『地域保健』に田中会長が寄稿



「らくちん」と思える日々が一日でも多くなりますように!

日本AS友の会会長  田中 健治



友の会、存在の意義

 無人島で初めて人に会ったときぐらい嬉しかったです。
 周りに同じ病気の方がいないので暗中模索で生きてきました。
 体の痛みと病気進行の不安の中で、医者さえ味方でなかったので、 ありとあらゆることを試みました。
 もうその生きざまが“まんが”であります。

 会のある人たちがうらやましかった私です。
 皆、どうしてたの?
 どうしているの?
などと同窓会で出会った友だちに言うように、 同病の方々に聞いてみたい気がしています……。

 これは、ある女性からのお便りです。
 高校3年生ころから約15年間、病名がわからないまま 病気だけが進行していきました。
 自分で勝手に医学書をあさり、自分で勝手に 診断を下しながらも、医師の口から それが間違っていなかったことを告げられたとき、 心のそこからホッとしたということです。
 もっと早く診断がつけられていたら、もっと早く 友の会を知っていたらと、その思いはそのまま、 友の会の存在意義を明示しています。


強直性脊椎炎(AS)について

 ASという略字はAnkylosing Spondylitisの頭文字を とったもので、日本語の病名は強直性脊椎炎です。
 慢性炎症性骨・関節疾患であり、脊椎の破壊、 強直のみならず、時に四肢関節も侵され、重症化すると、 強い身体障害をつくるという点で、古くから、 関節リウマチとともにリウマチ性疾患の中で2大疾患と されてきました。
 原因は不明で、根本療法もなく、常に痛みを伴い、 炎症症状が生涯にわたって消長するという点で、 関節リウマチと並び称されています。

 難病としては、他のものと比べ、勝るとも劣らないもの であるにもかかわらず、不当に社会的関心が薄く、 不遇の難病と言わざるを得ません。
 ごく最近まで専ら男性の病気のように言われて いましたが、女性の患者も多く見つかるようになりました。
 この病気の始まりは腰痛や臀部の傷みで、 よく椎間板ヘルニアなどの腰痛病と誤られる場合も多く、 診断されるまでに数年以上たっている者も少なくありません。

 脊椎の症状が進行すると、頸椎から腰椎、 仙腸関節に至るまで骨性に強直して、 背骨が1本の棒のようになったり前に弯曲したりして、 日常生活が困難になるばかりでなく、 約60%の患者は、四肢の関節も侵され、 ことに股関節の破壊、強直が併発すると 高度の機能制限が発生し、歩行困難、 場合により寝たきりに近い状態になる患者もいます。

 合併症も目の虹彩炎を始めとして、腸や皮膚、 まれに心臓、肺、腎臓の疾患と多彩です。
 患者数は、欧米や中国と比較しますと20〜30分の1以下と、 わが国では非常にまれな病気と言えますが、 全国では数千人の患者がいると推定されます。
 体質・素質が発病に関係していると考えられ、 いま遺伝子解析の研究が進められていて、 友の会も全面強力しています。

 会報の名称は「らくちん」ですが、 らくちんと思える日々が一日でも多くなることを祈りつつ。

戻る

トップページへ戻る