-- 強直性脊椎炎の薬物療法 --------------------------------------------------

Q.1 ASの治療法にはどのようなものがありますか?

 残念ながら現時点ではASを完治させる手段、すなわち根治療法は無いということをまずおことわりしておかなければなりません。どんな名医にかかろうと、どんなに強い薬を使おうと…です。
 勿論、遺伝子治療やiPS細胞を使った病因解明・創薬の研究により、将来は完治もしくは発症・進行抑止、さらには、骨性に強直してしまった脊椎を再び動くようにすることも可能となるかもしれません。
 『関節リウマチ』(RA)では、生物学的製剤(Q.5参照)により、“あたかもなおったかのような寛解”を達成できたケースが出て来ていますので、その有効性が立証され使用されているASに関しても、いずれそのようなケースが出てくる可能性も十分にあります。

 現時点での基本的治療方針については、ASAS(強直性脊椎炎評価協議会)とEULAR(ヨーロッパリウマチ学会)から出されたものがあります【図1】。
 それによれば、医療としては、薬物療法、理学療法(物理療法・運動療法)、手術療法が3本柱です。
 その他に、病気についての教育と患者の理解、精神的・社会的支援の大切さも強調されています。

ASAS/EULAR 推奨される治療
ASAS/EULAR 推奨される治療


 昔から“病は気から”と言いますが、精神的な原因でASになるということはないものの、ASによる症状(疼痛やこわばり、倦怠感など)に強い心因性要因が影響を与えることは確かなようです。
 実際、精神的ストレスにより痛みが増強する、楽しいことに熱中していると痛みを忘れるなどということは、多くの患者さんが経験するところでしょう。

 ASと同じリウマチ性疾患であるRAの患者さんに落語を聞いて貰ったら、多くの患者さんが笑った後「痛みが楽になった」と答えたそうですが、それだけでなく、血液中の炎症反応や免疫機能を反映する検査値までもが改善したという研究報告は有名です。
 ちなみに、その研究では、笑うこと以外にも、思い切り泣く、好きなことに打ち込む、全身麻酔で深く眠る…などによっても症状のみならず血液検査値までも改善したそうです。

 ASの原因が未だ究明されていないために根治療法がないという状況下では、いずれの治療法も、言うなれば、“その場凌ぎ的な対症療法”ということになります。
 しかし、だからと言って、これらの治療に意味がないということではありません。
 適切な薬物療法や理学療法は痛みやこわばりを緩和し、日常生活や就労を容易にし、さらには正常な姿勢や関節肢位を維持(変形・強直防止)させるために役立ち、病気と付き合いながら充実した人生を送るために大変有意義なものとなります。

 自分の病気について十分に学習・理解した上で、薬物療法と理学療法その他を併用しながら炎症とこれに伴う痛みやこわばりを軽減させつつ、身体的活動さらには社会的活動を積極的に続けた人と、痛みに負けて病気のなすがままになっていた人とでは、強直や変形の進み方、そして最終到達点(終末像)がかなり違うことは確かなようです。

 OOL(Quality Of Life、人生・生活の質)という観点から、適切な薬物療法や理学療法を受けながら、多少つらくても自分で積極的に運動や社会活動を行いながら病気と上手く折り合い付き合って生きていく(なんとしても病気に打ち勝つのだ!と気張るよりも)という姿勢が大切です。
 確かに病気を根本的に治すことは今のところ不可能ですが、病気と共存して充実した人生を送るためには種々の治療は不可欠と言えます。

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