イギリスの会報から

親になる事とAS


 ジュリ−・バ−ロ−博士(健康と社会科学大学院、リウマチ性疾患 における社会心理研究センタ−)とレズリ−・カレン博士 (コベントリ−大学)によるNASS(National Ankylosing Spondylitis Society)のシンポジウムから


 下記の報告は、ジャ−ナル「障害者の妊娠と親になること」に発表 された記事に基づいている。このジャ−ナルは、親であることのあらゆる 局面について有益な情報と指針の発信源になっており、手に入れ易く、 1月、4月、6月、10月の末と年4回発行されている。現在、または 将来ASでありながら親になる人で、子供の世話をする能力を考えたり、 役に立つ道具について興味がある人にお薦めする。


序論:私は何処で子供が食事をしていたか見ることが出来なかった。

 現在の社会で、成功した親になるというのは一つの挑戦です。関節炎を もっている私たちにとってはこの挑戦はもっと重大な意味を持つものに なります。関節炎に関して言えば、親としての経験が書かれた情報は少し しかありません。私たちのこれまでの知識を基にして、ASでありながら 親になることに焦点を当て、問題の検証を始める事にしました。
 妊娠は明らかに女性に付随する話題ですが、親になることには男性も 関わりがあります。関節炎に罹った高齢の方々が、彼らが、やはり関節炎に 影響を受けながら祖父母になった経験と知識を提供することを申し出て くれました。従って、私たちの研究はASを罹患している父母と、 祖父母において、親になることの問題を検証しています。


ASの両親と祖父母に対する調査:目的と方法

 この調査の目的は2つに分かれています。最初に、私たちはASで ある人が子供をつくるか否かを決めるのに影響があったかどうか知ること、 第2番目に、ASである両親が子供の世話をする時に遭遇する困難性に つき探りたいと考えました。私たちはコベントリ−大学で行われた 英国AS協会(NASS)のシンポジウムの場で、参加者に簡単なアンケ−ト 調査を行いました。


結果:

 96人から回答があり(回答率95%)、そのうち73人がASに罹患している 患者でした(男性64%、女性36%)。それ以外では、一人はASかどうかの 診断が不確かであり、残りの22人(男性31.8%、女性68.2%)はパ−トナ− がASに罹患している人達でした。ASを罹患している回答者の平均年齢は 48歳で、平均の罹患期間は24年でした。


子供を持つか、持たないかの決定

 ASを罹患している回答者の大多数は、子供を持つか否かには決めるのに 影響はなかったと言っています。一人はASの診断が子供を産んでから 届き、遅すぎたとコメントしています。この女性は出産後、24時間で 赤ちゃんを失くしています。彼女はその時点ではASと診断されていません でしたが、10歳からASの徴候があり、骨盤の拡張が乏しいことを明らかに 感じており、それが彼女の子供を失う決定的な要因になりました。 〔医療部長注:ASによる骨盤拡張制限により赤ちゃんが死亡したのでは ないと思われます〕。

 回答者のうち数パ−セントは、ASの遺伝的なリスクが、子供をつくるか 否かの決定に影響し、留保したと言っています。遺伝的リスクに加えて、 数人の患者は、治療(薬)の副作用による妊娠能力そのものと、それに 対する恐れついて考えたと言っています。


妊娠している期間とその後

 妊娠中、幾人かの患者は痛みと硬直の増強がありました。他の人は、 出産後、痛みと硬直が増加し、子供の世話をしたり持ち上げる能力が 制限されたと述べています。


親になった後の困難(問題)

 親になった後の支障について38%の回答者から報告されました。 それらの困難は、5歳代に特徴づけられていました。予想したように、 母親であるか父親であるかによって困難の内容が違っていることは 注目すべき点です。例えば、ASを罹患している母親は、赤ちゃんの 時とよちよち歩きの時により困難があり、父親は、子供が5才になった 時から困難を感じる傾向がありました。要約は次に示されています。


親として困難(支障、問題)を感じた時
子供が誕生から5歳未満の時
 赤ちゃんと5才未満の子供の世話をする際の困難の主なものは、 授乳、持ち上げること、抱くこと、お風呂に入れること、ベッドに 下ろす事、身体を使うゲ−ムで遊ぶことや身体を使う活動(行事) などでした。下記のようなコメントがありました。

 「私の首は完全に麻痺して、子供がどこで食事をしていたか見る ことが出来なかった」
 「私は子供を下に落とす恐怖をもたずに持ち上げることが 出来なかった」


子供が5歳以上の時
 5歳以上の子供の世話で経験した困難の主なものは身体を使った ゲ−ムや活動でした。それに加えて、極度の疲労感というものが、 子供の養育に関してもっとも多く出された問題でした。下記の コメントは、この問題点を表しています。

 「疲労の為、私は子供達を理解し助けるための忍耐深さに欠けていた」

 また、子供の養育全般を通して、欲求不満、不忍耐、怒り、かんしゃく や憂鬱感などがあったこともだされています。これらの感情は下記の ように表現されていました。

 「私は不快感と硬直のために、いらいらした」
 「身体を使った活動に参加出来なかったことに行き場のない感情が 残った」


 最後に一人の回答者は、次のように助言しています。
 「幼年期を理解していないから忍耐深さに欠けているというよりも、 痛みによっておこる怒りと理解して、身を処しましょう」


結論

 今回の初段階の検証の結果は、AS患者の約3分の1の人々は、 ASに起因した親である困難さを経験していることを示唆しています。 私たちのサンプルの中で、疲労、十分に動けないこと、そして否定的な 感情反応が、親として成功したという認識を減じる主な要因として 表れています。従って、多くの人がただ単に親であることの喜びや 楽しみを奪われたと感じているという結論でした。


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