らくちん第11号

「迷い道、進む道」


日本AS友の会会長 田中 健治

 つい先頃、大阪の某私立大学で、大学のインターネットと学生の所有する携帯電話を結んで、大学と学生との間での伝達を迅速且つ正確に運んでいるというTVニュースを視聴いたしましたが、AS友の会に最近入会されたり、AS診を受診されたり人の中にも、インターネットを通じて知ったという人が次第に多くなっています。強直性脊椎炎という難病の患者会として「日本AS友の会」が存在するという程度の情報は、すでに様々なリストに掲載されていますから、それらがインターネットを通じて流れていたとしても不思議ではありません。まさに、高度情報化時代への突入と言えましょう。
 友の会としても、A氏を委員長とするホームページ作成委員会が、友の会インターネット参入に向けて検討を加えておりますが、一部でインターネットの功罪が問われ出した昨今、十二分に研究を重ね、上手に活用していきたいものです。
 昨年、千葉大学の社会学研究室から、女子学生が一人、順天堂AS診の井上事務局長を尋ねました。3年次の必修科目である社会調査実習のテーマが「セルフヘルプグループ(SHG)」と決まり、その中の患者会のひとつとして、日本AS友の会のことを聞かせて欲しいというのです。
 話を聞き終えて、会報「らくちん」「療養の手引き」「友の会だより」など、友の会の出版物を全冊持ち帰った彼女は、数日後、私宅にも電話をかけてきて、深夜2時間近く話を交わしましたが、その後は、プツリと音信が途絶えた儘でした。そして、今年の4月、一冊の分厚い本が友の会事務局に届けられました。
 404頁に及ぶこの本は1998年度社会調査実習報告書と記されて、表題は「セルフヘルプグループ(生きづらさの修辞学)」となっており、その85頁〜91頁に「らくちんに行こう〜AS友の会」と題して、患者会としての日本AS友の会の有り様が鮮明に描かれていたのです。
 レポートは徹底して友の会の各出版物にこだわり、その中から確かな答えを引き出そうとしたらしく、患者の苦悩と理解、医療の現実と希望、社会的認知から友の会の方向性に至るまで、「実によく読破したな、理解したな」というのが率直な感想でした。そして、ふと気付くと、私は奇妙な感動と安堵感に浸っておりました。
 それは常々、「らくちん」や「友の会だより」「療養の手引き」などの情報だけで、友の会のことやASという病気のことなどが、との程度皆さんに伝わり、理解されていくものなのかと、内心一抹の不安を抱いていましたから、そのことが今、思い掛けない形で払拭された喜びもありました。
 迷い道は消えました。いい形で進めそうです。
 今、耳元に、以前K氏(滋賀地区長)が、体験発表で切々と訴えた熱弁が蘇ります。
 「この病気のことを、みんな苦しんで、理解して、経験してこられた人達が、ここに集まっておられる。こういう会を大事にしないで、何を大事にするんだと、会合を重ねるに連れて強く感じます」

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