1.貫目作品「太郎さんからの便り(ドロボー篇・改訂版)」(ストーリー)
この作品は、相当な時間をかけて練られているものだ。一度ならず2度もシナリオにしたのに、もう一度ストーリーをやり直すといって、書き直した。そのス
トーリーも、これで3度目である。
<何が彼女をさうさせたか>
今日は、その変遷をたどるところからはじめた。
いちばん最初は、主人公は17歳の少女であった。家出をした少女がホームレスの爺さんと知り合う、というものであった。
その後、少女の年齢が下がって10歳となり、太郎さんが少女の実の祖父となり、そして、幽霊となり…というように人間関係が変化してしまった。そのた
め、ドラマも変質してしまった。作者は、時次郎師が酷評したからだといっていたが、それは相当の誤解があるようだ。
最初のゼミ(06.6.4)の評ではこうだ。
「家出した少女とホームレスの中年男との交流の話である。まずは、ストーリー書き方に忠太郎師からお褒めの言葉があった。今までと違って、作者の独りよ
がりの思い入れがなく人間関係を中心に語っているので、主人公の気持ちの流れがよく分かり、どういう物語かが自然に浮かび上がってくる。」
絶賛である。だからこそシナリオに進むようにとの判断があったはずなのだ。なぜ作者は誤解したのか。今となっては遅いが、しかし、惜しい。
さて、そこで、最新の稿である。
少女は、10歳。両親との三人暮らしで、父親とは分かり合えない年頃である。
そんなところに、ドロボーの太郎さんが近づく。
少女は、父親とは諍うのに、太郎さんとは仲良くなる。
太郎さんは、実は、息子が10歳のころ、妻子を捨てて蒸発していた。いつしかドロボーに身をやつして暮らしていたが、あれから25年、太郎さんは70歳
になっている。寄る年波、故郷が恋しくなって戻ってきたところで捨てたはずの息子と再会する。息子は、少女の父親であった。
ここから、話は少女を離れて、父と息子の話になる。
そのため、少女の影が薄くなる。
少女の心が描かれていないから、祖父(太郎)と少女の交流もおざなりになってしまった。
「面白そうだとは思うが、分かりにくい」「ファンタジーテイストであるが…」というM君らの感想がみんなの思いであろう。
最後になって、“青いマフラー”が太郎と息子をつなぐ重要な小道具として生かされる案がでて(父の日に描いた絵とか絵日記とか…)、ぐっとドラマらしく
なった。その案がさらに生かされるためにも、<少女と太郎><太郎と息子><少女と父親>、この3つの人間関係がしっかり描かれるべきだろう。
つまりは、オーソドックスなドラマ創りに戻るべきということではないか。
アフターゼミで、さらにいい案が生まれた。
万引きクセのある少女なのに、父に贈った“青いマフラー”だけは万引きしていなかった、というものである。そしてこそ、少女の父への想いが描かれるとい
うものである。これは秀逸なアイディアである。
このドラマのよさは十分に伝わっているので、ご都合主義に陥ることなく、素直に考えていくことがたいせつである。
作者には、「今日のゼミ」のバックナンバーを見返して読み込むことをすすめる。
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