花とAS


M.O.


 3ヶ月が1シーズンの日本の季節は、常に季節の曲がり角だ。 AS患者としては、日本に居住する限り、四季を愛する人にはなれない。 病はそれぞれでも、慢性的疾患のある患者は、おしなべて季節の 変わり目が辛いようだ。わたしの場合は、筋肉が痛むのと同時に皮膚に 隙間なくトゲが刺さったような痛みだ。この辛さを言葉で表すことは むずかしい。晩秋には、毎年覚悟をする。この冬も耐えるぞ!と。 そして、桜の蕾がふくらんで、切なる待望の春の到来だ。満開の桜が ひらひら舞い落ちる、固まった体も少しゆるむ。一斉に散る桜吹雪、 いよいよ春だ。勝手なもので、八重桜が咲く頃は、あれほど待ちに 待った春を待つ心も消えている。走り梅雨が本格的な梅雨につながる のが恐ろしい。五月晴れがあるように願っている。農業には申し訳ない が、空梅雨であることも願っている。

 この季節に好きになれない花がある。紫陽花には罪はないのだ。ただ その季節に咲く花なのだ。紫陽花が咲くのと痛みが増すのが同じ季節で しかない。八つ当たりの感情をどうすることも出来ない。そぼ降る雨を 楽しむように咲いている。公園の紫陽花は誇らしげに全身を花にして 咲いている。

 あじさいよ、ゴメンネ。
 でも、あまりの辛さに、アナタを好きにはなれません。
 せっかく咲いてくれたのに。


 好きな花は百日紅の花。可憐な花でとても好きだ。この花は独りで 静かに観に行くのが似合っているようだ。体調が許すかぎり、毎年、 百日紅の林を見に行く。それにただ、この花が好きなだけではない。 百日が咲いている期間は、四季を通じて一番痛みが軽減する季節でも ある。微熱もやや下がるようだ。

 花の愛で方も勝手なものだ。


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