1.小沼シナリオ「夜明け前」(第2稿)
(400字換算148枚)
新聞配達の少年の妄想と幻想の物語。その第2稿である。だがすっかり様変わりしている。
新聞配達先の謎の女、牛丼屋のウエイトレス、風俗母親の娘、そして幻の母親、少年の妄想相手の女はそのままだが、少年の相方となる人間が全く変わってい
る。爆弾オタクの若者は消えホームレスの老人が重要人物として配置されている。
これらに作者の特性はよく現われているのだが、一番違うのは、登場人物がよくしゃべることだ。
どういう心境の変化か、これまでの作品では、セリフは軽やかにキャッチボールされるというよりは、それぞれの想いが吐き出されるようなセリフで、それぞ
れがかみ合っているとはいえず、それがいかにも作者の個性であったと思うのだが、この作品は何かのタガが外れたように饒舌である。しかもその中身はドラマ
を深めるというものではなく、とても説明的なのだ。作者の中でなぜか厳密さを放棄した規制緩和のせいか、といったら、時次郎師に、「規制緩和」とは言いえ
て妙とほめられた。
さて、それ以上に、構成に問題があった。
混乱を楽しむ作品か、という辛らつな感想があったが、それは、P11からP34までが、主人公の少年の夢だというせいだ。「エーッ、夢だったのー!」
と、裏切られた思いだという批判が巻き起こった。
「現実の設定と人間関係をそっくり夢の中に持ちこんではいけない」
「夢であることの意味は何か」。
これは本質的なことだから、しっかりと考えなおしてみよう。
最後に、かつて「これは母を恋うる物語である」と喝破したKさんの指摘をもう一度かみしめるように、という時次郎師の言葉が締めとなった。
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