木のはなし



日本AS友の会副会長  N


 「日本AS友の会」設立当初より副会長という大任を田中会長より仰せつかり、 15年経過しました。

 時が経つのは早いもので、当時34歳だった私の齢も現在51歳になりました。 その間に父が亡くなり、兄が先立ち、母親もいなくなり、 寂しいかぎりですが、娘と息子を授かり、新たな家族構成が構築されました。 「友の会」にも親友とも呼べる友人も数人でき正に字の如く「友の会」となりました。

 私が副会長(関西支部長)の役目を放り出さずにここまで来れたのも 一重に役員・会員さんのご支援とご協力があっての事で、 それ無しには到底継続できなかったと存じます。 役員の方々及び世話役の方々には感謝の気持ちでいっぱいです。 会員の皆さんも是非役員に立候補されて「友の会」の活動に参加され、 共同作業を通じて「友」を作っていただきたいものです。


 ところで私は、建築業と不動産業を生業としておりますが、 性格的には現場を伴う建築業が向いているようで、 病状の進行具合と少なからず関係してきたと思います。 職業柄、少し「木の話」をしますが、山に植わっている木々は、 大きく分けて自然林と人工林に分かれております。

 大昔はさておき人類は道具を使えるようになって以来、 食物の貯蔵を始めとして、生活の安定をめざし、 はたまた儲けに知恵を働かせ、 自然林では安定して家を建てる材木を供給できないことから、 杉・桧という種類の樹木を人手で植樹してゆき人工林を全国津々浦々に発展させました。

 自然林では、主に倒木により世代交代がおこなわれていきますが、 人工林では、植林に始まり下草刈り、枝打ち、間伐(間引き) などのように人の手を入れて家の柱やその他材木を製品としてゆきます。 その間、杉の木で30年から50年で柱の大きさになり、 桧の木ではさらに20年かかります。

 木を植えて切り倒すまでには、孫や曾孫の代までかかります。 スケールの大きな話で、ピンとこない方もおられると思いますが、 もう少しお付き合い下さい。

 さて、人工林では、木を伐採する際に効率を考えて 山全体を一斉に行いますので坊主になった山が時折見られます。 自然林は、多品種の樹木が雑多に生えていますので 杉の木が必要なときも部分的に伐採するだけで 一山全部を刈ることはそうありません。

 自然林にある樹木は、大抵の場合「銘木」 と言われる樹齢を重ねたものが多いようです。 また、大きな違いとして、 人工林では動植物が棲む環境に適しておりませんので、 自然林に比べると遥かに動植物は少ないと思われます。

 なぜ人工林に動植物が少ないかというと、 まず枝打ちをして木の下のほうに枝がなく、 枝は上方のみにあり、 太陽の光をなるだけ地面に届かないようにしているので シダ類のような植物しか生存できないのです。

 それにも増して単一種の杉や桧の樹木なので 動物の食べ物になる木の実が無いということになります。 こうすることにより植物に栄養をとられたり、 動物に傷つけられたり穴をあけられたりする弊害を極力減らしている訳ですね。

 自然林には多品種の樹木が存在し食べ物も豊富にあり、 植物も多種多様に混在しているわけですからそれも動物の食料になるわけです。 動植物がたくさん棲んでいる森と言うのは、実は自然林なのですね。 人工林には動植物はあまりいないのです。

 ご存知の方も多数おられると思いますが、 法隆寺の宮大工棟梁「西岡常一」氏著の「木に学べ」 という本には現在の町屋(住居)建築のように規格化された材料で建築されたものは、 寺社仏閣のような建築物の様に長い間存在することは不可能であると明言されております。 つまり、それぞれ木の個性を生かしてうまく組み合わせた建築物だから 1300年以上も存在する堅牢なものが構築されると記されています。

 木の性質は木によってどう違うのか?
 簡単に説明しますと、木は成長するにしたがって枝葉が張り、 風の影響を受けるとそれに反発するカが発生して捻れとなってその木の癖になります。 植わっている場所は動かないので吹く風も四季折々に一定して同じ向きから吹いているわけで、 それを30年から70年間受けるのですから木は相当に強い影響を受ける訳です。

 木を伐採してすぐには現れない癖も乾燥が進むにつれて明らかになってきます。 それから製材して四角い柱にするのですが、 もともと持っている癖は内部に存在しつづけますので、 木の持っている癖と癖をうまく組み合わせると年月と共に締まってゆく建物ができ、 逆の場合は開いてしまいます。

 このことは、会社の中でも、 さらにそれを包む社会においても同じ事のように思われます。 強い社会を創り出すには、規格化された箱ではだめだということです。 1人ひとりの性格を見極め特徴を生かしていける構造にしていかなければ 決して強い社会ははぐくまれないでしょう。

 「身体障害者」が社会システムの上で「健常者」と同じでは、 その差は同じままです。 社会保障で障害のハンディを補ってもらって、 スタートラインが一緒になれば、 障害があってもその人が本来持っている能力が発揮できるというものです。

 そのためには、政府は責任を持って「身体障害者」 の社会復帰を援助していく社会保障を築いていかなくてはなりません。 しかし、長期的な不況で歳入が激減し、 財政難のしわ寄せの矛先が社会的弱者にむけられて相反する法案ばかりが出て来ています。

 最近では、一様にリハビリ打ち切り期間が設定されるという 「リハビリ打ち切り改定」法案が可決され、 「友の会」としましても声を大にして反対の署名に賛同していきたいと思いますので、 ご賛同くださる会員・賛助会員の方々は、ご署名にご協力をお願いします (署名用紙は事務局およびAS Webの会員・賛助会員のページのお知らせにあります)。
 皆さんの力を合わせて少しだけでも社会を変えていきましょう。


 取り留めの無い話にお付き合い頂きまして恐縮に存じます。 皆様のご清祥をお祈りしつつ筆を置きます。



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