-- 強直性脊椎炎の薬物療法 --------------------------------------------------

Q.2 どのような薬を使うのですか?

 NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)、いわゆる消炎鎮痛剤、すなわち“痛みどめ”と呼ばれる薬が主体となります。
 ASの過半数の患者が、これだけでコントロールできます。

 ただし、痛みを完全になくすことは困難で、服用前の痛みその他の症状・苦痛の程度を10とすると3〜4程度、すなわち痛いけどなんとか我慢・努力・工夫をして生活や仕事や趣味も可能といった状態を目標にすべきです。
 痛みを完全に取ろうとして、その薬に関し定められた以上の用量を主治医に許可なく勝手に使うことは、副作用の危険性の観点から避けるべきです。
 3倍飲めば3倍効くというわけでもありませんし…。

 ところで、このNSAIDsは、頭痛や腰痛や生理痛に使われるものと基本的には同じものです。
 市販の風邪薬の類にも入っていますので、風邪薬がASの痛みにも効いたという話も時に聞きますが、おかしなことではありません。
 また、同時に解熱作用も持つため解熱剤としても使われるものですので、特に内服よりも含有量が多く直腸からの吸収も早い坐薬として使用した場合には、一気に体温が下がり、めまい、冷や汗、意識朦朧などの症状が出る危険性がありますので注意が必要です。

 心筋梗塞や脳梗塞、あるいは手足の動脈閉塞や静脈血栓の予防に使われる抗凝固剤・抗血小板剤、いわゆる「血液をサラサラにする薬」(ワルファリン®、プラザキサ®、バイアスピリン®、バファリン®、プラビックス®など)を飲んでいる人は、NSAIDsにも同じような作用があるため併用するとその効果を増強してしまう恐れがあります。
 また逆にアスピリンの梗塞予防作用を減弱させてしまう恐れもあるので、どちらの医師にも必ず伝えておくべきです。

 NSAIDsには多くの種類があり、ほぼ同じ性質・構造を持ったいくつかのグループに分けられますが、同じ薬でも人によって効く効かないの差があり、また同じ人でも続けて使っていると効きが悪くなることがあります。
 2〜3週間使ってみて、効くか効かないか、副作用が出るか否か、ある意味「試行錯誤」を繰り返しながら、最適な薬、すなわち副作用が少なく効果が大きいものを主治医と患者自身で協力して探すことが大切です。
 しばらく飲んでも効いた感じがしない、皮膚や胃腸に副作用が出たなどの場合には、遠慮なく主治医に申告して対策を考えてもらうべきでしょう。

 副作用が全くないというNSAIDsはありませんので(すべての薬にも言えることですが)、その副作用の危険性に目をつぶってでも主作用すなわち有効性(鎮痛作用など、つまり飲むと楽になって生活や仕事の能力が改善する)があるかを考えた上で使うべきです。
 主作用(メリット)と副作用(デメリット)を天秤にかけて、前者が後者を(はるかに)凌ぐときに使うというのが治療の原則です。
 このようなことはNSAIDsに限ったことではなく、手術も含めすべての医療行為において大切なことです。

 医師の話や患者さんのアンケート調査では、ASに最も使われているのは(有効ということ)、ロキソニン®、ボルタレン®、セレコックス®などのようです。
 これらは我が国のAS患者に使われていることが多いということであって、他の三十種類以上に上るNSAIDsでも、その人に合えば、なんでも良い訳です。

 ただし繰り返しますが、これらの薬は病気を根本から治すものではなく、表向きの疼痛や炎症を一時的に抑えて、その結果、肉体的・心理的に患者さんを楽にさせ、日常生活、仕事、社会生活、ひいては趣味・スポーツ活動などをより可能にしてQOL高め、充実した人生を送れるようにするためのもの…と理解しておくべきです。

 その場の症状を和らげるという目的の薬ですから、使った患者さん自身に「効いている、楽になる」という実感がないのに漫然と使い続けることは、副作用の危険性ばかりが目立つことになって“百害あって一利なし”ということになります。

 患者さんの訴えに耳を貸さずに、血液検査値だけで薬物療法の方針を決める傾向にある医師も時にはいるようですが(患者さんの口からしばしば出る台詞です)、理由は分かりませんが血液検査値と患者さんの病状が平行しないことが少なくないASでは、特に患者さんの実感が大切です。
 従って、主治医に有効性や副作用については遠慮なく申告して対策を講じて貰うべきでしょう。

 因みに、2種類のNSAIDsを併用しても効果が増強する訳でなく、それどころか副作用の危険性が増すのみであるため避けるべきとされています。
 また、内服の場合、副作用としての胃腸障害を予防するために食後の服用が原則です。

 従来は毎食後に1日3回服用するのものが多かったのですが、近年、血中半減期が長く、服用後徐々に溶けて胃にもやさしく、また効果も持続的なものが開発され、1日2回(セレコックス®、インフリー®、クリノリル®、ボルタレンSR®、インダシン®、ナイキサン®、ハイペン®など)、中には1日1回(フルカム®、フェルデン®、バキソ®、モービック®など)の服用で良いものまであります。
 服用回数が少ないと飲み忘れも減るようです。

 ただし、これらのような服用回数が少なくて済む長時間作用性の薬は、ASに対しては“切れ味”が鈍る傾向にあるようですし、腎機能が低下している高齢者や腎臓病患者では副作用が出易くなり、さらに腎障害を促進するため基本的には使用禁止とされています。
 逆に1日4回の服用が可能なもの(カロナール®など)もあります。

 就寝中や早朝に痛みで目が覚めてしまう人、全身のこわばりでなかなか起きられない人は、就寝前に服用すると有効な場合があります。
 服用間隔(最低4〜6時間)や、それぞれの薬毎に定められている一日の用量を守れば、主治医の許可・了解のもとに、各自の状態・事情に合わせて患者自身が自己調整をしてもかまわない薬とも言えます。

 ところで、ASは非常に経過が長い病気ですので、薬も長期にわたって飲み続けなければならないことが少なくありません。
 従って、自分の飲んでいる薬の名前は勿論のこと、その副作用もよく知っておくことが患者にとっては大切なことと言えます。

 怪我をした時とか別の病気になった時に(いわゆるカゼであっても)、NSAIDsが解熱や消炎の目的で使われることが多く、その場合には薬が重複することになり、知らぬ間に副作用の危険性が増します。
 そのために、日頃から、ASに対して使っている薬の名前を覚えておいて、怪我や新たな病気の治療に当たる医師に必ず伝えなければなりません。
 勿論、小児、そして薬を代謝する肝臓や排泄する腎臓の機能が落ちている高齢者では、薬の種類を選び量を減らす必要もあります。

 そして、個々の患者さんの体質・性質(病気や薬に対する考え方や性格も含め)、薬に対する反応(効果と副作用)の程度などについてよく知っていてくれる同じ主治医に、できればずっと治療して貰うことが望まれます。

 なお、NSAIDsと併用することによって、その相乗効果が期待されるために筋弛緩剤もよく使われます(ムスカルム®、ミオナール®、アロフト®、テルネリン®、リンラキサー®、ロキシーン®、ロバキシン®など)。

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