第17回日本脊椎関節炎研究会


平成19年9月8日 愛知県民文化会館

会長 渡部 昌平(愛媛大学大学院研究科・運動器学)


〔一般演題1〕

  1. 腸管型ベーチェット病の経過中に大動脈弁閉鎖不全症を合併した2症例
    高塚由起 ほか
    東京女子医科大学・膠原病リウマチ通風センター 内科

    〔要約:口腔潰瘍、外陰部潰瘍、結節性紅斑、ざそう様皮疹、 関節痛などと小腸の多発潰瘍などを併発した腸管型ベーチェット病で、 大動脈弁閉鎖不全・逆流が発見され、 弁置換術が行われた52歳と60歳の女性の症例〕

     (注:ASにも大動脈弁閉鎖不全がみつかることがあり、 症状がなくとも、一般人よりは慎重に心・ 循環器系の定期検査を受けておくべき)


  2. ベーチェット病に伴う関節炎に対するインフリキシマブ (レミケード®)の投与例
    忽那辰彦 ほか
    愛媛大学大学院医学系研究科・運動器学

    〔要約:15歳発症で多発関節炎(一部関節破壊) を伴うベーチェット病を発病、 種々の抗リウマチ薬、ステロイド剤なども無効なため、 インフリキシマブを投与したところ、 症状は軽減し、血液検査結果も改善した〕


  3. Acromegaly(末端肥大症) 様の初発症状を呈した特発性肥大性骨関節症の1症例
    安達永二郎 ほか
    道後温泉リウマチセンター

    〔要約:顔面の皮膚の肥厚、ばち指(指先が腫大)、 多発関節炎(腫脹、こわばり、疼痛)、 レントゲン上で骨膜の肥厚を呈する特発性肥大性骨関節症の報告〕


  4. 臥床から6年の経過で死亡した結核性脊椎炎の一例 (明治期の史的考察)
    仲田公彦
    今治セントラル病院

    〔要約:喀血で発症し、背部膿瘍、結核性痔瘻、 下肢麻痺、膀胱直腸麻痺を発症し、 遂には結核性痩孔が全身7ヶ所となり、 腸結核も併発して結核菌発見後20年、 レントゲン線発見後7年の1902年に死亡した 34歳男性の症例の紹介と日本の結核に関する歴史的考察〕


〔一般演題2〕

  1. 脊椎炎を合併したSAPHO症候群の検討
    瀧川朋亨 ほか
    岡山大学病院・整形外科

    〔要約:SAPHO症候群に脊椎炎(1/3に合併) を合併した10症例の分析。
     亜急性発症が3例、慢性発症が7例、8例に掌蹠膿疱症、 5例に胸肋鎖骨異常骨化症を併発。
     6例が複数椎体罹患、 脊椎病巣の病理組織検査では(非細菌性)非特異的炎症のみ〕


  2. 破壊型脊椎炎に対して手術を行ったSAPHO症候群の2例
    瀧川朋亨 ほか
    岡山大学病院・整形外科

    〔要約:SAPHO症候群により(掌蹠膿疱症、胸鎖関節炎で発症) 脊椎破壊が生じて、 頚部痛と四肢麻痺が出現し病巣郭清術およひ脊椎固定術を行った63歳女性の症例。

     胸鎖関節炎と背部痛があり、 化膿性脊椎炎と誤診され抗生物質が投与されたが無効で、 その後SAPHO症候辞と診断され、 脊椎破壊性病変に対して、 病巣郭清と後弯変形防止のために骨移植による脊椎固定術を行った69歳女性の症例〕


  3. SAPHO症候群に合併したRAの1例
    水木伸一 ほか
    松山赤十字病院・リウマチセンター

    〔要約:20代に両肩関節痛で発症し、 多発関節炎に発展、血液リウマチ反応が陽性で、 炎症反応も亢進、多くの関節裂隙狭小化、 SAPHO(掌蹠膿疱症骨関節症) に特徴的な胸肋鎖骨間の過剰(異常)骨化像、 手関節骨性強直などが見られ、 種々の抗リウマチ薬が授与されたが病状改善無く、 抗TNFαの使用を考慮中。

     SAPHO症候群に関節リウマチが併発したのか、 リウマチ因子陽性のSAPHO症候群なのか?〕


  4. 掌蹠膿疱症性膝関節炎に対し滑膜切除を行った1例
    深澤知美 ほか
    愛媛大学大学院医学系研究科・運動器学

    〔要約:通常、掌蹠膿疱症に伴う骨関節炎(PAO)は、 胸肋鎖骨部に炎症(→異常骨化) を生じることが多いが、膝関節炎を生じ、 増殖した関節内滑膜を切除して病状の改善をみた症例の報告〕


  5. 半月体形成糸球体腎炎を合併したSAPHO症候群の1例
    池田祐一 ほか
    愛媛大学付属病院 第一内科

    〔要約:数年前より前胸部痛、掌蹠膿疱症、 貧血のある58歳男性。

     レントゲンで胸肋鎖骨間に異常骨化像を示し 掌蹠膿疱症性骨関節症(PAO→SAPHO)と診断されたが、 尿検査で異常が発見され腎機能障害の合併が判明。

     病理検査で半月体形成糸球体腎炎の診断、 ステロイド、免疫抑制剤(エンドキサン®)、 ビスホスホネート(骨粗鬆症治療剤)を使用中の症例の報告〕

    (注:SAPHO症候群
     掌蹠膿疱症と同様の皮疹が掌部(てのひら) と蹠部(足の裏)以外の部位に発生し (膿疱性乾癬と呼ぶ場合もある)、 重度のざ瘡(ニキビ)やその他感染巣 (慢性扁桃腺炎、慢性中耳炎、ムシ歯など) を併発していることが多く、 これら慢性病巣にいる細菌(常在菌の場合も多い) に対するアレルギー反応による病態ではないかと考えられている。

     これらのうちで骨・関節症状(脊椎関節炎)を呈し、 レントゲン上無菌性骨炎(脊椎椎体に多い) を呈するものをSAPHO症候群(Synovitis,Acne,Pustulosis Hyperostosis and Osteitis)と呼ぶようになった。

     以前からある掌蹠膿疱症性骨関節症(PAO) はこれに含まれるものと考えるのが一般的となっているが、 血清反応陰性脊椎関節炎(症)、 すなわちSNSAに含めるべきものかについては、 未だ議論がある)


〔特別講演〕

「無細胞蛋白質合成法 我々は何者なのか」
遠藤弥重太
愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター


〔ランチョンセミナー〕

「まだまだ遅れている脊椎関節炎の診断」
村田紀和
協和会病院リウマチセンター

〔要約:(血清反応陰性) 脊椎関節炎は関節リウマチに比べてまだ関心が薄いが、 近年、病態の研究や治療面でも格段の進歩が見られ、 確定診断をすることで、 適切な治療を早期に開始することができ、 患者の信頼を得、細やかな配慮を通して、 患者のQOLの向上に有益なものとなる。 最近遭遇した症例を通して、さらなる喚起を促したい〕



〔シンポジウム〕
「血清反応陰性脊椎関節症と線維筋病症の関連性をめぐって」

  1. 血清反応陰性脊椎関節症(SNSA)と線維筋痛症(FM)の類似性
    戸田克広
    廿日市記念病院 リハビリテーション科

    〔要約:SNSAの中心となるASで女性患者の半数は FMであったという報告もあり、両者には類似性がある。

     ASは腰殿部から初発することが多いがFMでもしばしばみられ、 FMの圧痛点にはASの腱靭帯付着に近い部位もあり、 さらに、両者には、朝のこわばり、 運動による疼痛軽減、リウマチ因子陰性、 疼痛のみならず疲労感や下痢なども合併することがある… などの共通点が多い。

     いずれも、症状は精神的ストレス、天候、 月経周期などと相関することが多い。
     両者の診断規準をそれぞれに満たしている場合には、 SNSAとFMが合併していると考えるのが妥当。

     両者とも不全型の病態があり、この場合は診断が困難。 また、仙腸関節には病的意義の乏しい所見 (硬化、狭小化)があるので、診断には注意を要する〕


  2. 線維筋病症(FM)と本邦疫学調査からみた血清反応陰性脊椎関節症 (SNSA)との関連
    松本美富士
    藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 内科

    〔要約:FMの全国疫学調査によれば、 FMの3%でSNSAと随伴して発症しており、 以前にSNSAと診断されていたものが6%あった。

     自験例では、 14.9%がAmorによるSNSAの診断規準は同時に満たしていた。
     しかし、SNSAに含まれる個々の疾患(AS、反応性関節炎、 乾癬性脊椎関節炎、炎症性腸疾患に伴う脊椎関節炎など) のそれぞれの診断規準を満たすものは1例もなかった〕


  3. 広範囲疼痛患者における多発性付着部炎(MEI) と線維筋痛症(FM)について
    浦野房三
    篠ノ井総合病院リウマチ膠原病センター

    〔要約:広範囲疹痛を主訴として受診した症例について 脊椎関節炎の評価項目にあるMEI (30ヶ所の圧痛点.靭帯付着部) とFM(18ヶ所の圧痛点) の合併状況についての調査によれば、 この両者に意義ある相関が見られ、 脊椎関節炎とFMと病因は全く異なるものであるものの、 両者間に類似性があることが確認された。
     広範囲疼痛症例の診療には、MEIも考慮されるべき。〕


  4. 線維筋痛症と胸肋鎖骨病変
    行岡正雄
    行岡病院 整形外科

    〔要約:掌蹠膿疱症性骨関節症(PAO) で見られる胸肋鎖骨炎を示唆する 骨シンチグラフィー検査上の陽性所見が見られ、 これらの症例には、通常、 FMには無効とされるNSAID(非ステロイド系抗炎症剤)が有効であった。


医療部長 井上 久



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