違いますね、それで国が介護保険を作ったときには、 東京都ってその時一番大きいのは380万ぐらい江戸川区で出してたん ですね。それでまったく出てない自治体もあったんです。その時に 介護保険で20万円出すから、これで国が責任を持った全国共通の住宅改造費 を出したというふうに言われたんですね、そのくらいですね。 自治体ではまったく無いところがある。身体障害者でもまったく無い ところがあると思います。


(田中会長)
 あるんですか? あの、和歌山市では100万円を限度として というのがあるんですけども、一回なんですね。その時40万円使って 60万円残っててもそれはそれで終わりということになってしまって るんですが、他の所もそうなんですかね?


(磐井先生)
 ええ、それもそれぞれの自治体の考え方でいいんですよね。 制度って言ってもそれは自治体でしているものなので、介護保険 でいえばですね、20万円一回使って、介護度が変わって状態が 変わったらまたいいよというふうにはなってます。

 例えば東京都、今、ひどくなっちゃってるので、東京都の話をすると 腹が立ってくるんですが、東京都の場合、昔はですね、例えばAという 所で住宅改造費250万、使ったとしますよね。自治体によってはそれが 使えなくなったら年度が変わればまた使えるってやってたんです、昔。

 でも今は、20万円の介護保険以外は使えない、身障の制度だけで あればね、良いんですけど、介護保険が優先する人には使えなかったり ですね、めちゃくちゃになっちゃってるので、こういうのは当たり前 ですとか、こういうべきですとかというのがね無くなっちゃって。


(田中会長)
 判りました。この更生医療制度ですか、もう少し具体的にお尋ねしたい んですが、ちょっと判らない部分があって、この最後に移送ってありますね、 これはどういう場合の移送なんですか?


(磐井先生)
 例えば田中さんが先ほどのお話で言うと介護タクシーをご利用 できてる、座位が出来てる方ですよね、だけれど寝台車をつかわなければ いけないという方もいらっしゃって、一つの病院から、その手術をするの には、順天堂の井上先生の所に行かなければ出来ない、更生医療指定医療 機関にもなってる、といった場合ですね。その時の寝台車車両費についても 出すってそういうようなことです。


(田中会長)
 それは更生医療指定病院っていうのを限定してですか?


(磐井先生)
 そうです。あくまで更生医療の指定医療機関を取ってる病院で なければ使えません


(田中会長)
 その制度の指定病院から指定病院へ? 他の病院からは駄目 なんですね?


(磐井先生)
 いえいえ、だから、更生医療指定機関じゃないところでこういう 手術をすれば、こういうのが出来るというのが判って更生医療機関に 行くっていう時とか、ご自宅で寝たきりの方で、まー診察を受けなければ 更生医療を受けられない訳ですから、普通は無いかもしれませんが、 医療機関のどこかに入れられてて、更生医療で手術を受けるといった時に 病院を移らなければならない場合、寝台車料金という意味だと。


(田中会長)
 判りました。


(井上事務局長)
 お恥ずかしいけど知らないんですが、大学病院などは、指定病院 ですよね。


(磐井先生)
 必ずしもそうとは限りません。庶務の方に聞いてみてください。


(井上事務局長)
 はい、Dさん。


(会員D)
 年金を支払わなくて良いというところを?


(磐井先生)
 年金と身体障害者手帳はイコールじゃないので、まったく別物なので、 身体障害者手帳を持ってるから直ちに払わないで良いということはまったく ありません。障害年金を受けた人、手帳じゃなくてですね障害年金を受けた人 っていうのは免除申請をすれば、掛け金も掛けなくて良くなります。


(会員D)
 障害年金と障害者手帳は?


(磐井先生)
 手帳は障害年金とまったくつながりも無いし、基準もなにも全部 違うんです。それはリンクして考えちゃいけないんで、別のものです。

(井上事務局長)
 等級の内容も全然違いますよ。障害年金の入っていた共済とか 社会保険、国民保険、これで請求してもらうんです。身体障害者手帳 はまったく関係なく誰でも入れる、誰でも受けられる、全然別ですよ。 等級も全然違いますよ。障害年金というのは3級とか2級とか3つとか 2つしかないんですが、身体障害者は7つあるんです。全然別です。


(磐井先生)
 だから手帳を持ってるということで、障害年金の何かのサービスに 活かすということは全くできないんです。障害者手帳を私は何級を持って いますと言っても、なんの意味もないということなんです。判ります?


(会員D)
 そしたら基本はなんなんですか? 手帳と障害年金、障害が何級とか ありますよね、手帳も何級とかありますよね? それの違いというか?


(磐井先生)
 違いというか全く別のものです。


(会員D)
 そしたら2つ持ってるという可能性があるというもんですか?


(磐井先生)
 そうですね、1級、2級と同じ表現になってますけどまったく別の ものなんです。


(井上事務局長)
 僕、2つ持ってますよ。身体障害者2級。私立学校の順天堂で働いて いる時の発病ですから、私学共済の障害年金の等級が2級。たまたま等級は 同じなんですけど、全然別。


(磐井先生)
 だから判り易い例を言うと、人工透析の人は障害者手帳1級なんですね。 ペースメーカーの人も1級なんですね。だけど年金は取れません。透析の方は ですね、厚生年金の3級でも合併症が無いと取れないんですね。だから制度が まったく違うので、1級、2級という言葉の響きは関係ないんです。

 それぞれの障害に応じていて、どちらかというと肢体不自由の方というのは 似ている部分はありますが、まったく違う制度ですから、手帳で2級を持って るから年金がどうのこうのという話にはならないんです。


(会員D)
 手帳を持ってる人も年金を払わなくてはいけないということですか?


(磐井先生)
 それはそうです、基本は。


(会員D)
 先ほどの方は手帳はあって20歳前で、この病気を発病したら年金は 払わなくても免除されるみたいな……。


(磐井先生)
 免除というかお仕事につけぱ厚生年金は天引きされますから、それは 払わなければならないですよね。国民年金も払わなければいけないですよね、 本当は。でも国民年金には免除申請という手続きが障害基礎年金取得者には ありますから、その手続きをしておけばよいということを申し上げました。

 障害基礎年金2級がもらえていて障害が軽くなることがないとした場合には、 老齢年金の方が、障害基礎年金額より低いので掛け金をかけても意味がないと いうことです。


(会員D)
 というのね、私の子供、発病はしてませんけれども、今、25歳です けれども、いつなるか判らないのがこの病気なんですよね。あっちこっち 痛いみたいな症状を言いますのでね、きつい痛みじゃないから多分大丈夫 だろうと。でも、今の子はどうしても、年金とか支払いが大変なんです よね。

 年金は払わないという傾向で行ってるのでね、払わなければ何かあった 時、交通事故とか、いろんなことがあった時には障害年金は出ないと、 それが怖いから子供には支払いなさいと言ってるんですけども、なかなか 理解が出来ないんです。


(磐井先生)
 あくまで20歳前の発病の人以外は、年金は絶対に入らなければ。 生命保険に入った方が得だとよく相談が来るんですが、腐っても国の 制度で税金を使ってやってるもんですから、年金の方が絶対有利ですね。


(会員D)
 保険の方に走りがちなんです、年金の方が有利とはどの辺が有利?


(磐井先生)
 要するに生命保険というのは、掛け金を皆さん掛けたものだけで 独立採算でやってるものですよね。だけど年金っていうのは国がちゃんと それに税金投資を半分してる訳ですよ。それで保養所を建てて赤字が何十億 、何百億とか黒いうわさが絶えませんが、それでも元々税金投資をしてる ものですから、まったく民間の企業で皆さんの掛け金だけでやっている ものと勝負にならない訳じゃないですか。

 初めから税金入れてる訳ですから。だからそれが民間の保険よりも損だ とは基本的にありえないです。


(井上事務局長)
 判りました。ちょっと観念的な話になってきちゃったし、時間も なくなりましたので、磐井先生、長時間、本当にありがとうございました。


(A委員)
 すみません、こだわりますけど。 資料10の8の表で、よく読むと ですね、第1種で単独の場合には制限があるんですね。対象となる切符の 種類が片道の101キロ以上の場合の普通料金しか割引にならない。 で、介護者と乗る場合は普通乗車券、回数券、特急券、定期券ははっきり しませんけど、全部割引になるみたいですね。

 おそらくその駅員さん良く知っていて、この表を持ち歩くのはかえって 藪蛇かもしれません。


(井上事務局長)
 なるほど。ありがとうございました。

では、磐井先生のご講演、質疑応答これで終わります。長い間ありがとう ございます。皆さん盛大な拍手でお送りしましょう。


 どうも。だいぶ時間が押しちゃいました。ホテルにチェックインする 時間が無いかもしれませんが、3時45分から第3部を始めたいと思います。 質問・提案用紙書き終わりましたら前の方に持ってきて下さい。後ろに お茶があるのかな? では休憩して下さい。


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