1998年デイリーメイル誌・リーダーズダイジェスト誌より

ジュリー・コーヘン


 ブリストル出身のブリジット・ファッジェル 37歳は、彼女の頭を 脊椎からはずし、回旋させるという手術において、麻痺と死に陥る リスクに瀕していた。ブリジットは、約8万人のイギリス人を 苦しめている強直性脊椎炎と呼ばれる病態により、首の骨が 癒合していた。
 10代と20代を通して、責めさいなむ痙攣するような痛みが彼女の体を 捕まえて離さなかった。26歳までに、彼女の病気はひどく悪化し、 彼女は動くことも困難になっていた。1996年のクリスマスに急激な 悪化後、彼女の頭は下方にねじれ、彼女の右肩は固定されてしまった。 数え切れないくらいのドクターが、彼女を助けるためにできることは 何もないと宣告していた。
 しかし、ついに彼女はスティーブン・ジルという脳神経外科医に 紹介される。彼は、彼女の窮状に心を動かされ、彼女の頭をもとの 位置にもどす計画をたてた。

 1997年2月の17時間に及ぶ手術の間、ブリジットは手術台に横たわり、 彼女の頭は特別のクランプで固定されていた。ジル氏は片方の耳から もう片方の耳までをT型に切開し、それから頚部へと切開を広げ、 一番上の頚椎を露出させた。第一頚椎にくさび形の切開が30度の 角度で入れられ、頭は上方に向けられた。
 頭の両側にいた外科医が、それから頭を正しい位置に回旋させ、 別の外科医は脊髄が圧迫されないように監視していた。ほんの僅かな 脊髄へのダメージが麻痺につながるからである。ブリジットの頭が いったん正しい位置に戻されると、2つのスクリューと金属製の輪に なったワイヤーで、その位置に固定された。

 手術は大成功だった。「これまでいつも下を向いていた。手術後、 私は正面を見たり、ちゃんと食べたり、外出することができるように なりました。そして自分が社会の一部であると再び感じられるように なりました」とブリジットは言う。オックスフォード大学のコリン・ ブラックモア教授は、この手術は、頚部と脊椎の痛みを伴う変形に 苦しむ多くの人に希望を与えるであろうと語っている。


訳者コメント:疼痛コントロールが可能となり、運動療法が 適切に行われてきた現在では、このような患者さんはほとんど出て いないが、脊椎矯正術によって、新しい世界が開けた患者さんは 日本にも何人かいるので、歩行時に前が見えず危険なほどに脊椎が 強く曲がってしまった人は、一度、ASの手術経験豊富な脊椎外科の 専門医に相談してみては?。事務局で紹介できます〕

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