2005年10月1日(土)
△▼10/1のゼミ▼△
本 日の作品
ストーリー 1
シナリオ 1
出席者: 女 4 男 5
前回は「歌入り」だったので、今回もそのタッチを継続して僕の独断と偏見の「報告」といこう。
松原シナリオの登場人物、ライトマンの「シゲ」(脇役だが)と神山ストーリーの主人公、浩一(作者の思いとは別に)の二人のキャラクターをイメージして るうちに、以下のような一節を思い出した。サンテクジュべり「夜間飛行」の一部分だ。
「ルール、君は一生のうちに色恋に力を入れたことがあったかい?」「色恋ですかい、旦那なにしろどうも・・・」
老整備士のルールは、ブ男だ。ずうっと主人の飛行機を整備するだけの人生を送ってきた。主人は、その思いを察してこういう。「僕と同じだな。君にも時間 が無かったんだ」
地道に何かにこだわり、いや、それしか出来ず一生陽の当たることのないまま人生をまっとうする人が大方だろう。でも、せめてドラマの中でなら、そんなナ イスガイに「わずか数秒でもいいから、日差しを与えてやれる」と僕は思っている。
数ヶ月前、作者の主催でストリップ劇場の取材ツアーがあった。同行者のフレキシブルな印象は「喫茶」の書き込みに伺えた。その成果が見事に実った。1稿 は半年前に出て大方の人は読んでいるので内容は繰り返さないが、すがすがしい「男と女」のお話に仕上がった。
1 松原シナリオ「プロポーズ」
素人娘が舞台に立つ不自然さも消え、それを許す回りの人間達の反応もリアルになった。人物への目配りはなかなかで、いずれも魅力的なキャラターを漂わせ ている。ほめる時には、ケチるまい。将来を約束した若い男女が、その約束をもう一つ色濃いものにする「大人のトバグチ」の出来事、理屈ではなく観念でもな く「身体で、感情で」くぐりぬける関門・・・それを「ストリップ」に設定した作者の勘をたたえよう。
意見が百出した。いずれも作品の中に入り込んだもので、作者は一心不乱にメモをしていた。「直人と由香里のありよう」「節子とシゲさんの人生」「紗枝姉 御とじゃじゃ馬アリスの受けもつサイドストーリー」、そして、哀切極まりない、男たちの女体への渇望と女たちのそれを受け入れる慈母観音の眼差し。舞台と なる湖畔のうら寂れた「小屋」は、いまや経営が風前のともし火なのだ。
滅び行くものへの「鎮魂歌」。これから生きとし生きるものへの「応援歌」。欲も得も、純情もこずるい計算も、丸ごと飲み込んだ「生」の抒情詩。臆面もな く、甘ったるいほめ言葉をと眉をひそめるなかれ。僕は、この作品について延々、30分も喋りつずけたのです。由香里ちゃんには、今の時代薄れつつある女と しての「心と身体」の誇りがある。
ここまで言わせたのだから、手抜き直しをしたら、承知しないから
。
勝手に浩一のキャラクターを僕なりに作ってみます。前節で言ったように、すし屋の3代目で食うに困らないだろうが、彼は何か満たされないのです。妻に も、子供たちにも、商売にも。当然だ、と自分でも思う。どこか人より優れているか?ノー。すし屋の親父としてやっていけそうか?ノー。女にもてる才覚があ るか?ノー。なんか生きる目標があるか?ノー。今の神さんも、浩一ではなく寿司屋を選んだのです。
2.神山ストーリー「あなたとどこかへ」
おまけに、やり手の親父と来たら、この15年女を囲って母親を泣かせている。彼は思う。「なんと意気地なしなんだ、オレは」3年ほど前、Yさんが「無力 の力」という家庭劇のストーリーを出した。平凡で、普通で、格別目立ったところがなく、並で、何かを我慢している人たちが、その「普通さ」ゆえに最後は小 爆発が起きる話です(間違ってたら、Yさんすみません)。
そんな浩一の前に、作者が言うように、昔の女友達なんてものではなく、ただの顔見知りが現われ何故か浩一の気を引いたら?
それはメロメロさ。おまけに親父を見返してやりたいという思いもある。でも、彼は用心深い。自分を知ってるからです。おずおずと女に近ずく。果たして電車 男のようになれるか?
都合よくそんな話が転がっているものか。なぜちらりとでも女が彼の気を引いたか?そのあたりが、無力の男とセレブ風な女の面白い取り合わせでし て・・・。
「あなたとどこかへ」の「どこか」は、いったい「どこ」なんだ?答えは浩一にも分からない。でも、冒頭紹介した老整備士の諦念を彼に与えたのでは、あま りにかわいそうすぎる。あいまいな「どこか」でも彼に夢見させてやりたい。
話を今風にするために、彼の奥さんを中国人かタイ人かフイリピン人にすると面白いかも、という意見はなるほどでした。僕の好みは、だんぜん真ん中です が。お前のためにシナリオやってんじゃないや。
アフターは、やはり居酒屋。
ここのところゼミの課題作を持ち帰り、もう一度読み直して考え付いた「アイデア」や「発想」のここへの書き込みが、とても有益(作者だけ出なく、全員 に)になってます。前回なんかは、僕も「成る程」と思うものが一杯でした。
居酒屋の親父ではないが、「また、どうぞ」。
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国リハ部屋
10・1ゼミはとても実り多いようで、遠く離れていても、みんなの精勤ぶりがうかがえてうれしい限りです。
もうしばらく番外参加です。ゼミの空気感と違っているのではないかと気になるけど、まあ、そこはそれ、我慢してください。よろしく。
ぼくも取材ツアーの成果がどうあらわれるか楽しみだった。その体験が生かされているところは多いと思う。が、同時に、知ってしまったために羽目をはずせ なくなったような感じがありそうだ。ちょっと太蔵議員のような…。
1 松原シナリオ「プロポーズ」
忠太郎師がほめるのにケチらないといわれたが、そのとおりと思いつつ、違う観点から少々の感想を。
なんだかおとなしくなったような気がするのは、どうしてだろう。
軽快に展開して行くドラマであるゆえに、一点、ギュッと迫るところがほしい。とすれば、それは、由香里と節子の関係ではないか。
女手ひとつで一人息子を育て、きっと人には言えない思いをしてきた女の、壮絶かつたくましくも美しい生き方というものが、もっと現れてほしい。そして、 直人はそういう母親をどう思っていたのか、なんてことも現れてきていいのではないかな。
例えば、となると、節子は由香里が舞台に上がることを簡単に許すだろうか。彼女のプライドってものがあるんじゃなかろうか、とか…。
もちろん、こんなことは重々しくやるわけではなく、軽快に展開するなかでやってほしいことなんだけど。
さびれゆく町のさびれゆくストリップ劇場をささえる人々、というとってもいい世界だけに、思いはつきない。
行く手をしっかりと見据えて、進んでいってほしい。
神山作品はこちらに届いていないので、省略です。
2.神山ストーリー「あなたとどこかへ」
郵便よりはメールのほうがいいので、送ってください。
なお、「国リハ」というのは、この病院の通称です。
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