AS患者と骨粗鬆症

(アメリカの会報から)



AS患者における骨粗鬆症発生の高さ

 昨秋、サンタバーバラのSusan Danko は、主治医に骨粗鬆症の心配を すべきかどうか尋ねた。主治医が「それほどでもない」と答えたとき、 彼女は、とにかく念の為に骨スキャンを受けたいと主張した。その結果、 スーザンはまだ32歳であったが、彼女の骨密度は低かった。彼女の骨には 年齢相応の強度がなかったのである。現在、リウマチ医の忠告に基づき、 彼女は、ASの治療剤に加えて、1 日に2回に分けて800mgのカルシウム剤 とビタミンD 200mgを服用している。また、炎症を起こした仙腸関節の 痛みが我慢ができる範囲での荷重(体重負荷)体操を日課に含めるように 努力している。しかし、それでもなお彼女は骨粗鬆症の心配をしている。


骨粗鬆症とは何か?

 骨粗鬆症は、種々の原因により骨が薄く脆くなり、そのため骨折し易い 状態である。人間の骨格が強度を保つために、7年から14年ごとに徐々に 古い骨を新しい骨に置きかえ、骨自体を作り替えていかなければならない。 通常、このプロセスはホルモンなどにより綿密に制御されているが、年齢、 病気、貧困な食事、ある薬剤の慢性的服用などが、この過程に不均衡を 生じさせ得る。この不均衡が時として骨粗鬆症へとつながる。

 「骨粗鬆症がAS患者に見られるのは明らかである。それがなぜかは 不明である」とUCLAのAS研究者であるDavid Yu博士は言う。

 合衆国で59歳以上の女性の2人に一人が、男性の8人に一人が、 一生の間に、股関節か脊椎か上腕に骨粗鬆症と関連した骨折を起こす ことがわかっている。1994年に行われた50歳以上の女性1,035人について の研究では、脊椎の骨折は、女性のAS患者の10.3%に、ASでない 女性の1.9%に発生したと報告されている。「骨粗鬆症基金」は、 この実態は、何かが起こらない限り、通常、黙殺され理解されていない と警告している。


ASと関連した高いリスクファクターとは何か?

 リウマチの臨床医学雑誌である「Journal of Rheumatology」に、 長年の脊椎炎は、常に骨粗鬆症が発症するリスクをもち、非常に 脊椎骨折を起こし易いと報告されている。しかしながら、80人について の最近のある研究では、意外にも、脊椎炎罹患後、短期間でも骨密度は 低下していることが判明した。AS患者では、男性であっても女性で あっても、骨粗鬆症に発展するリスクを持っているとも報告されている。

骨粗鬆になり易いリスクファクター:
 身長と体重測定から計算されたbody mas index(肥満指数)が低いこと
 fat mass percentage(脂肪割合)が低いこと
 active severe disease (活動性の重篤な疾患)があること
 Yu博士は、AS患者に対して、カルシウム、ビタミンD、(女性) ホルモン補充療法、カルシトニンなどによる治療を行っている。しかし、 彼は、これがASにおける骨折発生のリスクを最終的に減少させることが 出来るのか、実際にはまだ不明であることを認めている。

 世界的に名高いAS研究者で、最近の骨粗鬆症研究の第一人者である フランスのMaxime Dougados博士が、この疑問に対する回答を見つけること を約束している。Dougados博士の1998年の研究では、既にAS患者における 骨喪失(骨量減少)と炎症との相関関係を示唆する仮説を出している。 これに基づく2年間の追跡調査の結果は、AS患者における骨粗鬆症と いうこの難問題の解決の糸口となるであろう。

 さしあたり、Dougados博士は、骨折予防に関して以下の重要性を 強調している。
適量のカルシウム摂取
適量のビタミンD摂取
荷重運動の実施
転倒の予防

骨粗鬆症発生の要因
栄養不良
カルシウムとビタミンDの摂取不足
運動不足
歩行などの荷重運動の不足
高蛋白摂取
過度のアルコール摂取
喫煙
ステロイドの服用
NSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)の長期連用
癒合(強直)による脊椎の不動
骨の吸収(溶解)を増加させる炎症
慢性肝疾患や腸障害など併発 

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 骨粗鬆症の治療法の選択肢は拡大し、かつてないほどに、医師も 患者も治療手段をもっている。1995年以前は、骨粗鬆症を治療する 唯一の方法は、ホルモン剤であるエストロジェンとカルシトニン のみだった。

 現在、骨粗鬆症を予防し、治療するための医薬品は多い。さらに、 現在、FDA(米国食品医薬品庁)が承認している骨密度の測定方法が いくつもある。骨スキャン装置も、間もなく近所の雑貨屋や薬局で 利用できるようになるだろう。FDAは、骨粗鬆症の診断と治療の 助けとなる幅広い製品を,今後承認して行くであろう。ある薬は、 膏薬として投与されている。さらに、食品や補助食品へのラベルの 改訂により、強い骨をつくり維持する助けとなる栄養分についての 有益な情報を表示されるようになる。

 今日、ベビーブーム世代(団塊の世代)が、この高齢者の病気に 罹患し易い年齢になったため、骨粗鬆症はメディアの注目を集めている。 骨粗鬆症はニュースである。

 多くの人たちは、この命を縮める可能性のある病態に対して、既に 自分自身を守る努力をしている。前SAA(アメリカ脊椎炎協会) 代表のTish Pollackは、40代だが、SAAの会報である 「Spondylitis Plus」で、彼女は骨粗鬆症に対して十分に警戒している と語っている。Tishは、晩年、苦しみ衰弱した彼女の祖母のような経験を 繰り返さないと決心した。彼女の主治医はまだ指示していないが、 彼女はカルシウム補給剤を服用し、荷重(体重負荷)運動を毎日行って いる。Tishは、1998年に股関節置換術を受けている。

 脊椎炎患者は、情報を十分に与えられ、自分達の疾病について前向きだ という言われているが、骨粗鬆症に関してもそれを証明するチャンスである。


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