海外の文献から


 今号から、友の会の賛助会員で脊椎炎の専門医である順天堂大学 膠原病内科の小林茂人医師が、ASに関する海外の学術文献から会員の 皆さんにとって興味深いテーマの論文を選んで、その邦訳を寄稿して 下さることになりました。

ASの温泉運動療法の有効性について
(Arthritis care Research 45 : 430-438, 2001 より)


小林 茂人
順天堂大学膠原病内科
(賛助会員)


目的:
 AS患者さんの治療として、温泉運動療法の効果を検討した。
方法:
 120名のオランダ人の外来患者さんを、40名ずつ3つのグループに ランダムに割り当てた。グループ1は(48±10歳、男女比25:15) オーストリアのBad Hofgasteinの温泉リゾートで、グループ2は (49±9歳、男女比28:12)オランダのArcen での温泉リゾートで、 温泉治療を行った。対照群は48±10歳で、男女の比34:6 、自宅に とどまって、毎週、集団理学療法を続けた。
 温泉治療は3週間行われ、集団運動訓練、歩行、矯正療法、水治療法、 スポーツなどを行った。全ての患者は、その後37週間、週1回の集団 理学療法を継続した。主な結果の評価は、機能の改善、患者の全体的な 満足度、疼痛と朝のこわばり持続時間であった。そして、全体の改善度で 評価された。〔参照〕
結果:
 全体の改善度は経時的に有意な効果を示し(P < 0.001) 、 各グループ間での温泉治療効果も認められた(P = 0.004) 。 開始4週後の全体の改善度は、温泉治療のグループ1、グループ2を 対照群と比較すると、それぞれ有意に改善した。〔図1参照〕
 16週から40週後には、グループ1は有意に改善を示したが、 グループ2は対照群より有効である傾向が見られた (統計的な差違はない)。
結論:
 AS患者さんにおいて、薬物治療と毎週の集団理学療法に加えて、 温泉運動療法の3週間コースは有効であり、この効果は、少なくとも 40週間続くと考えられた。


(表)グループ別温泉治療の概要
Group1
温泉治療
Bad Hofgastein
(オーストリア)
Group2
温泉治療
Arcena
(オランダ)
対照群
自宅
午前
 1時間の集団運動訓練
 30分の歩行
 ベッド上の姿勢矯正
 (14分〜30分)
午後
 1時間Gasteiner
 Heilstollen に行く
または、
 30分の水治療
 30分の温泉水浴
 1時間のスポーツ
午前
 1時間の集団運動訓練
 30分の歩行
 ベッド上の姿勢矯正
 (14〜30分)
午後
 2×15分のサウナ
 30分の温泉水浴
または、
 30分の水治療
 30分の温泉水浴
 1時間のスポーツ
週1回の集団理学療法
 1時間の集団運動訓練
 1時間のスポーツ
 1時間の水治療
*温泉治療は、週5日で3週間.別に週末にHeilstollen のサウナに行く


温泉−運動療法の効果
図1


訳者注:最近ASの運動療法の有効性に関する
    報告が多く取り上げられている。運動療法
    は特に重要であると考える。



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