2005年5月7日(土)
 


△▼5/7のゼミ▼△


本 日の作品

ストーリー      2
シナリオ       1

出席者: 女 5   男 9


 きょうは事務長の最後の日とあって珍しい顔も現われて大盛況であった。思えば、恵比寿で4年。池袋に移ってから2年、創生期のアシモフを色々な形で支え てくれた。改めて、時の流れと人の輪の広がりと強さを思うのであった。
 いやいや、感慨にふけるのはまだ早い。まずは、ゼミをきちんとやらなくっちゃ。



1.野原作品「ニートは世界を救う」(ストーリー)

 ニートとはどういう意味か、正確には分からなかった。あとでKさんが調べてくれたところによると、「ニート」は「NEET」であった。 「Not  in Employment, Education or Training」の略で、「学生でもなく、仕事にもつかず、専門的技能を学んでいない若者たち」の意味だそうだ。
 さて、物語だが、「ニート」が主題というよりは、「ストーカー」が中心の話のようである。
 キャリアウーマンの主人公に色々と怪文書」が舞い込み、しつこいメールが送りつけられる。警察に届けたが相手にされないので探偵社に調査を依頼する。そ の結果、若い男が浮かぶ。男の実家は下町の煎餅屋。その一人息子が店の常連だった主人公に惚れてストーカーをしたのだった。息子は、仕事なんかしたいと思 わない「ニート」だった。小柄でやせた貧弱な息子に興味を持つ主人公。
 だが、まだ他にもストーカーがいるようで、怪文書は続いている。そこで、主人公と探偵社は、煎餅屋の息子を使って探らせる。なんと会社の上司が浮かぶ。 しかもそれは、かつての不倫相手で…。
話はここから二転三転するのだが、ストーリーを紹介するのがとても難しいのでここまでにしておく。
 よくよく読むと面白い話になりそうなのだが、ただだらだらと書かれているので、中心がどこにあるのか分かりにくくて、作者の面白がっているのが何なのか 分かりにくい。それに、肝心の「ニート」がドラマに生きていない。むしろ「ストーカー物語」という感じなのだ。後半には、「地下鉄ホームの惨劇」や意外な 真犯人が用意されているのだが、それらがかみ合っていない。人間関係を整理して、思いつきの面白さを後回しにしてきちんとストーリーを組み立てるべきであ ろう。
 作者は、期待の新人といいたいのだが、長い休会を経て復活したので、旧新人というべきか。しかし、以前よりはすっかりラフな語り口になっている。(やや ラフすぎてまとまりがない面もあるけど)これはやはり「時」のせいだろうか。この変身はなかなか楽しみだ。


2.小沼作品「夜明け前」(ストーリー第2稿)

 前回の改定稿。忠太郎師もいっていたが、題名がとてもいいので、面白そうな物語の匂いが立ち上がってくる。
 主人公は、「ハナクソみたいな人生を生きてきた、どうしようもないヤツ」。といったって、まだ19歳でしかない。人生を絶望するには早すぎる。だがそう いう少年に、これまた人生に希望が持てない少女が助けを求めてくる。少年と少女の痛切な愛の物語かと思いきや、そうではない。少年には憧れの女性がいる。 それはいつも行く牛丼屋の看板娘。しかも歓楽街のど真ん中の風俗店がひしめく雑居ビルの真向かいにある。
 深夜の牛丼屋にいつも母親と来る幼い姉弟がいる。その母親にイライラする主人公。看板娘のハルコに近づきたい、恋人になりたいと熱望する。
 …と、爽やかな朝、少年の願いがかなう。ハルコが笑顔で話しかけてくる。幼い姉弟も無邪気に微笑んでくれた。だが、少女たちには痛ましい運命が待ってい る。少年は、爆弾魔と知り合う。そして…。
ストーリーをあまり細かく話すと、作者のたくらんだアイディアがさらけ出されると困るので、紹介はここまでにしておこう。
大ラストについて、いろいろと意見が出た。今のままだと、映像的な広がりがない。小説なら小粋な終わり方といえようが、ここは一考してほしい。
 今までのような絶望や破壊で終わるのではなく、構築しようという意図が伝わってとても嬉しい。どんなシナリオになるのか、楽しみに待つことにしよう。


3 藤原作品「希望情景」(シナリオ)

 自主映画用の短編シナリオである、今回から入会の新人だが、アシモフゼミ始まって以来の実作者の登場だ。で、挨拶代わりの作品提出というわけである。シ ナリオ学校に通ったことはないというが、自主映画は何本か作ったというだけあって、書きっぷりはとても初めてとは思えない。
 兄妹でやっている喫茶店がある。そこに、妹の恋人がプロポーズの返事を聞きにやって来る。恋人は絵描きで一緒にパリへ行こうというのだ、返事は今日がリ ミット。だが、妹は恋人が差し出した指輪をポチャンとウーロン茶のコップにいれてしまった…。
妹は決して恋人が嫌いなのではない。兄をひとりおいてはいけないからだ。
 …兄のマスターは、目が見えないのだった。
店には常連の客がいる。マスターの親友である。親友の熱い友情が、妹を自由にしてやる。
 妹は恋人を追ってバス停に駆けつける…。
 マスターは、妹がいなくても、親友や常連の客に支えられて店を続けていけるだろう。
 目が見えなくたって、兄にも希望に満ちた明日があるのだ…。
ハートウオーミングな話である。だが、ちょっと「いい話」すぎるところがある。
 なぜ、兄が盲目なのか。盲目でないといけないのか。障害者にすると、簡単に心暖まる話が出来てしまうが、果たしてそんなことでいいのだろうか。
 前回のゼミでやったT君の「湖畔のカフェ」も目の見えない少女が主人公だった。
 こういう人間を登場させることに、ぼくはあまり賛成したくない。障害者というと、人の力を必要としていて、善意にあふれる人間として登場する。それでい いのだろうか。当たり前のことだが、そういう人もいるしそうではない人もいるはずである。
 悪人の出るドラマがいいと言っているわけではないが、ちょっと立ち止まって、人間ってなんだろうと考えてほしい。
 シナリオとしては、自主映画を意識するあまり、余計な動きが書き込まれていて煩わしいところがある。もう少しシャープな書きっぷりというもの学んでほし い。
 とはいえ、頼もしい仲間の登場である。




 さて、いよいよ事務長の送別である。ゼミ終了後、ゼミを代表して女性陣から花束の贈呈。
 送別の宴は、「天狗」である。CさんとYさんが所用で帰ったが、ゼミ終了間際にJさんが現われ、さらにNさんも駆けつけた。(この二人は長男を連れてで ある。これがわがゼミの特徴である。)主客をいれて総勢17人の大宴会となった。
 忠太郎師がインスタントカメラで写真を取りまくる中、雑誌の編集者になったK君も現われて、盛り上がりは果てしない。予定をオーバーして3時間になった が、さらに河岸を変えての2次会。いつもならカラオケとなるところだが、今日はじっくり語り合おうということで「ライオン」へ。ここにもOさんが駆けつ け、盛り上がる一方であった。
 事務長への送別の辞は、「居残りアシモフ」での忠太郎師の言葉がすべてを伝えていると思うので、ここに記録の意味で残しておきたい。

忠太郎師の事務長送別の辞 (「居残りアシモフ」より)

  アシモフさんも忠太郎も、「早稲田」以来だから直子事務長とは長い。彼女によれば14年間になるという。

  直子(「さん」とか「事務長」とつけるより、僕にはこっちの方がピッタリ来る)は、ボデコンスーツで決めた一流会社のOLだった。頭の回転が速くテキパキ ものをいい、裏表の無い性格だからカリスマ性があった。「時々ムゲンのお立ち台で、扇を振るのよ」と聞いたのを今も覚えている。
 飲み会はいつも直子が中心だっ た。人柄そのままの、OLを材料にしたイキのいいシナリオを書いた。そしていろんなことがあった。シナリオの仲間内で3組の夫婦が 出来た。直子もその一人で、結婚の書類の何とかにはんこを押したから、ハネムーン(オーストラリア)の写真を貰った。
 (早稲田時代に)アシモフさん と話が合って、(中略)二人で自前でやってみようと、「アシモフ」を立ち上げた。直子は真っ先に手を上げ、事務長を勤めてくれた。
(中略)
 送別会は休会中の人も前に在籍 した人も、無理に都合をつけた人も現われた。直子は愛されている、と僕も嬉しくなった。S君がアロハシャツを贈った。彼はそちらの権威だ。ブルーの縞柄が 直子に似合った。それを残したくて、簡単カメラを買ってきてもらい、僕はシャッターを押しまくった。

  二次 会がはねたあと、駅に向かう僕の背中に直子の、「センセ、さよなら」という声が届いた。「花に嵐のたとえもあるよ、サヨナラだけが人生さ」とは言っても別 れは切ない。僕は振り向けず、片手を上げた。その声をずっと忘れないだろう。「直子、ボデコンギャルの気概を忘れないでくれ」。








次回は、2005年5月21日 (土)

アシモフは、いよいよ7年目に入ります。


東京芸術劇場5F/NO4会議室
時間は、いつものように、13:30〜17:00

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