2006年7月1日(土)
△▼7/1のゼミ▼△
本 日のテーマ
「概要(梗概)」の書き方
出席者: 女 5 男 3
コンクールには、作品と一緒に800字〜1000字の「概要(梗概)」を出さなければならない。特に一次審査ではそれが重視されていて、その良し悪しで ふるいにかけられることが多いのではないか。とすれば、シナリオがよければいいのだといってはいられない。肝心のシナリオが読みたくなるような「概要(梗 概)」の書き方があるのではないだろうか。
というわけで、今日は、コンクールに応募したときにみんなの書いたものを持ち寄って研究することにした。
集まったのは、「未来地図」「警視庁性犯罪課24時」「RUN! RUN! RUN!」「太郎さんからの便り」の4つ。一つづつというよりは比較検討した方が分かりやすいだろうと、全部を通して読んでみた。だが結局は、ひとつづつ を具体的に話し合うことになった。(時次郎師は今回も仕事でお休み)
ずいぶん前の作品だが、全員がシナリオを読んでいた。城戸賞に応募したのだが最終選考には残らなかった。(城戸賞は途中経過の発表がなく、いきなり最終 選考作品と入選作の発表である)
1.松原作品「未来地図」
シナリオの好印象を思い出しながら検討したのだが、これだけを読むといろいろと知りたいことが出てくる。
少ない字数なのに、故郷の町での幼少の思い出話にさかれている分量が多く、これから面白くなりそうだというところで終わっている。親たちと子供たちの二 世代のドラマがどう絡み合うのか伝わってこない、というのが大方の思いであった。
主人公がどうするのか、ということをもっと中心に押し出すべきではないか。
ストーリー展開の順に書いていると、主人公のキャラクターよりも筋が先になってしまう。
まず何よりもドラマの「核」を鮮明に書かなければならないのではないか。
その意味で、二世代の象徴である主人公一家の父娘の絡み合い(対立・葛藤)が描かれるべきではないか。
しかし、残念ながら、それは本編のシナリオでも描き足りていないようだ。娘の存在を、つまり10歳の女の子としてのリアリティをもっと深めていたら、展 開も違ってきたかもしれない。
ゼミでやったとき、これは父親の友情のドラマか、親子のドラマかで議論になり、友情のドラマ派が多かったという。(久しぶりに姿を見せた元事務長の抜群 の記憶力による)ぼくは友情派だったようだが、ここは、「君子豹変す」で、考えを変えたい。
父娘の葛藤を縦軸、故郷の町の友人たちとの友情を横軸とし、焦点は父親の生き直しのドラマであるべきではなかったか。今さら、出し遅れの証文のようだ が、短い次数で伝えなければならない分だけ、長所欠点がよく見えるということが分かったのだった。
シナリオに書かれていないものは当然ながら梗概に書かれることはない。そういう意味で「概要(梗概)」の検討はシナリオの検討そのものでもあるという、 思いがけない収穫をもたらしてくれた。
2.金子作品「警視庁性犯罪課24時」
TV朝日のコンクールで、残念ながら一次の通過はならなかったもの。
この概要の一番の問題は、シナリオの面白さを伝えられていないということである。これもまた、ストーリーの展開に沿って(事件を追って)書かれているの で、SEX−Gメンの主人公がどういう人間か明確でない。ソープランドに詳しいというだけでは普通の想像の域を出ない。
また「ワレワレハ性ノ自由ヲ認メズ」という特異な犯人が最後に出てくるのだが、これでは単純な捜査劇でしかない。
やはり、ここは主人公の刑事と犯人(ライバル)の絡み合いが中心にすえられるべきではなかったか。
性犯罪の被害者であったという犯人像も、説得力を持たないものであった。
短い梗概であればこそ、主人公のキャラクターがしっかり伝えられなければならないのである。
3.神山作品「RUN! RUN! RUN!」
これもTV朝日で討ち死にしたものだが、やはりストーリー追いになっている。
主人公の元マラソンランナーが、久々に市民マラソンに参加することで何を得たのか。
「勝つ」という目標を持ったことで、彼女の何が変わったのか。
この作品の場合は「概要(梗概)」以前にシナリオにいろいろと問題があったのだが、それでも本編に期待させる梗概が書けるかと思ったのだが、そう甘くはな かった。短い字数であるだけに、いっそう欠点が際立ってしまった。
主要なランナーが三人用意されているが、それぞれに「なぜマラソンなのか」というものがきちんと描かれないと、ドラマにはならない。
三人を並列で描くのではなく、挫折した元アスリートの自己回復のドラマであるということを、実は、作者自身がつかまえきれていないということが問題なの かもしれない。
4.貫目作品「太郎さんからの便り」
最後は、出来立てほやほやのシナリオの梗概だ。なんと、きのうの夜遅く脱稿して、郵便局に駆け込んで放作協のコンクールに応募したという。だから結果は まだ出ていないので、あまり厳しい苦言は呈すまい。
まず、ストーリーが大幅に変わっているのに驚かされる。
東京の話だったのに、なんと舞台は故郷の広島に変わっている。それに、主人公は10歳の少女なのだが、母親は亡くなっていて、父親も6年間の家出から 戻ってきたばかり。そこに、太郎爺さんが住み込む。
ストーリー展開には相当無理がありそうだが、それ以上に、梗概が分かりにくい。
梗概には起承転結をきちんと書く、という原則が守られていない。
「そこでケイが見たものは?」とか「何故?」「相互和解はなるのだろうか?」と、(M君いわく)予告編の惹句のようだ。
こういうのは一番よろしくない。結末を審査員に隠してどうする。きちんと書かれていればこそ読まれるのではないか。
また登場人物のバランスをとった書き方になっていて、主人公にとって何が問題だったかがはっきりしない。中心は少女ではなく父と太郎爺さんになっている が、果たしてそれでいいのか?
シナリオをまだ読んでいないので、その点は留保しておこう。今はただコンクールでの上位進出を期待するばかりである。
ともあれ、作者がこれで「太郎さん〜」から卒業できたとすれば、こんないいことはない。
アフターは、2Fの喫茶店。だがいつものお店が貸切だったので、右側のお店へ。
珍しくビールを飲むのはKRさんだけで、あとはソフトドリンク。
元事務長のかがりさんが来たので、かなり派手やかになった。過去のゼミでやった作品とそのときの状況をよく覚えているという記憶力には感心する。
こっちは大分疲れているので、ゼミが終わると片っ端から忘れてしまうのだが、今日は助かった。
「概要(梗概)」研究が思っていたよりも成果があった気がする。
これからは、シナリオと同時に「概要」をつけて出してもらおう。
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