「チャレンジ」



幹事  H


 幹事として活動しているHと申します。 らくちん第19号からいろいろな寄稿文を書かせて頂いております。 今回は冒頭を飾るお話となり、何を伝えようかと迷った結果、 いま夢中で取り組んでいる農作業のお話をします。

 第19号でお伝えしたとおり、右人工股関節置換術を受けてから、 股関節に限り痛みが消えました。 腰から背中にかけての痛みは現在も続いていますが…。 しかし、たとえ一部であっても痛みが無くなると精神的に余裕が生まれ、 今まで出来なかった事にチャレンジして見ようかと言う気持ちになりました。

 それがいま話題となっている「農業」です。 農薬や産地偽装などが頻繁に横行してしまった結果、 多くの方たちが家庭菜園や省スペースで行えるプランター栽培に興味を持ち、 取り組んでいるようです。 私は、幸いにして自宅横に畑、歩いて数分のところに田んぼを所有しております。 但し、7割近くが耕作放棄地状態で、 何とかこの状況を打破したくて昨年から本格的な開墾を開始、 今年は、栽培できる面積が大幅に増えてきました。


 突然ですが、私達が苦しんでいる「AS」は非常に稀な病気ですよね。 実は私の性格も外見で見るより、遥かに変わっているように思います。

 ネジが一本ない人?そんな一面があるのではないかと思えます…?

 ですから、いま夢中になって栽培している作物「エゴマ」、 シソ科の植物ですが、まだまだ馴染みが薄く、 何それ?と周りの方々から言われる始末です。

 栽培のきっかけはイノシシ対策、 畑の作物を全て荒らされ困っていた時、 地元の情報を掲載している新聞に、 イノシシは「エゴマ」を嫌うと書かれた記事を読み、 早速その栽培者の許を訪ね、 種子を分けて貰ったのがスタートでした。

 確かにエゴマを植えてある場所は荒らされません、 サルも大丈夫でした。 お陰で安心して栽培出来るし、 苗を移植すると秋の刈取りまで、 特別な管理を必要としません。 草取りと土寄せをするくらいのものでした。

 その代わり、作業が機械化できないため、 すべてが手作業となります。 ここが泣き所ではありますが…。
 特に種の脱穀と最後に行う細かいごみ取りがとても大変です。

 その後、種を日本エゴマの会(福島県)の本部に送ると、 無添加のえごま油が搾れます。 この油は、αリノレン酸(ω3系)が60%含まれているのが最大の特徴で、 現代人の健康な生活に欠かせないものとして注目されつつあり、 平成22年5月、朝の情報番組でも紹介されておりました。

 今回は「えごま油」のラベル作成にもこだわり、 友の会女性幹事のOさんに依頼しました。

 らくちんの記事でご存じだと思いますが大変大きな怪我された後も、 元気に色々な活動をされており、書道のお稽古も継続中とか、 そこで無理を承知の上、筆で書いて欲しいとお願いしましたら、 気持ちよく依頼を受け入れて貰い、写真のようなラベルが完成しました。

写真 えごま油ラベル

 ただ、途中で字体変更を何度かお願いしたりで、 大変なプレッシャーをOさんに与えたものでした。 Oさん、本当に有り難うございました。


 因みに、えごま油1本(150ml)を搾るのに500mlのペットボトル容器で1本半、 約400gの種が必要です。


 さて、エゴマは他の農作物と違い、苗の移植や収穫前の刈取りまで、 限られた時間内で行う必要がなく、自分のペースで段取りが組めます。 この「自分のペース」で行える事が最大のメリットとなり、 ASを患っている私でも栽培が可能なのです。


 お陰様で平成21年3月、 以前行われた「鞘馬緑化フェア」で知り合った仲間が、 「農業共済新聞」にエゴマの記事を掲載してくれました。 そして今度はその記事を読んで、 「関東農政事務局」の担当者が突然自宅を訪れ、 取材をして行きました。 平成21年11月のことです。
 更に続き、その農政局のホームページを閲覧した 「日本農業新聞社」の記者から突然連絡が入り、 取材をさせて欲しいとの事。

 この話のスタートが平成22年5月末、それからが大変でした。 自宅内外の整理整頓を始め、畑・田んぼの草刈り、 エゴマに関する資料作成に没頭しました。

 その甲斐あって約1ヶ月後の7月3日、 予定通り自宅にて取材を受けました。 (若い女性記者でした。)

 記者と話していて、 先方は私があるグループの代表だと思っていたようでした。 農政局のホームページを見る限り、 私の記事はまだ未公開、 本来なら公開しているグループの代表を紹介するべき所、 農政局の担当が間違って私を紹介したのか?または気を利かせ、 あえて私を紹介したのか? 私にしてみれば何れにせよ結果オーライ、 とても大きな収穫で、 もし今回の記事が掲載されれば全国的な情報発信に繋がります。

 最後に記者から今後の展開はと聞かれ、 「えごま油だけでなく今年は『葉』の利用を考えています…」と。 「韓国では焼肉に巻いて食べる事がポピュラーなのでこの夏、 知人と一緒に焼肉パーティーを開催する事や、 油を絞った残りの『粕』と搾る前の種をブレンドしたパン作りを予定している」 とかの計画をお話ししました。

 こちらの話にも興味関心を寄せていただき、 僅かな時間でしたがとても有意義に過ごせました。


 本当に、エゴマ栽培のきっかけはイノシシ対策でしたが、 ここまで皆さんに興味を持って頂いた事にとても感謝しております。


 ASの辛さは個人個人違うと思いますが、 是非自分だけの穀に閉じこもるのではなく、 一つでもよいですから興味を持った事にチャレンジしてみてはどうでしょうか。


 自分の好きな事をしている時、 その時間はきっとASの事が頭から離れているでしょう。 この「らくちん」を読まれている皆さんは、 行動力のある仲間だと思います。 私のように、何時、何処で、何が、起こるかは分かりませんので、 これを機に、新しいチャレンジをしましたよ−と言う報告を、 楽しみにお待ちしております。


編集部註:

星野さんは「右人工股関節設置換術」を受けてから、 新たをるチャレンジとして農業に挑戦 「エゴマ」栽培に情熱を燃やしておられます。 追悼特集の田中前会長の巻頭言にもあるように 「せっかくASになったのだから、 この体と心に何か特別な価値を見いだして、 素敵な感性を磨きたい」 をそのまま実践されてるように思えてなりません。 「何かを失うことによって、新たに得るものもある」のですから、 チャレンジあるのみですね。



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