-- 強直性脊椎炎療養の手引き --------------------------------------------------

Q.21.どのような薬を使うのですか?

 いわゆる非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs )が主体です。 そしてASのほとんどのケースで、これだけで十分です。ASに対して 使われる非ステロイド系消炎鎮痛剤は、頭痛や腰痛や生理痛に使われる ものと基本的には同じものです。また、『慢性関節リウマチ』に対する 薬物療法の主体もやはりこの非ステロイド系消炎鎮痛剤です。
 これらの薬には、同時に解熱作用もあり、発熱時の解熱剤として よく使われるくらいですので、消炎鎮痛の目的で最初に服用した時に 一気に体温が下がる危険性もあるので注意が必要です。ただし、 塩基性のものは(ソランタール®、 ペントイル®など)、このような作用が 弱いとされています。古典的なアスピリンなどは、抗血栓剤として 心筋梗塞や脳梗塞の再発予防などにも使われています。

 表に示すように非ステロイド系消炎鎮痛剤には多くの種類があり、 ほぼ同じ性質を持ったいくつかのグル−プに分けられます。これらの 中でも、人によって効く効かないの差があり、また同じ人でも、 続けて使っていると効きが悪くなることがあったり、しばらく休んで からまた使うと再び効果が出るといったこともありますので、まず、 その患者さんの体質、あるいはその人のASの性質、そらにはその時の 病状に合った薬を探すことが大切なことになります。
 最初は、比較的弱いそして副作用の少ない薬から始め、2〜3週間で 効果を判定し、無効であったり副作用が出たりすれば、別のグル−プの 薬に変更して行き、その患者に相性の良いすなわち効果的でできるだけ 副作用が少ない薬を探します。古くはフェニ−ルブタゾン(商品名は ブタゾリジン®)がASの特効薬とされていましたが、 これは副作用が強く、より副作用が少なくて効果も ブタゾリジン®に勝るとも劣らない新しい薬がどんどん 開発されてきたこともあって、現在では、ごく限られたケースにしか 使われなくなっています(たとえば、疼痛や炎症が非常に強い場合とか、 他のすべての薬が無効な場合)。
 現在、有効例が多く、良く使われているのは、インドメタシン (商品名はインダシン®、インテバン® など)やジクロフェナック(商品名はボルタレン®など)、 ロキソプロフェン(商品名はロキソニン®)などですが、 これらが無効な人もいますし、その他のものでも十分に効果をあげている ケースも多々あります。要するに、その人に最も有用な(効果が強く 副作用が少ない)ものを使うということです。

 ところで、ASは非常に経過が長い病気ですので、薬も長期にわたって 飲み続けなければならないことが少なくありません。従って、自分の 飲んでいる薬の名前は勿論のこと、性質をもよく知っておくことが 慢性疾患の患者にとっては大切なことと言えます。怪我をした時とか 別の病気になった時(カゼでも)、非ステロイド系消炎鎮痛剤を解熱や 消炎の目的で使うことが多いので、その場合には薬が重複することになり、 副作用の危険性が増すので注意が必要です。そのために、日頃から、 ASに対して使っている薬の名前を覚えておいて、怪我や新たな病気の 治療に当たる担当医に必ず申告しなければなりません。
 勿論、小児、そして薬を代謝する肝臓や排泄する腎臓の機能が落ちて いる高齢者では、薬の種類を限定し、量を減らす必要があります。 過剰に副作用を恐れる必要もありませんが、副作用チェックのために、 数ヶ月に一度の血液や尿の検査を定期的に行うことも必要ですし、 1年に一度は症状がなくても胃の検査(レントゲン透視または内視鏡検査) を受けるべきです。この点からは、その患者の体質、ASそのものの性質、 薬に対する反応その他の事情を良く承知していてもらえるよう、同じ 担当医にずっと診察をしてもらうことが望ましいと言えます。

主な非ステロイド系消炎鎮痛剤
〔薬剤名〕               〔商品名〕
酸性
 サリチル酸系
   アスピリン          アスピリン、ミニマックス、サリチゾン、バファリン、
                   サルソニン、カシワドール、カンポリジン
   ジフルニサル         ドロビッド
   サザピリン          サリナ
 フェナム酸
   フルフェナム酸        オパイリン、ボンタール
   フロタフェン          イタロン
   トルフェナム酸        クロタム
 アリール酸
   ジクロフェナク        ボルタレン、ナボール、アスピゾン、ドセル、
                   ボルフェナック、サフラック、イリナトロン、アナバン
   トルチメン          トレクチン
   スリンダク          クリノリル、クリナックス
   フェンブフェン        ナパノール
   インドメタシン        インダシン、インテバン、イドメシン、
                   インテナース、サリナック
   インドメタシンファルネシル  インフリー
   アセメタシン         ランツジール
   マレイン酸プログルメタシン  ミリダシン
   アンフェナク         フェナゾックス
   ナブメトン          レリフェン
   モフェゾラク         ジソペイン
   エトドラク          ハイペン、オステラック
 プロピオン酸
   イブプロフェン        ブルフェン、ユニブロン、イブプロシン、エポブロン、
                   ノブゲン、ブブロン、ラミドン、ナパセチン
   フルルビプロフェン     フロベン、ロピオン、リップフェン
   ケトプロフェン        カタピステン、オルヂス、メナミン、アネオール
   ナプロキセン         ナイキサン、ナロスチン、ヘッドロン
   プラノプロフェン       ニフラン、プランサス、イテオバン、エスチダン、
                   タツプロフェン、ノイペイン
   フェノプロフェン       フェノプロン
   チアプロフェン酸      スルガム、スリメン、スルガフェン、チオガム
   オキサプロジン*       アルボ、アクチリン、アモリンタン、オキサチリン、
                   オキサット、キサプジン、パビルジン
   ロキソプロフェン      ロキソニン、リンゲリーズ
   アルミノプロフェン     ミナルフェン、ウナニフ、ニランコート
   ザルトプロフェン      ペオン、ソレトン
 ピラゾロン
   ケトフェニルブダゾン    ケタゾン
 オキシカム
   ピロキシカム*        フェルデン、バキソ、パルパシン、ピアテック、
                   ヒロカルミン、ピロキパール、ルメリーム
   テノキシカム*        チルコチル、ゲスコリル
   アンピロキシカム*     フルカム
塩基性
  塩酸チアラミド        ソランタール、インレット、コレンソール、
                   チアンタール、ファイドミン
  塩酸チノリジン        ノンフラミン
  エピリゾール         メブロン、アナロック、メルリン
  エモルファゾン        ペントイル、ベルルン
*印は長時間作用性(半減期が長く1日1回投与で良い。ただし、高齢者には不適)

目次へ戻る



Q.22.痛みがない時には薬を飲まなくて良いのですか?

 ASに限らず慢性疾患の場合、炎症症状すなわち疼痛や腫脹が 激しくない時には、非ステロイド系消炎鎮痛剤を中止して良いか という疑問を抱く患者さんは多いものです。医師でさえも迷うことが あります。事実、明らかなASであり、炎症反応の指標となる血沈や CRPも高値を示しているのに、ある時期、薬なしでほとんど痛みを 訴えない人もいます。そのような時に、副作用のある薬を使い続ける ことには疑問が湧くのは当然でしょう。

 疼痛がなく表向き消炎鎮痛剤が不要といった病状でも、炎症すなわち 病気は底の方でじわじわと燃え続けているのだから、その炎症を少し でも抑えておくため、あるいはそれ以上進行させないためにも薬は 飲み続けるべきだという意見もあります。また、非ステロイド系消炎 鎮痛剤は、靱帯の骨化を抑制するという説もあって、この意味からも 飲み続けた方が良いと主張する医師もいます。
 しかし、果たして、長期連用による副作用に眼をつぶってまで、 その効果は確実かどうか疑問です。従って、最近では、非ステロイド 系消炎鎮痛剤の目的はASという病気を根本から治すのではなく、 炎症症状の軽減にあるのだから、痛みや腫脹がなく、非ステロイド系 消炎鎮痛剤の助けを借りなくとも通常の生活を十分に送れるという状態 ならば、副作用のある薬をあえて使い続ける必要はないという意見の 方が強くなっています。
 しかし、痛みのために、通常の活動ができないとか、安眠できない といった場合は、薬の副作用に比べて、こちらのマイナスの方がずっと 大きくなりますので、この場合には躊躇なく使用すべきでしょう。

 要するに、その人に合った非ステロイド系消炎鎮痛剤を適宜、適量、 服用することが大切です。いずれにしても、受診の都度担当医に病状を 報告し、患者自身が感じる薬の効果について伝えることが大切であり、 それにより担当医に薬を加減してもらうべきです。突発的な副作用が 出たのでない限り、あるいは特に「普段は朝晩1錠ずつ、特に痛む時は 4時間あけてもう1錠まで」といったような細かい指示がない限り、 自分で勝手に薬を増やしたり減らしたり、止めたりすることは決して 勧められることではありません。

目次へ戻る



Q.23.非ステロイド系消炎鎮痛剤の副作用には
    どんなものがあるのですか?
    長く続けて飲んでいても大丈夫ですか?

 ASに限らずRAでも、何十年と非ステロイド系消炎鎮痛剤を 飲み続けている人がいます。適切な投与法が行われていれば、 ほとんど副作用なしに過ごせることも多く、副作用について過剰に 不安を抱くことは良くありません。必要最低限の量を適切に使えば、 それほど心配は要らないのです。

 薬品説明書に書かれている非ステロイド系消炎鎮痛剤の副作用を 次に述べます。


★消化器障害…
悪心、嘔吐、胃痛、胃炎・胃潰瘍、食道炎、 口内炎、腸炎、膵炎(すいえん)、薬剤性肝炎

★泌尿器障害…
腎機能障害、浮腫

★心・血管…
高血圧、血管炎、虚血性(きょけつせい) 心疾患の悪化

★呼吸器障害…
喘息(アスピリン)、間質性肺炎、 肺結核の活性化

★神経系障害…
頭痛、しびれ、無菌性髄膜炎 (イブプロフェン、スリンダク)、眩暈(インドメタシン)、 パ−キンソン症候群の悪化(インドメタシン)、難聴・耳鳴り (アスピリン)

★皮膚障害…
種々の型の薬疹、光線過敏症

★血液…
溶血性貧血(フルフェナム酸)、再生不良性貧血、 血小板減少、白血球減少(以上フェニ−ルブタゾン)

★全身性…
アナフィラキシ−(アレルギ−)ショック、 発熱、感染症の誘発

★ある種の抗凝固剤(ワ−ファリン®)や 経口糖尿病薬と、非ステロイド系消炎鎮痛剤を併用すると、 副作用が増強され易い。

★ニューキノロン系の抗菌剤(バクシンダール、ノフロ、 フルマーク)と、 ナパノール®、ボルタレン®、 フェナゾックス®、フロベン®、 ロピオン®、カピステン®、 オルヂス®、メナミン®、 ナイキサン®、ニフラン®、 スルガム®、ロキソニン®、 ミナルフェン®などの併用で痙攣(けいれん)が 生じたという報告がある。

 これを見て行くと、なにやら怖くて薬が使えなくなってしまいますが、 それほど頻繁に出るものではなく、群を抜いて高いと言われる胃腸障害 でも明確なのものは10〜20%程度です。胃腸障害に対しては、食後30分後、 あるいはちょっとしたものを一緒に食べるとか、胃粘膜保護剤を一緒に 服用するといった工夫によりある程度は防ぐことができます。
 腎障害のある人や腎機能が低下している高齢者に対しては、腎臓障害の 少ない薬を使用します(クリンダクやプロピオン酸系)。いずれにしても、 おかしな症状が出たら直ちに中止して、担当医に相談することが大切 ですし、早期に発見して適切な処置を行えばまず心配要りません (ほとんどは投薬一時中止か減量または種類変更で問題を残さない)。 むやみに無計画に使うことはいけませんが、慎重かつ入念に使えば、 あまり心配する必要はありません。

 ともかく、その人のASの症状軽減にとって最も有用なものを適宜、 最低限、そして副作用をチェックしながら使うというのが原則です (自覚症状、血液検査など。初めは1ヶ月に1度、その後は3ヶ月に 一度程度)。

 また、最近では、副作用をできるだけ軽くするために、薬剤に工夫が なされていますので(Drug Delivery System : DDS) 、これらを駆使 すれば、以前より副作用をずっと抑えられるようになってきました。 具体的なものとしては、次のようなものがあります。


★腸溶剤:
胃ではなく腸で溶けるようにして胃粘膜の障害を 防止。
(ミニマックス®、E・A・C®

★除放剤:
徐々に吸収され有効血中濃度を長時間維持。
(インテバンSP®、インダシンR®、 メナミンSR®、ボルタレンSR®など)

★プロドラッグ:
胃で吸収される時には不活性型で、肝臓で 代謝されて活性型になるので胃障害が軽減される。
(ナパノ−ル®、ロキソニン®、 ランツジ−ル®、インフリー®、 ミリダシン®、クリノリル®など)

★坐薬:
腸から吸収されるために胃障害を軽減させることになり、 また比較的大量投与ができる。ただし、胃障害発生率は経口薬と大差は ないという報告もある
(インダシン® or インテバン®、 メナミン® or オルジス®、 ボルタレン®、フェルデン® or バキソ®

★外用(湿布、軟膏、クリ−ム):
経皮(けいひ)吸収性。 強い効果は期待できない。

 また、より効果をあげるため、複数の非ステロイド系消炎鎮痛剤を 併用するという投薬法をとる医師もいますが、併用により相加・相乗 作用はあまり期待できず(単独投与よりも併用の方がそれぞれの血中 濃度の上昇が低い)、むしろ副作用だけ相加される可能性があると いうことで、あまり行われません(絶対行われないということではない)。 アスピリンなどは、他の非ステロイド系消炎鎮痛剤(インドメタシンなど) を併用すると、相手の効果を弱めてしまう作用がありますので特に 注意しなければなりません。
 ただし、安眠のため、あるいは朝の疼痛やこわばりを緩らげるために、 就寝前に内服剤と違った種類の座薬を使う方法(すなわち併用)は、 有効なことが多く、しばしば行われるもので、このような使い方であれば、 それほどマイナスはないと考えられています。

目次へ戻る




Q.24.ASに使われる薬として、その他にはどんなものがありますか?

 『慢性関節リウマチ(RA)』では、ケースによって副腎皮質ホルモン (ステロイド剤)が使われることも多いのですが、ASではほとんど 使われませんし、また実際、ASに対しては、あまり有効性はないとも 言われています。強い副作用は持つが、適切に使えば疾患によっては 劇的効果をもたらすこのステロイド剤でさえも、非ステロイド系消炎 鎮痛剤と同じくASやRAに対しても、根本治療とはなり得ず、 あくまでも対症療法の域を出ませんので、ASに対する本剤の有用性は ますます低くなる訳です。
 ただし、絶対使ってはならないということはなく、痛みなどの炎症症状が あまりに強い時に(発熱なども)、短期間使用すると症状の緩和に有効な ケースも時にあり、その際は少量でも十分に効果を上げることができます ので、入念な観察のもとに使用することもあります。またブドウ膜炎 (虹彩炎)を併発した場合には、局所投与(点眼・角膜下注射)、 あるいは全身投与が必要となります。

 最近、ASに合併することがある『潰瘍性大腸炎』や『クローン病』に 有効なサラゾスルファピリジン(商品名はサラゾピリン®、 アザルフィジン®)がASにも効果があることがわかり、 特に四肢の関節炎が主体のケースに有効ということで使われるように なってきました。
 この薬にも非ステロイド系消炎鎮痛剤とほぼ同じ、胃腸障害、脱毛、 頭痛、めまい、皮膚障害、、発熱、黄疸(おうだん)などが見られ、 また重篤なものとしては造血障害(白血球・赤血球・血小板減少、再生 不良性貧血)、間質性(かんしつせい)肺炎、肝臓・腎臓障害などが 稀に見られますので、使用に当たっては、専門医による注意深い配慮が 必要です(副作用で中止するケースは30%という報告がある)。 従って、非ステロイド系消炎鎮痛剤が無効な場合、つまり炎症(疼痛、 腫脹)が強い時期に使われます。
 また、非ステロイド系消炎鎮痛剤と併用されることもしばしばです。 非ステロイド系消炎鎮痛剤よりも遅効性ですが、2〜3ヶ月使用して、 効果を実感できない場合には中止する方が望ましいと言えますが、 非ステロイド系消炎鎮痛剤よりも病気の根源に近い部位に働き、 すなわち免疫調整作用を示すと言われるため、持続的投与を勧める 医師もいます。

 その他、RAによく使われる金製剤(シオゾ−ル®、 オーラノフィン®)やDペニシラミン (メタルカプタ−ゼ®)その他の免疫調整剤と呼ばれる いくつかの薬については、有効(抗リウマチ薬)との報告も一部に ありますが、あまり使われません。

 特殊なものとして、ASは免疫異常が基盤にある病気ということから、 抗癌剤として使われてきた免疫抑制剤(エンドキサン®、 メソトレキセ−ト®など)、RAにしばしば行われる ステロイド剤の短期大量療法(パルス療法)、さらにはこれは薬物療法 ではありませんが血漿交換療法(免疫複合蛋白を濾過して排出する) なども一部では行われ、良好な成績をあげたという報告がありますが、 広く認められている訳ではありません。
 特に、少量間欠投与で(1週間に1日服用)、RAに対する有効性が 立証されて最近認可されたメトトレキサート(メソトレキセート®、 リウマトレックス®)は、若年者で活動性のASには 期待される薬物です。しかし、皮疹、脱毛、色素沈着、悪心・嘔吐、 頭痛など、重篤なものとして腎臓や肝臓障害、造血障害、間質性肺炎・ 肺繊維症、腸炎などの副作用がありますので(副作用で中止するという ケースは20%という報告がある)、学識・経験豊富な専門医 (リウマチ専門医)により慎重な経過視察のもとに行われるべき治療 と言えます。
 このような状況下でなら、それほど危険なものではありませんので、 むやみに恐れないように。ただ、本剤は、妊娠可能もしくは妊娠中の 女性は投与を避けることが望ましく、授乳中は投与禁止、さらには 男性についても服薬中はもちろん、中止後3ヶ月間は避妊をすべきと されていますので、注意が必要です。

目次へ戻る


-------------------------------------------------- 強直性脊椎炎療養の手引き --