オーストリアの会報から




  1. ASの疼痛を緩和する上で精神薬理学のもつ可能性
 ASの原因について我々はほとんど知らない。故に我々は、その症状を 治療する上で制限を受けている。ASの症状を治療する一つの可能性は、 痛みとの戦いである。
 痛みは神経系統と生化学的相関を持っている。このことは、ある神経 刺激伝達における欠陥を意味する。重要な神経伝達物質にセロトニン がある。セロトニンは、人の心理状態、知的能力、そして良好な睡眠を 得るための痛みのない状態の維持に非常に重要である。慢性的にストレス のある状態、病気、そして厄介な状況などにおいて神経系統に発生する セロトニンの欠乏は、以下のような症状の原因となる。
  • 抑うつ
  • 不安
  • 不眠
  • 痛みのある状況
  • 集中力と注意深さの欠如
  • 刺激制御の欠乏による攻撃性といらだち(刺激状態)
 痛みの抑制には、セロトニン欠乏を補うことによる精神薬理学が有効 であるという可能性がある。

 これらの精神薬理学的可能性については、疼痛治療領域に経験を持ち、 信頼できるドクターと話し合うことが最も重要である。はっきりして おかなければならないのは、これは可能性に過ぎず、必ずしも確実性の あることではないということである。ほかの多くの療法と同様に、 精神薬理学の目的は、患者にとってどの療法が有効であり、どれが有害 であるかを見出すことである。疼痛療法の利用を通して、防御系統が 破壊される。有痛性の関節変化に伴い、筋肉が収縮して反射的に姿勢を 変える。このことは関節軟骨への圧を増加させる結果となり、ASに 対して長期的に悪い影響を与える。従って、筋肉と感情がリラックス した状況に転換させるところに、疼痛療法を通じた効果が達成される。

 第2に疼痛抑制に有効である可能性があるのは感情面の改善である。 慢性的な患者は、継続的にストレスの多い状況にあるため、抑うつ的 感情となり易い。感情の改善は、痛みのある状況に対して抗うつ剤に よる精神薬理学的治療で可能である。AS患者は、しばしば悲嘆し、 陰気で、堅苦しいと表現される。このような症状に対して積極的な 取り組みがなされるべきである。

訳者まとめ:ASの痛み(ASに限らないが)に関しては 心理的要因の関与は大きく、痛みの軽減には、精神薬理学的(ただし まだ研究段階。精神安定剤、抗うつ剤などが疼痛軽減に有効な場合 もあることは確か)、そして心理的(専門家はもとより患者自身 の努力も必要)な対処が重要である。


  1. 精神療法的可能性
 すでに述べられているように、痛みがあると筋肉の緊張(収縮)と それに伴う関節への圧が増加する。AS患者は、小児期からの疼痛経験 のために筋肉の緊張が強まり、その結果、関節軟骨への圧が増加して 病気が発生するという説もある。
 恐れや怒りのような原始的感情は、リラックスするための運動や 筋肉のストレッチングなどを通して緩和される。

 ASは心理的ストレスを招く。従って、精神療法の助けを借りれば、 病気を克服する感覚を得て、病気とより良く取り組むことが可能になる。 今日の生活において、我々は結果を重視する傾向がある。慢性の疾病 のため、我々の能力は制限されるが、我々はこの欠陥を通じて自分たち を認識する傾向がある。しかし、あなたは容易に人生の陽性な面をみる こともできる。通常、人は子供の誕生を幸せに楽しみにし、両親は喜び につつまれる。人はこの小さな存在が息をし、動き、笑い、反応する ことで幸せになる。このような状況がいわゆる原始的な愛である。

 人生が発展していくにつれ、プレッシャーが現れる。人は子供が ハイハイしたり、立ったり、歩きだすとき、隣人の子供と比較される ことに気づく。そうすると、子供は行儀よくすることを学ばなければ ならない。学校に進むにつれ、演じることを身につける。このことに より、社会と関連した演技の「スイッチ」が入れられる。演じるという ことを現実に達成することはできないため、危機的状況下では、人は 演技の適切さを失い、愛、友情、信頼、信任といった他のものがより 重要になる。危機は常にチャンスでもある。このような価値を再び 見出し学ぶためにチャンスは存在する。

 痛みはAS患者にとって、もっとも困難な症状の一つである。痛みは 攻撃し、プレッシャーを与え、苦しみを与え、感情を抑圧し、人格を 傷つける。精神療法は、リラックスすることを教える。そして、演ずる ことを減らし、暖かさ、保護、安心といったことを増やすような シナリオで幸せになることを学ばせる。これらのテーマや罪の意識に 対しては精神療法で対処することができる。

 このような短い記事では、ASに対する精神薬理学的、および精神 療法的な可能性について、限定された面でしか眺めることができない。 しかしながら、可能性が存在し、試す価値があり、あなたの状況を 改善する作用があるという情報を、少なくともあなた方が得られる ことを願う。

訳者コメント:やはり、ASの痛みに関する心理的要因の 大きさを強調。そしてこれを コントロ−ルすること、つまり精神科的 アプロ−チが大切なこと。また、ASに罹患したということが、 新たな発見、新たな世界へのチャンスとも考えるべき?〕

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