らくちん第8号

夢を引き寄せるために


日本AS友の会会長 田中 健治

 「なんでやろうね。なんで、折角友の会が出来たというのに、入会しない人たちがいるんやろね。自分たちのことやのに・・・・・・」
 近年、肺ガンで逝った義姉(賛助会員)が生前こんなことをいっていたなあなどと、私はベッドの上でぼんやり思い出していました。
 なぜかなあ。医療情報や病院紹介などを求める人は結構いるというのに、どうして友の会に入るとなるとためらうのかなあ。制約を受けるような気持ちにでもなるのかなあ。などと、とりとめもなく考えてしまう。
 今年正月早々、私は、腰部わけても骨盤の激しい痛みと発熱で、ただ松葉杖で立っていることすら不可能になって、文字通りの寝たきり生活になってしまいました。当然、排便も寝たままでしたが、普通の差し込み便器が痛くて使えないため、妻が新聞紙を折って便器を作り用を足していました。
 あらん限りの鎮痛剤、漢方薬、物理療法で痛みを和らげながら、ひたすら嵐が通り過ぎるのを待つ日々が続きました。
 鈍く重たい疼痛、衝撃痛、そして上半身と下半身がよじれていくあの身体が壊れるような痛さは、かつて最悪の状態だった昭和33年〜昭和34年当時を想い起こさせて、なぜ、この歳になって、という思いとともに、自分のAS暦を振り返ったり、今のASを取り巻く環境をじっくり見つめ直してく上で、大変貴重な時間と場を与えてくれた様に思えます。
 そもそも、友の会設立を決定づけたのは、福岡在住のA君のご母堂が、電話で涙ながらに訴えられた「友の会があれば、息子も私もどんなに勇気づけられることでしょう」のひとことだったのです。
 友の会が在って、お互い励まし合いながら、医師や医療機関との関わりも友の会を通じてスムーズに運べて、リハビリの為にだけでも入院出来るというか状態の悪い時は即入院、即治療が可能な環境が整って、更に出来れば職業訓練に近いことまで面倒を見ることができる・・・・・・友の会。
 A君のお母さんの夢は果てしなく続きますが、こりゃあ大変だと思う。入院などに関してはこれからますます難しくなっていくでしょう。しかし強直性脊椎炎をかかえて悩む患者とご家族の描く夢は、皆同じ様なものだと思います。ASだけじゃあない、あらゆる難病で同じことが言えると思う。
 4月26日、松葉杖にしがみつく様にして数分間立った時、妻は目に涙をにじませて「もう二度と立てないかもと思っていた」といい、私は、「昨夜、どうかもう一度だけ立たせて下さいと祈ったんだ」と話しました。
 数々の夢を現実のものとした発明王トーマス・エジソンは「天才は1パーセントのひらめきと99パーセントの努力である」と言ったそうです。夢があってこそ現実が見えるわけですから、私たちももっと夢を大きく広げてみましょうか。
 機会あるごとにもっともっと夢を語り合いましょう。そして、その夢をひとつずつ引き寄せるために皆で力を合わせ、知恵をしぼろうではありませんか。

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